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様変わりを続けるYC Demo Day、今週

今週開催されるYコンビネーターのオンラインデモデイ。https://blog.ycombinator.com/yc-w21-virtual-demo-day/ 
今回の出場チームが300であると話題になっている。先ほどは卒業生向けのピッチがあり、いまだかつてないレベルだ!というOBの声で盛り上がっている。

私はといえば、ぼんやり、している。
6年前に参加して以来、一応ずっと見てきたし投資することでこの狂気のゲームに参加してきたつもりだ。
最初は100チームくらいの時で、「多いなあ。」と思ったし、2日で見きれないよ。とも思った。会場で隣に座ったさらに古参の投資家(彼はGoogleの社員でエンジェル投資家でもあった)は、かなり増えたよ、見きれないよ、とこぼしていたが当時はそれでもまだ今から見れば牧歌的な時代だった。
多くのチームが2年後に消え、1/3がシリーズAにたどり着けばよい方、という言われ方をしていた。実際、何社かがそうなった。中でもある一社はバッチ卒業の1か月後にシリーズAにたどり着き驚いた。が、それは例外。何社かからは創業者の転職のお知らせ(チームを解散させました。残念です、私はAmazonで働きます、というメール)が届いたりする。

それが200に増え、今回は300になった。要するにデモ、ピッチ自体はどうでもいいのだろう。
コロナのせいも、あるかもしれない。
最も有名な卒業生であるAirbnbは上場して10兆円以上の価値になったのもこの半年だし、Stripeが10兆円をこえるラウンドを実施したのもそうだ。

次のAirbnb, Stripeの幻影が世界中の投資家を焦らせているわけだ。まだPMFもおぼつかない、売上もないような段階で、著名な大投資家が突然億単位、あるいは数十億円の投資をしたりする。極端な青田買い。

しかしそれ以上に、このイベントと主催者がすでに異質なものに変貌したことの方が大きいと思う。
出場するチームも以前のAirbnbのような創業したてのチームではなく、すでに資金調達をしたスタートアップが、YC卒というバッチをつけて自分の価値を上げるため、YCコミュニティに参加するため、に参加する例も目立ってきた。
前回投資した、デモデイ期間中に数十億円のCapだったスタートアップはその典型だ。彼らは半年も経たない今、すでに100億円を超えるValuationになりつつある。投資家としてこれは成功なのか。うれしいことなのか。よくわからない。多分違うのだろう。カジノに行ってちょっと勝つのと同じだろう。勝者はカジノ主催者と一握りのエースディーラー達だ。
この仕組みの秘密は、YC自身が投資会社になっており常に一定のValuationで一定の金額を全参加者に一律に投資するところにある。勿論、一般の投資家よりも非常に低いValuationでだ。それが胴元ビジネスのショバ代。これまでもそしてこれからも、この人気の街は彼らのものなのだ。

最近は以前と違って、あまりYC本部のサポートも受けられないチームも多いと聞く。
あの牧歌的な時代は、しばらく戻ってこないのだろう。
2015年当時は売上もないのに「Cap 6M usd」(Cap: YC独特の転換社債のような投資手法。転換時のValuationの上限。投資家は全員このフォーマットで投資することが義務づけられている。)と聞いて「なんて高い」と思ったが、今回は20Mはざら、らしい。それは自分の持ち分がダイリューションしたくない起業家と、何よりYC自身が望んでいることでもあるのだろう。

過剰流動性の強い影響、YC自身の投資機構化、を感じる週末。



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