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点眼薬がすべて1日1回ならいいと思った話し

今日は眼科の前の薬局で働いてきました。
眼科といえば今の時期は花粉症の薬がよく処方されます。
最近の花粉症治療薬のうち、点眼薬は優秀なものが増えています。

たとえばアレジオンLX®点眼液0.1%はアレジオン®点眼液0.05%を改良したものです。
アレジオン®点眼液0.05%は1日4回点眼する必要があります。
しかしアレジオンLX®点眼液0.1%はアレジオン®点眼液0.05%の濃度を2倍にすることで1日2回の点眼で済むように設計されています。

ちなみに「LX」とはlasting extendの略です。
効果をさらに長く引き伸ばすという意味の造語で、持続性という意味があるようです。
このLXとつく医薬品はほかにはジクアスLX®点眼液3%があります。

アレジオンの優秀なところは他にも防腐剤を含まないという点があります。
防腐剤である塩化ベンザルコニウムが含まれていると保存性はよくなります。
しかしコンタクトの上から点眼ができないというデメリットもあります。
最近はコンタクトをする人が多いのでこの点は便利です。

ところで点眼薬の多くは1日に何回も点眼しなくてはいけないというデメリットがあります。
たとえば白内障治療薬であるピレノキシン®点眼液0.005%は1日3~5回点眼が必要です。
ほかにも緑内障治療薬であるアイファガン®点眼液0.1%は1日2回ですが、面倒に感じる患者さんが多いという印象です。
そう、つまるところ点眼薬は使用するのが面倒なのです。

たかが点眼薬ですがやはり慢性的に続く目の病気の場合は使用を継続しないといけません。
たとえば白内障や緑内障は目の疾患の代表例です。
白内障や緑内障は点眼を毎日しないと進行してしまいます。

そこで最近では1日1回で済むような点眼薬の開発が行われています。
点眼薬に製剤学的な工夫を施し、なるべく1日1回で済むような設計をするのです。

なかでもリズモンTG®点眼液はおもしろい製剤設計が施されています。
リズモンTG®点眼液の主成分はチモロールですが、これは緑内障治療薬として使用されます。
そして添加剤に含まれているのがメチルセルロースというものです。

メチルセルロールは増粘剤として働きます。
点眼後、体温によりメチルセルロースの温度が上昇するとゲル化して目に留まりやすくなるのです。
ゲル化すると持続性が上がり、1日1回の点眼で済みます。

メチルセルロースはおもしろい特徴があります。
それは熱を加えると粘度が上がり、ゲル化するという特徴です。
なかなかおもしろい性質をもっています。

普通は熱を加えると粘度は下がります。
身近な例ですとカレーですかね。
前晩に作ったカレーが朝には鍋のなかで固くなっていることがあります。
カレーを温めるとだんだんとやわらかくなり(粘度が下がる)元のカレーに戻ります。

メチルセルロースに熱を加えるとなぜ粘度が上がるのかはまだわかってないそうです。
おそらくメチル基同士の疎水性相互作用だろうと言われているようですが、機序は不明です。

ちなみに熱を加えるとゲル化して点眼できなくなってしまうので、リズモンTG®点眼液の保管は冷蔵庫になります。
誤って冷蔵庫から出して保管するとゲル化してしまい、点眼できなくなります。
ですが冷蔵庫に30分ほど入れると液体に戻るようです。ゲル化したとしても焦らないようにしましょう。

メチルセルロースを加えればすべての点眼薬を1日1回にできると思われますが、現実はそこまであまくありません。
医薬品には相性があります。
また特許という大人の事情もあります。
なんでもかんでもゲル化させて1日1回で済むようできるわけではないのです。

1日に何回も使用する点眼薬はたしかに面倒です。
私も以前にものもらいで点眼薬を使用したことがありますが、そのときにもらった点眼薬は1日4回の使用でした。
使うのが面倒でしたし点眼するのを忘れることが多かったです。

点眼薬を使用しないに越したことはありません。
ただ個人的には慢性的な病気に使用するならば、なるべく1日1回で済むような点眼薬を渡してあげたいです。



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