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ギフトショー2021の振り返り(中小製造業向け)

10/13(水)~15(金)にかけて東京ビッグサイトで開催された「第92回東京インターナショナルギフトショー(以下、ギフトショー)」。コロナ禍前よりまだ縮小規模ではありましたが、体感では参加者は多く盛況だったと思います。そこで恐らく多くの方が「やっぱりリアルはいい」ということを再確認していたようですね。

私は10/15(金)にほぼ1日かけて半分強を見て回りました。今回は日本製の町工場関連・伝統工芸品・ガジェット・文具雑貨で海外バイヤーに紹介できそうなところを探しに行ったので、それ以外のアパレル・食品・感染対策・インポートコーナーなどはほぼ見てません。その範囲で思ったことは、大まかにこんなことです。

①展示会はリアルがいい!画面を見るのと実物を見るのでは全く違う
②規模の縮小が影響か、ワクワクする展示が少なかった

そこで、ギフトショーの個人的な総括を「"Made by Japanese"の製品を(日本視点の製品。製造は海外でもいい)海外に売る」という視点で行います。

どんなギフトショーだった?

今年のギフトショーは東京ビッグサイトの西と南の展示棟で開催されました。

コロナ禍前の2019年秋(ギフトショーは春と秋の2回開催)と比べると、

2019年:9/3~6の4日間、西・南展示棟と青海会場、約3,000社
2021年:10/13~15の3日間、西・南展示棟、約1,240社

とまだまだ縮小規模ですが、それでも1,240社はすごいですよね!

また2019年は、知人の感想ですが、海外のバイヤーも多く来ており会場では中国語も聞こえていたようです。今回はほぼ国内バイヤーのみ・出展者も国内バイヤー向けだったと想定されます。

中小企業の展示は難しい!

多くの中小企業の展示は、自治体や団体の中での展示となっているか、超小規模展示となっていました。それの何が難しいのか整理します。

①団体展示の世界観が不明確
②数ある中で目を引くことが難しい
③バイヤーは○○県を買いに来ているのではない

①団体展示の世界観が不明確

ギフトショーには色んなカテゴリがありますが、団体の中はごちゃ混ぜです。例えば「温かみのあるテーブルウェア」のような世界観があれば、それを買いに来る人はわかりやすいです。しかし興味のないものも含めた色んなモノの中で自社製品を見つけてもらい、いいと思ってもらうのは基本的には難しいです。ドンキホーテの展示のような宝探し感でもいいですが、何かしらの世界観が欲しいところです。

②数ある中で目を引くことが難しい

当たり前ですが、小さいと目立ちません苦笑。しかも一品だけの展示のところも多いですが、一品のために購買プロセスを踏むってかなり売れると思ったり入れ込まないと難しいですよね。サプライヤーの管理が難しいのは自分が一番分かっているはずなんですが、展示する側に回ると忘れがちになります・・・。

③バイヤーは○○県を買いに来ているのではない

自治体で県名を全面に大きく出しているところがありますが、多くの人が「○○県の製品を買いに来た」わけではなく「面白い製品・売れる製品を買いたい」わけです。県のブースの中には色んな製品がありますので、①の世界観がわかりづらいです。

こういった難しさをどう乗り越えればいいか、後半で考えます。

ビジネスとしてどこまで伸ばしたい?

また、中小企業のブースを見ていて「どこまでビジネスとして広げたいか、儲けたいか、成長させたいか」疑問に思うことがありました。

例えば、「これ何個から仕入れられますか」と聞くと「10個から受けます」と回答をもらった製品があります。私は「こっちはありがたいけど・・・大丈夫なんでしょうか」と思ってしまいます。単価と数量で売上を計算して原価率を勝手に考えて計算すると・・・せいぜい数万円?ECならいいんですけどね。多品種小ロットで薄利が当たり前になりすぎてないでしょうか。

「作りたいモノを作って、小ロットでも売上の足しになればハッピー!」という方も多いです。私自身もそういう考えは好きですし、そう割り切るならいいと思います。しかし、一つの事業と考えて会社の成長や存続を狙うのであれば、もう少し戦略を考えた方がいいと思う企業が多いように感じました。

技術力を活かす次をどう考える?

中小企業の製品は「これすごい!」から「えっ・・・」というものまでバラツキが大きいように思います。基本的に技術や思い入れなど、何かしら素晴らしい特徴があります。一方で、売るためのノウハウや、上述したようなビジネスでの狙いが定まっていないなど、不足な点も多いです。だからバラツキが大きくなるのだと思います。

技術や思い入れがあり、色々考えてアイディアを出して作ったモノは、大当たりが出る可能性はあると思います。今の大企業も起業時はそうでした。辺り確率を上げることが重要ですが、ギフトショーに来ている企業にその確率が高いか低いかで考えると・・・難しいです。

メーカーとデザイナーが組んで製品開発しているところや、海外の製品と自社製品で新しい価値を出しているところや、カスタマイズの自由度を上げて対応力で勝負しているところなど、様々な工夫をしている企業が多く見られたのは非常に素晴らしかったです。こういった動きを加速して、自社に閉じこもった開発から脱却するといいですね!

中小製造業の商品が売れないのはなぜ?

まず、売れない原因を考えてみると、以下の4つが考えられます。

①マーケティング担当が不在で、ノウハウもない
②顧客視点の商品開発、デザインのノウハウがない
③商品販売の事業計画を立てることができない
④受注~出荷のオペレーションが準備できない

①マーケティング担当が不在で、ノウハウもない

多くの中小製造業は、マーケティングやプロモーションの考え方ややり方やノウハウ、ECなどのツールの理解がありません。マーケティング担当なんてまずいないです。だからオンラインのマーケティングも十分にできず、展示会のようなオフラインのマーケティングも十分にできません。顧客のニーズを捉える活動もなかなかできないですね。

②顧客視点の商品開発、デザインのノウハウがない

顧客のニーズをとらえることができなければ、当たり前ですが顧客視点の商品開発はできません。デザインも「製造ありき」になり、本当に顧客の立場に立ったデザインは難しいです。そもそも経験値が少ないので難しい領域ですね。

③商品販売の事業計画を立てることができない

とりあえず商品を作ることができても、その事業をどうしたいか構想し、具体的な事業計画や操業計画に落とし込むことが難しいです。これができないと「隙間時間に作る」域から抜け出せず、隙間時間に作っている限りは大ヒットにはほぼならないです。超絶低確率でたまたまバズって、という可能性がゼロとは言いませんが、世の中そんなに甘くないです。

④受注~出荷のオペレーションが準備できない

「正直、バカ売れするのは待って欲しい」という声を聞いたことがあります。「そんなにいっぱい売れても待ってもらうしかないから」という話です。ある程度まとまった数をスムーズに流すオペレーションや、納期回答を即座に行う操業計画がないんですよね。仕方ないですが、どの段階で整えるか考えないと「バカ売れ」はなく機会損失が増えるだけです。

中小製造業の商品を売るには?

では体力もなくノウハウもない中小製造業が商品を作って売るにはどうすればいいのでしょうか?小難しい表現も入っていますが、なるべくシンプルに説明します。

①商品販売事業のビジョン・ビジネスモデルを描く
②マーケットを想定し、顧客ニーズを確認する
③②の結果をデザインに反映させる
④売る手段とサプライチェーンを設計する
⑤①~④を仲間やコンサルタントと一緒に実行する
⑥小さくPDCAを回す

①商品販売事業のビジョン・ビジネスモデルを描く

商品を作ってからでもいいですし妄想でいいので、どういう人にどのぐらい売りたいか思い描いてみましょう。それを実現するための販売方法や工場の創業イメージ、材料の調達などをできるだけ具体的に妄想します。これを繰り返して妄想の精度を上げて、プランにします。繰り返しますが、妄想・思いつき・無茶ぶり、なんでもOKです!

もちろん「趣味の範囲でやる」「稼働の穴を埋める」「ものづくりを楽しむことを伝え、採用に繋げる」といった目的でビジョンを描いてもいいです。「少しだけ売る」というのもそんな簡単ではなく、顧客の購買を自分でコントロールなんてできませんし、小ロットではさほど儲からないので事業継続も難しいです。

このビジョンを決めることが経営者の重要な仕事です。

②マーケットを想定し、顧客ニーズを確認する

最初に誰に使ってもらいたいか、具体的に想定します。30代主婦、50代サラリーマン、オフィスの事務担当・・・など人のイメージを考え、それもできる限り具体化します。使い方やその商品の探し方から買い方までイメージすれば、どういうニーズがありそうか見えてきます。

③②の結果をデザインに反映させる

単に「カッコイイ」だけでは売れません。「これが家のこの場所にあると素敵だし、非常に使いやすく長持ちするので1個は家に置きたい」ぐらいまで顧客が思ってもらえると売れます。そういった使う人の世界に溶け込むイメージをデザインにすることが重要です。既にデザインが終わっている場合は、修正は次回のモデルチェンジを待つとして、現段階でどういうことが考えられるかイメージしましょう。

④売る手段とサプライチェーンを設計する

売る方法「自社EC、マーケットプレイス、クラウドファンディング、○○ショップ、大手流通、代理店など」、地域「都市/地方、国内/中国など海外」といったことから狙いを定め、さらにそこで売るための作戦を立てます。どういう人と繋がりたいか、どういう成功事例が欲しいか、広告媒体は何を使うか、SNSは何をどう使うか、など様々なことを考えます。それらを考えて計画にすると販売計画ができます。

販売計画に合わせて、調達や製造、出荷を考えると操業や人手のイメージができますね。

⑤①~④を仲間やコンサルタントと一緒に実行する

これらを一人でやるのは至難の業ですし、一社が1商品だけ扱っても売るのは難しいです。

ギフトショーに「町工場プロダクツ」というブースがありました。町工場が集まって町工場をブランディングしています。

お聞きした話では、大手小売から「町工場コーナーを作って出店しないか」という話も来ているそうで、力を合わせた事例かと思います。

さらにターゲットを見据えた世界観があり、金属だけでなく樹脂加工まであると色の自由度も上がってワクワク感を出しやすくなるなど、もっと良くなる余地があるので、売れるブランドになる期待が持てました。

⑥小さくPDCAを回す

そんな色々できないですよね。ここまで書いたことを一気に進めることが難しい場合、小さく始めて小さく検証して少しずつ良くしてもいいと思います。ノウハウを貯めたり、続けることで仲間を探したり、何もしないよりメリットは多くあります。

ただあまり遅いと時代は変わりますので、小さすぎて歩みが遅いと発展させることが難しくなることには注意しましょう。

最後に

文章だけでざっと書きましたが、要は、

・顧客視点に立つ
・マーケティングと販売をちゃんと考える
・他人の手を借りる/他社と手を取りあう

ということが言いたかっただけです。

私の実家でも何かやりたいのですが、なかなか・・・。「言うは易く行うは難し」です。



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