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ささやかな記述の反復

COVID-19の感染が拡大した3月末以後、事務所も研究室もリモートワークとオンラインミーティングを前提とした、離散的体制となった。以来、家の近くにあるオフィスまで歩いて9:00前には出社し、10:00のオンライン朝礼までに掃除をし、届いた封筒などを開封してスキャンし、届いたメールに返信するのが日課になっている。

毎日できるだけ単調に、同じように反復することを心がけている。オランダへの留学中(2002-2003)や、独立直後(2005-6)などもそうやっていた気がする。修士制作に取り組んでいた頃(2001-2002)もそうだったかもしれない。

振り返れば、修士制作で毎週行われるゼミに必ず同じ縮尺で模型を作ると決め、続けたのが「超線形プロセス」(2007)の原型で、留学中に毎週行われるレクチャーシリーズで必ず一番前に座り最初に質問しレポートをアップすると決め、続けたのがフリーペーパー『ROUNDABOUT JOURNAL』(2007-2012)の原型となるブログであった。

あれこれ思いついてしまって収拾がつかなくなってしまうほどに拡散しようとする意識を抑え、何かを構築するにはこういう単調さがよい。

後に上梓した『批判的工学主義の建築』(2014)の骨子となる「批判的工学主義」などの理論や「超線形プロセス」などの方法論がまとめられたのも、そういう単調で反復的な時間のなかでであった。動き回っていろいろな出会いのある外向的で動的な日常は生産的だが、ときどき挿入される内向的で静的な非日常もまた、自分にとって必要な時間なのであろう。

突如として与えられた、この内向的で静かな、しかし美しく構築的な日常の記録として、ささやかな記述の反復を始めようと思う。

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