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佐々木朗希vs吉田正尚

今日本でナンバーワンのポテンシャルを持っているだろう佐々木朗希と、今日本で最も打ち取るのが難しい吉田正尚との勝負。どうしても記録に残しておきたい素晴らしい勝負だったので振り返ります。

第1打席

初回2アウトで迎えた第1ラウンド。

挨拶代わりのアウトロービタビタ160キロ。打てるわけがない。そして147キロ、148キロのフォークで3球三振。オーソドックスかつ一切無駄のない完璧な3球だった。

第2打席

第1打席の三振を始まりに、9者連続三振中に迎えた第2ラウンド。初球は本日2球目のカーブで入り見逃し、なんと2球目も続けて空振り。真っ直ぐフォークどっちを狙おうかと考えている場面に意表を突いて簡単に追い込み、148キロのフォークをなんとか当ててファール。正直あのフォークを当てるだけでも凄い。そして149キロのフォークに空振り三振。見事10者連続三振の記録を打ち立てた。

カーブという球種は独特で、スピードの球速差に軌道が完全に独立したボールであり、あまり多く投げるものでもないため、多少質が伴ってなくとも意表を突いてカウントが取れる、使い所に頻度さえ気をつければとても有効なボールである。全体でたった3球しか投げていないカーブだが、その2球を吉田正尚に使った所にも警戒しているのが見てとれる。試合後、本人はここが唯一のチャンスだと語っていた。確かにカーブ単体だけを見れば1番可能性のあったボールだろう。しかし完全に頭にないタイミング、ほとんど投げてこないボールをこの場面に使ったことが肝であり、バッテリーの完全勝利だった。たかが2球、されど2球のこのカーブがこの日のピッチングに大きく影響したのは間違い無いでしょう。

第3打席

動画がなかったため、全球動画をこっそり見てください。

第2打席で三振に取ったフォークが配球の表になる第3ラウンド。初球フォークのサインに首を振り、真っ直ぐを投げ見逃しストライク。1-2の打者カウントでフォークを投げて空振り。最後は予想していたサインと違ったのか少し間があり、ニヤッと頷いて投げたインコース真っ直ぐで見逃し三振。滅多に三振しない男を3打席全て三振に取った。

ここで興味深かったのがバッテリーのサイン交換である。捕手サイドとしては、回も深くなり徐々に球威も落ちてくる頃だと考えたのか、スッと真っ直ぐで入るのはやめ、安全に今日抜群なフォークのサインを出したのだろう。しかし投手サイドは直前にフォークで三振を取っており、1打席目もフォークにやられているのでそっちに意識がある、また自分の真っ直ぐの球威はまだまだ押し込めると考え、首を振ったと考えられる。これはどちらも意図を理解出来る考えであり、どっちを選択しようが納得出来るような攻め、配球を序盤から重ねてきた事が素晴らしい。ただ捕手のサイン通りに投げる、状況も見ず固定概念に囚われたサインを出すのではなく、こうして自分の考えを持って意見をぶつけ合い、サイン交換が出来る両者はとても理想的な関係である。結果初球は真っ直ぐに遅れた見送り方でストライク、三振に仕留めたボールはフォークが頭にあり手が出ず三振。初球は佐々木、ラストボールは松川と両者の素晴らしい感性により、ストライク3球全て裏をかいた配球だった。


この勝負で凄いのは、誰もが狙うであろう真っ直ぐを、とんでもない空振りをしようがアウトにはならない、100%張ることの出来る0.1ストライクカウントから投じるのを最小限に留めている、また投げるにしても甘いゾーンに投げてない事である。実際真っ直ぐは1打席目のアウトロービタビタ(打てない)、3打席目のフォークが頭にある場面の初球、その後のボール球2球に最後の裏をかいた球と、意識付けなしにスッと投げたボールがなく、また甘いゾーンにも投げてない。佐々木クラスのボールを持っていてもここまでやっているのだから非の打ち所がない。元々打てる可能性が少ないところを、限りなく0に近づける、3打席トータルで組み立てをした見事な対戦だった。

これから佐々木松川バッテリーの活躍が楽しみで仕方ない。


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