現役最強バランサー 中村晃
中村晃の凄みを文字に残しておきたかったので書きました。特に際立っていた2020年ポストシーズンの活躍を振り返って行きたいと思います。
このコラムを中村晃にスポットを当ててさらに詳しく書いたものと思って読んでください。宣伝です。
CSファイナル第2戦
CSMVPを決定付けた2本のホームランを深掘りします。
1本目は、1アウトランナー1塁で迎えた打席で初球の真っ直ぐを引っ張り込んで2ランホームラン。
2本目は、1アウトランナー2塁で迎えた打席でカーブ、ツーシームとボールになり、カウントを取りに来たスライダーを巻き込んで2ランホームラン。
文面だけを見ればあまりにも安易な初球の入り方だが、ファーストストライクはある程度見てくると知っている、ホークスを研究し尽くし、幾度となく苦しめてきたロッテのキャッチャー田村だからこそ起きたホームランとも言える。過去の傾向を過信し過ぎた結果、次の打席で真っ直ぐを投げにくくなり、カウントが悪くなった所で試合後に狙っていたと語ったスライダーをホームラン。自身のデータ(傾向)を逆手に取った、撒き餌にしたかのような狙い打ちだった。ロッテとしては少しの油断で後手後手に回ってしまい、取り返しのつかない1球となってしまった。
昨シーズンにも1.2打席目の真っ直ぐに全く反応せず、チャンスで回って来た打席で狙って仕留めた、なんて試合も見たので確実に餌を撒いて回収している場面は存在するでしょう。
日本シリーズ第1戦
これほど使う側が期待してる点の取り方はないでしょう。投手は左腕の高橋優貴。周東が出塁して迎えた打席。中々スタートが切れず、甘い球にはスイングを掛けつつカウントを整え、6球目に盗塁。そしてフルカウントからの8球目、見逃せばボールになりそうなスライダーを上手く拾ってレフト前に落とし、追加点。
ただ盗塁を待つだけではなく甘い球は積極的に打ちに行き、追い込まれればなるべく自分の打席でスタートさせて次の柳田をフリーにさせようとする粘り、そして2塁に行けば外野の前にさえ落とせば帰って来れるのを頭に入れた打撃、全ての塩梅が良く完璧な結果だった。
日本シリーズ第3戦
2020シーズンで最も中村晃の凄さが出た試合と言っていいでしょう。全4打席に見所があったので振り返ります。
先頭の周東が1球で打ち取られ迎えた第1打席。いつもの中村晃であれば確実に初球は見送る場面だったが、真っ直ぐに手を出しセカンドフライに倒れ2球で2アウトとなってしまった。
この記事にもあるように、短期決戦はいかに失投や打てる球を逃さないかが重要であり、狙い球を決める事も大切である。おそらくこの日のサンチェスであれば真っ直ぐを弾き返そうと考えるでしょう。あの中村晃でも狙い球が来ればどんな状況であろうと打ちにいく、結果アウトにはなったものの、展開や球数稼ぎを考えない、レギュラーシーズンの1戦とは違うと感じさせられた打席だった。
両先発の好投で0-0のまま、周東がエラーで出塁して迎えた第2打席。外の真っ直ぐ、内のカットと完璧なコースに投げられ2球で追い込まれた。ここでいつも通り"真っ直ぐをカットしながら高めの変化球を狙う"アプローチに変え、際どいフォークを2球見送った後の5球目、狙っていた高めに浮いてきたフォークに反応し2ランホームラン。
簡単に追い込まれても粘り強く、むしろ追い込まれてからの方が嫌らしいとも感じる。動画内で解説の小久保が言っているように、"どんなに良いピッチングをしていても勝負所の1球を決められる力があるから中村晃は嫌なんです"という言葉は、本人をとても分かりやすく表現した解説だった。
試合が硬直し、先頭打者として迎えた第3打席。
この打席は、カウント3-1からど真ん中の真っ直ぐを見逃した場面がとても印象に残った。
カウント3-1になった時点で、相手投手の制球、自身の選球眼やファールで逃げれる技術などを考えた結果、先頭として塁に出れる可能性が1番高い方法は四球と考え、見事に四球を選んだ。ホームランを打った後でも雑にならず、様々な状況や中村晃自身が自分の能力を客観視出来た素晴らしい打席内容だった。
細かいしあまりスポットも当てられないが、このプレーも流石だった。この挟殺プレーはサードではなくホームに向かうところでアウトにならないと2.3塁が作れない。足が決して速い方ではないが、自分の最低限の役割を果たした走塁だった。
また中村晃はギリギリのタイミングでホームインする走者を助けるために犠牲になる走塁も多く見受けられる。アウトを増やしてでも1点は確実に取り、またそのままバックホームすれば次の塁を狙う走塁も怠らない、ここでも"データや数字には表す事の出来ない貢献"という言葉が当てはまる選手であるのが分かるでしょう。
1アウト1.2塁、投手が高梨に変わった第4打席。真っ直ぐを3球見逃し、4球目の真っ直ぐには完全に振り遅れた空振り。追い込まれて迎えた5球目に唯一きた甘いスライダーをライト前に持っていきダメ押し。
左殺しでも関係なし。4球真っ直ぐで追い込まれてもそれを捨てて、決め球であるスライダーを待てる割り切り、また狙っている球を1発で仕留める技術の高さが詰まった打席だった。
先発のサンチェスはPayPayのマウンドとも相性が良かったのか相当良いボールを投げており、正直ホークスが相手でなければ7.8回無失点で行ってもおかしくない出来であった。これは菅野や畠にも言える事であり、ホークス打線の連動性、ミスショットの少なさはちょっと異常に感じたシリーズだった。
同じ打率.270でもシーズン500打席トータルで計算できる打者と、どんな相手でも期待出来るブレが少なく1打席1打席の積み重ねで.270を残す打者の違いがあり、このあたりを見分ける事が出来ると、打線に欠かせないタイプがどのような打者なのかが見えてくるのではないでしょうか。
昨シーズンは思ったような数字が残りませんでしたが、今年は復活し、定位置の2番に戻る事を願って開幕を迎えるとしましょう、ありがとうございました。
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