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中共スマートグリッド全世界支配構想

■ 日付: 2020年8月6日
【中共のスマートグリッドにみる電力業界の未来】

先日、7月21日、中共最大のスマートグリッドプロジェクトが山東省青島でスタートしました。今回は、中共で構築されつつあるスマートグリッドというインフラが、今後どのように、中共の電力業界を変えていくのか、そのインパクトを考察していきたいと思います。そして、それは、日本の電力業界・エネルギー業界の未来を予測する上でも、一助になると考えていますので、ぜひご覧いただければと思います。(こちらは、オリジナルの英語版ブログを翻訳したものになります。原文をご希望の場合は【Smart Grid, A Game Changer】をご参照ください。)

図1:青島スマートグリッドコントロールセンターの写真

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<重要ポイント>
中共は、過去10年において、再生可能エネルギーの消費を促進し、電力網のエネルギー効率を高めるために、主要な国家インフラとしてスマートグリッドを開発してきた。
将来において、スマートグリッドは、中共における再エネ電力の棄電、電力需給のバランスなどの問題を解決する手段となり、加えて、大陸間のグローバルエネルギーインターネット(世界エネルギーインターネット)の構築における重要な構成要素となる。
スマートグリッドは、超高電圧(UHV)送電ネットワークが十分に発達し、情報通信技術(ICT)が5G時代に進歩するにつれて、成熟・普及していく。

<はじめに>
スマートグリッドとは、高度なセンサー、ICT、そして、自動制御技術が統合された最新の電力グリッドを指します。(図2参照) 。様々な発電施設と大規模なUHV送電ネットワークに接続しており、再エネ発電のなどの電力供給の開発・発展と多様化する消費家の要求に応え、さらには中共と世界を跨ぐ、エネルギーインターネットを構築するビジョンの実現の為の主要なインフラになります。

(テクノロジー・政策などの詳細の説明につきましては、ブログ後半をご確認ください。)

図2:中共のスマートグリッドビジョン

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<中共のスマートグリッドにおける考察>
スマートグリッドは、中共の電力業界、さらには、世界のエネルギー業界全体にとって大きな転換点になると私は予想しています。以下、短期~長期にかけて、スマートグリッドが、中共の電力業界・産業をどのように、発展させていくのかについて、私の考察を述べていきたいと思います。

1.短中期的には、UHV送電ネットワークと水素輸送・貯蔵を組み合わせることで、電力需給の不均衡と再エネ電力の棄電という問題を解決する。

中共では、電力需給の不均衡は、依然として解決すべき最大の課題の一つです。再生可能エネルギーおよびその他の発電用の天然エネルギー資源は、主に中共の北部と西部地域に集中しています。しかし、この地域の需要だけでは、発電された全ての電力を消費することが出来ず、棄電が発生しています。一方で、人口の大部分を抱える、中共東部と南部では、電力需要は北部・西部と比べ比較的高くなっています。ただし、東部と南部では逆に再エネ資源は不足している為、需要に対して、再エネは十分な量が消化されていないという状況があります。したがって、仮に、北部・西部の再エネ電力を東部・南部に送るといった省を跨ぐ長距離送電ネットワークがなければ、北部と西部では、発電機会のロスである棄電が発生し、一方で、東部と南部では、消費家が再エネ電力の消化不足に直面する事態に陥ります。これでは、再生可能エネルギーの消費の促進、およびCO2の削減を効果的に実施することができません。(棄電についは、こちらのブログ【中共の棄風・棄光問題について】をご参照ください。)

しかし、UHV送電ネットワークの開発により、このような電力需給の不均衡の問題は、大幅に解決され、同時に、再生可能エネルギーの消費が促進されることが出来ます。実際、これらの高圧送電設備設置以来、再生可能エネルギー由来の電力の平均棄電率は、大幅に減少・改善されてきています(図3、4)。また、2020年から、新たに導入される再生可能エネルギー由来電力消費保障メカニズム(可再生能源电力消纳保障机制)は、更に、再エネ由来の電力の消費を促進していくことが考えられます。(こちらについては、次回以降のブログにて、詳しく説明させて頂こうと思います。

図3:中共における風力発電の棄電量(棄風量)と棄電率(棄風率)の推移

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図4:中共における太陽光発電の棄電量(棄光量)と棄電率(棄光率)の推移

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近隣地域を超えて送電することにより、UHVネットワークは中共西部および北部での再エネ由来の電力の消費を促進するだけでなく、中共東部および南部での高い電力需要にも対応していくことが出来ます。さらには、技術の進歩に伴い、UHVネットワークにおける送電ロス率が低下した(例:1.5%/1,000km)ことで、送電事業のコスト効率が向上しています。長距離送電中に、浪費する電力が減少し、需要家サイドに効率的に電力を供給し、より多くの電力を消費することができます。

この新しい解決策は、当ブログコーナーで数回に渡り紹介させて頂いている水素輸送ビジネスの競合の様に見えます。(水素輸送ビジネスについては、こちらのブログ[考察]Air Liquideの中共水素エネルギー市場進出におけるSinopecとの提携のインパクトをご参照ください。)しかし、UHVにもいくつかの制限があります。第一に、UHVは地理的条件により、現時点では、中共全土を隅々までカバーすることは難しいと考えられます。また、UHVそのものは、電力を貯蔵することは出来ませんから、あくまで、オンタイムの需要に対応するだけであり、同時に、オンタイムの需要を超えて発電された電力に対しては、別途、電力を貯蔵する装置・システムが必要になります。このような場合において、水素はエネルギーキャリアとして、UHVインフラが未開発の地域で、水電解を通して、余っている電力を水素に変えることで、輸送することが出来ます。また、UHVが配備されているエリアにおいては、国の電力網に送電される前、または、送電後の需要家に近いところで、余っている電力を水電解を通じて水素に変えて、電力を貯蔵するといったような活用方法も検討されています。これによって、棄電率の更なる低下、及び電力需給の均衡を達成することが期待されます。そして、そのように製造された水素は電力不足発生時に燃料電池を通じて電気を取り出しグリッドに流す、といった電力ピーク調整に活用される他、現在中共で盛り上がりを見せているFCVやその他の水素燃料電池アプリケーションの水素需要に対しても供給することできます

図5:中共のUHVネットワークと棄電による水素製造のポテンシャル

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2. また、需要家サイドにおいて、スマートメーターがエネルギー効率の高い設備の普及を促します。

例えば、グリーンビルディングというコンセプト(図6参照)は、近年、地球温暖化問題により、中共で、注目を浴びて生きています。承認されたグリーンビルディングプロジェクトの数は、2018年末までに、14,000を超えています。スマートメーターは、アプリで提供されるカスタマイズされたデータ分析結果(例:SGCCオンライン、詳細については、ブログ後半を参照。) により、建物・施設のオペレーターが建物の電力消費について、より詳しく把握することができます。さらには、アプリのコンサルティングサービスを使用することで、電力消費計画を最適化することもできます。一方で、屋上にソーラーパネルや、小規模風力タービンなどの分散型発電機を備えたエコフレンドリーな建物の場合には、スマートメーターを使用して、発電量を測定することができ、発電された電力が建物で消費される電力を上回ったことを検出した際(余剰電力が発生した際)、アプリはオペレーターに通知して、余剰電力をグリッド会社に販売するか尋ねます。これは分散型再エネ発電における棄電の削減にもつながります。このように、将来的には、ボタンをクリックするだけで、グリービルディングなどのエコフレンドリーな建物のオペレーターは、費用対効果とエネルギー効率に優れた施設管理を実現し、さらには、売電によって収益を増加させることが出来るようになるでしょう。

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図6:中共のグリービルディングのコンセプト

中期的には、スマートグリッドは、特に、分散型電力市場や、スポット電力市場での電力市場取引を促進していきます。
まず、前述したように、スマートメーターは、グリーンビルディングに設置された分散型発電機の電力販売ビジネスを実現することができます。同様に、他の分散型発電所においても、スマートメーターを利用して、電力を、直接グリッド会社や、分散型電力市場にて近隣の消費家に、容易に販売することができます。さらには、電力市場では、スマートグリッドがビッグデータ分析に基づいて電力供給プロセスを自動化することで、売買契約締結の流れがスムーズになり、さまざまな市場プレーヤーにとってより多くの電力ビジネスのチャンスが生まれます。

現在、中共では、電力の供給過剰または供給不足を避けるために、政府によって電力市場の取引は規制されています。とりわけ、再生可能エネルギーはその発電の変動特性から電力供給に変動を生み出し、予期せぬ時に、電力供給の不均衡を引き起こします。これの問題に対処する為に、政府は短期における電力需給の均衡をとるために、スポット市場(今必要な電力を、今買うという市場。通常は、将来必要な電力を前もって購入する。)を開始し、現在8つの省においてパイロット市場が稼働しています(内モンゴル自治区、山西省、甘粛省、山東省、四川省、浙江省、福建省、広東省)。スマートグリッドが契約の流れを簡素化および加速化するにつれ、より多くの企業や個人でさえスポット市場に参加しやすくなると考えられます。

4.長期的には、スマートグリッドは、グローバルエネルギーインターネットの基盤となります。
地球規模におけるエネルギー危機と地球温暖化問題に対処するために、このコンセプトは、2015年に中共の習近平総書記によって提唱され、2019年に国連地球環境ガバナンスのフレームワークに組み込まれました。グローバルエネルギーインターネットはスマートグリッド、UHV送電ネットワーク、クリーンエネルギーという3つの主要な構成要素を備えた相互接続された現代エネルギーシステムの一つであり、そのビジョンとして、「九横九纵」(直訳:9つの水平と9つの垂直)という送電網の構想が掲げられています(図7参照)。それは、五大陸を1.25TWの送電容量で接続するネットワークインフラを基盤としており、つまり、スマートグリッドは、クリーンなエネルギー源に基づいた世界初のエネルギーインターネットというビジョンの構築に不可欠な要素になります。

図7 : グローバルエネルギーインターネットの構想

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グローバルエネルギーインターネットのある未来の世界では、中共の主な役割は、再生可能エネルギー源が不十分な国への、グリーン電力(再エネ電力)供給者、および高度な技術を持たない国へのUHVやスマートグリッドの供給者となることだと想定されます。中共の電力需給状況は、概して、供給過剰であり、これは中共が世界に電力を供給する大きな可能性を秘めていることを示しています。この目標を達成する為には、費用対効果の高い配電設備(UHVネットワーク)と高度なエネルギー管理システム(スマートグリッド)が必要になり、現在、中共国内でUHVネットワークとスマートグリッドは建設・普及中であり、成功しつつあることが証明されてきています。この技術の進歩に伴い、中共は電力および、関連技術を、諸外国に販売する可能性が高いと考えられます。

それにもかかわらず、この計画には、いくつかの障害があります。簡単に述べますと中共の電力事業は、5Gグローバル事業と同様の困難に直面すると考えられます。まず、エネルギーにおける安全面とサイバーセキュリティは、全ての国において主要な懸念事項であります。各政府は国内の電力供給に対するコントロールを放棄し、他国に依存することは望まないでしょう。かつ、言うまでもなく、スマートエネルギーシステムは国家のサイバーセキュリティの脅威になりえます。第二に、様々な国にまたがってグローバルエネルギーインターネットを構築する為には、各国政府間での交渉と合意を必要とし、これは反グローバリゼーション傾向の状況下では、達成することが難しくなります。

以上を、まとめると、スマートグリッドはUHVとICTを通じて、長距離送電と柔軟な送配電を可能にします。これにより、中共の電力市場取引ルールが、より緩和される可能性があり、かつ長期的には、スマートグリッドは、中共をグリーン電力の消費大国のみならず、グリーン電力と電力関連技術のグローバルサプライヤーへと進化させる可能性を秘めており、グローバルエネルギーインターネットの構想に繋がっていきます。

ここまでが、中共のスマートグリッドにおける私の考察になります。次に、スマートグリッドにおいて鍵となるテクノロジーと政府の政策を紹介させて頂きたいと思います。

<中共のスマートグリッドにおけるキーテクノロジー>

1:UHV(Ultra-High-Voltage, 超高電圧)送電ネットワーク

UHV送電ネットワークは、1000 kV AC、±800 kV DC以上の送電技術を指します。従来の送電網と比較すると、UHV送電容量は2~3倍高く、オペレーションにおける信頼性は8倍まで向上され、キャパシティに対するコストは28%削減することができます。国家電網(SGCC)と南方電網(CSPG)は、中共の送電を独占的に担う2大国営企業であり、中共国内のUHVネットワークの投資と建設をこの2社で進めています。国家電網はこれまでに総計容量1500TWhの22のUHVネットワークを完成させています。

図8:中共のUHVネットワーク

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UHVプロジェクト事例:准东-皖南±1100 UHV DC送電プロジェクト

このプロジェクトは、2019年9月に、新疆から安徽省にむけて始まり、中共6つの省を横断する3,324 kmの世界で最も長い送電プロジェクトであり、総額407憶元が投資され、世界で最高の12GWの送電容量と1.5%/1000kmの低い送電ロス率を誇ります。

このプロジェクトにおいて、直流(DC)送電電圧が±800から±1100 kV、送電容量が6.4GWから12GWに、送電距離が3000〜5000 kmに増加し、これは技術の画期的な進歩示しています。 最も重要なのは、1000 kmあたりの送電ロス率が約1.5%に減少し、送電効率がさらに向上したことです。

2.スマートメーター
スマートメーターは、スマートグリッドにおけるデータ収集を主として担う重要な構成要素であり、エンドユーザーと配電ネットワークをつなぐ橋渡し役として機能します。2019年までに国家電網は、管轄区域の99.57%をカバーし、総計設置数は、約4億7千万台に達しました。同様に、南方電網は管轄区域の100%をカバーしています。中共はスマートメーターの普及において大きな成功を収めており、それは、諸外国と比較すると顕著です。例えば、イギリスでは、「Ofgem」という政府のエネルギー規制機関が管轄区域で85%の普及率を達成するという目標を2024年12月まで先延ばしにしており、同様に、アメリカでは、2024年末までに80%以上の普及率を達成するとみこまれていますが、2018年までに、スマートメーターの普及率は57.87%であり、中共の普及率には及びません。

スマートメーターの主な機能:
電力計測
データ収集と処理
リアルタイムモニタリング
自動制御
エンドユーザーと変電所間での相互情報交換

図9: スマートメーター

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3. SGCC Online 网上国网
SGCC Onlineは、27の省・都市の個人及び商業用電力消費家向けに開発されたアプリで、スマートメーターに接続し、分析サービスを提供して、ユーザーの電力消費を最適化することを目的としたアプリサービスです。加えて、家庭用太陽光発電機におけるコンサルティングサービスなどのソリューションも提供します。

図10:アプリSGCC Onlineの携帯画面のスクリーンショット

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アプリは、家庭、店舗、電気自動車、企業、新エネルギーの5つの消費シナリオからなるサービスセクションで構成されています。たとえば、家庭でアプリをどのように利用するかというと、ユーザーはアプリを利用して、電力消費の分析と電気料金の支払いなどを行うことが出来ます。更に、電気自動車を所有している際は、アプリを利用して、充電ステーションを検索・利用することができます。このように、国家電網は、アプリを通して、包括的なサービスを提供し、多様化したユーザーのニーズを満たすことを目指しています。

<政府のスマートグリッド開発計画>
スマートグリッドの開発は、国家電網の企業の開発計画としてスタートし、後に、NDRCとNEAによって承認され、国家の主要戦略として推進されているという経緯があります。2020年末までに、政府は総額3.7兆元を投資し、強固なスマートグリッドの構築を目指しています。

図11: 中共のスマートグリッド統治・管轄の仕組み

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1.十二次五カ年計画(2011‐2015)
エネルギー開発・供給に加え、スマートグリッド建設に適した環境を作り出すため、政府は以下の開発・計画を目標としました。
UHV送電ネットワーク
送電ネットワーク
スマートメーター
スマート充電施設
電力供給能力・安定性

2.十三次五カ年計画 (2016-2020)
スマートエネルギーシステム・インターネットを構築するため、以下を計画しています。
エネルギーインターネット開発のための電力供給・ネットワーク・需要・貯蔵(源-网-荷-储)の開発の調整
Smart Soceity の開発促進
分散型エネルギーとマイクログリッドの開発

以上、長くなりましたが、簡単にまとめさせて頂くと、スマートグリッドとは、単なるコンセプト・概念ではなく、中共で、現在進行形で構築されてきているエネルギーインフラです。そして、中共のスマートグリッドを理解することは、将来の電力業界に関する洞察を深めるうえで役立つと考えます

<流弾視点>
さて、長々とご自慢のスマートグリッドについてご説明がありました。既存エネルギーの効率化をスマートグリッドで代替えしましょうというお話です。
結論 → 必要なし
日本地区は、孫正義さんがキーになっております。
電話通信の次は電力だ!って太陽光発電もやっておりました。
ニューヨーク証券取引所から中国石油メジャーの廃止があれば、即とん挫です。結局のところ、資金調達はアメリカが頼みで、計画が成功すれば世界を牛耳れると中共が宣言しております。
中共に逆らう国は電力遮断だ!----というはずです。
アメリカが中共の5G追い出したのは正解。もうすでに、アメリカで開発申請とは違う、電力基地が作られました。
中国よりの立命館大学の2002年の資料も確認ください。

今、液化天然ガスの話題も重要です。

エネルギー戦争も同時進行です。

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