縷々として。


あなたの人生に於いて
「大事なものを思い出せ」
と言われたら、なにが頭に思い浮かぶだろうか。
恋人や家族、
生まれた土地の風景や匂い
横並びで歩いた野良猫
飲み屋でネクタイを頭に巻いたアニメのようなおっちゃん
1人歩いたあり得ないほどの畦道
これを読んだ人の数だけあるのだろう。



俺はそうだな。
縷々として語ってしまうのでやめておく。




そんな俺は変な夢を見た。
何度も人生がやり直される夢だ。
木に生まれ、カブトムシに憧れ転生した。
カブトムシとなり、人に憧れ転生した。
人となり、紅葉に憧れた。
そんな夢だ。
あまりに甘ったるい夢すぎて、
起きてから起き上がれなかった。



夢に意味をもたらすことはどうだろう?
滑稽だろうか?
暇つぶしだろうか?
何かに縋る様だろうか?
まあ、なんだっていい。



齢も30。
四半世紀過ぎてから、とにかく早いもんだ。
この一年を振り替えるとまるで無様だ。
運の悪さを運の悪さだけにして
自分だけはシェルターに閉じ込めたような、そんな気分だ。




夢を聞かれた時、
あなたならなんと答える?
恐らく、自分の出来そうなことから答えるだろう。
大人ってのは上手いこと出来ていて
傷付かないように生きることが、
幼少期よりも上手くなってしまうそうだ。
あの頃のバツが悪くなつと
「うるせえ!」と一蹴して見せた6歳の俺のがいくつもかっこいい。




ハイな時の俺は、夢を聞かれたら
理想の俺を縷々として語るくせに
ローな時の俺は、出来そうなことを端的に語ってしまう。



ここ1週間。
仰山考えた。
散歩しながら、湯船に浸かりながら、タバコを吸いながら。
如何なるシーンにおいても思考した。
好きな俺を。
憧れる俺を。
そしたら、やっぱり10代の
嬉々として縷々として夢を語る馬鹿な俺だった。
憧れの俺はいつだってかっこいい。



縷々として語っていたあの一コマが。
俺を奮い立たすんだよね。
たった数時間の俺が、
10年以上俺を突き動かすのであれば
みんなが欲しがる"永遠"という夢のようなやつは
既に手にしてるんだろうね。
知らんけど。



縷々として語りました。
ちゃんちゃん。


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