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3分でわかるウクライナの宇宙活動法

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日本やアメリカには宇宙活動をするための法律がありますが、他国にも存在します。今回は、ウクライナの法律を紹介します。

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出典: ウィキペディア

ウクライナにはロケットを打ち上げる射場はありませんが、ウクライナの宇宙活動法は、宇宙活動の規制に関して信頼できるフレームワークを整備するため、1996年11月15日に制定されました。
ロシアの法律に似ており、宇宙関係機関に関する規定が多く見られますが、ロシアの法律にあるような外国人財産の保護、知的財産権の保護といった規定はありません。ロシアの宇宙活動法については以下もご参照ください。

免許制

ウクライナ宇宙活動法のもとでは、以下の活動を行うにはウクライナ宇宙機関の免許を取得しなければなりません。

①ウクライナ国内の宇宙活動
②ウクライナの管轄下にある国外の宇宙活動

ここでいう「宇宙活動」とは、「科学的研究、宇宙技術の適用と構築、宇宙空間の利用」と定義され、免許が必要な宇宙活動の具体的な内容は別途定めるとされています。

認証・登録

ウクライナの「宇宙施設」は、別途定められる要件に合致しているかどうか認証されなければなりません。
「宇宙施設」とは、「宇宙空間の探査と利用を目的として、デザイン、製造され、宇宙空間と(宇宙セグメントと宇宙インフラ)、地上両方において(地上セグメントと地上インフラ)運営される物体」と定義されています。
また、宇宙施設はウクライナ内閣府による承認のもとでなされる登録も必要です。

公衆安全、環境保護、監督

宇宙活動の主体は、公衆の生命・健康・財産や環境を保護するための要件を満たすほか、宇宙活動から生じる環境破壊を防ぐため必要な対策を講じなくてはならないとされています。
また、ウクライナ宇宙局、ウクライナ国防省、関連する執行機関は宇宙活動の安全に関して監督する責任を負い、宇宙活動の管理は以下の手段によってなされます。

・宇宙活動の主要原則、基準、法則を定義
・平和目的と国家安全のための宇宙空間の利用と研究における国家政策の概念上の基礎を展開
・ウクライナの国家宇宙プログラムの検討
・国家予算により専門人材育成・訓練

事故および緊急事態の通告

宇宙活動の主体は、事故や緊急事態が発生した場合、執行機関に情報を提供しなくてはなりません。 
宇宙活動によりウクライナ国民もしくはその環境もしくは他国に脅威が生じた場合、ウクライナ宇宙局はウクライナの国家機関にすぐに脅威について通報する義務があります。

禁止される行為

宇宙活動を実行するにあたっては、以下のことが禁止されます。

①核兵器、その他の大量破壊兵器、兵器の実験装置を配置すること
②宇宙技術を軍事、その他の人類にとって危険な目的のために影響を与える手段として使用すること
③月や他の天体を軍事目的のために使うこと
④人々の生命や健康に対し直接的な脅威をつくりだすこと、環境に損害を与えること
⑤宇宙汚染に関する国際規範や基準を侵害すること
⑥その他の国際法で認められていない宇宙活動に関連した行為
特別プロジェクトのもとで、行われた宇宙活動によって、犠牲者をだしたり、所有物に多大な損害を与えたり、環境へ損害を与えた場合、その活動はウクライナ法に従って、制限、禁止されることがある。

強制保険

本法では、宇宙活動にあたって保険に入ることを求めていますが、必要な保険のリストは別途定めるとされています。保険に加入していることがロケット打上げの要件とされている日本の宇宙活動法とは異なります。
また、強制保険の手続はウクライナ内閣府により定められるとされています。

損害賠償

本法では、宇宙活動に際して発生した損害の賠償責任自体についての定めはありますが、具体的には別途定められるとされています。
損害賠償についても、基本的なルールが定められている日本の宇宙活動法とは異なります。

ウクライナ国防省の役割

ウクライナ国防省は、防衛と国家安全保障に関する宇宙活動を担い、以下の点について取り扱います。

①軍事宇宙技術の設計・使用、軍民両生宇宙技術に関する国内宇宙政策・ウクライナ国内宇宙プログラムの概念的基礎の基準化
②軍事宇宙技術の設計・使用、軍民両生宇宙技術の設計・使用に関し、各運用作業の順位付けおよび調整を準備
③ウクライナ国防の目的で宇宙技術の使用を許可
④ウクライナ宇宙局と協力し、地上および宇宙のインフラ整備の運用・開発を確証
⑤軍事宇宙技術の認証手続に参画

参考:
・ウクライナ宇宙活動法
https://space-law.keio.ac.jp/pdf/datebase/each_countries/ukraine/19961115.pdf
・日本の宇宙戦略 青木節子
・Handbook of Space Law Frans von der Dunk, Fabio Tronchetti

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