Don't Panic. Just Coding. Piscine is a life.
0. Introduction
0-0 Self-introduntion
私は、2023年8月に「Piscine」を住友不動産六本木グランドタワーにある42Tokyoで受験してきました。実を言うと、私は2020年1月の(42Tokyo初の)Piscineも受験しています。当時は高校生で、今回は大学生として受験しました。
0-1 Introduction to Piscine
Piscineの内容は受験してからのお楽しみです。Piscineの「試験内容」について検索することはお勧めしません。初体験は自分の肌で感じたほうがいいと考えているからです。事前知識があることで見落としてしまうものがあります。事前情報があることで、自分で考えたり、発見したりする機会や喜びを失うこともあるでしょう(第3章もぜひ読んでみてください)。
一次試験のオンラインテストに合格し、Piscineに参加することを決意したら、Piscineに最大限没頭できるよう時間確保に全力を注いでください。お金や家事/食事/宿泊等の問題解決策を入念に練り、仕事や学校/アルバイト/インターン等のスケジュールを確実に調整し、雑念やストレスによる無駄な思考時間を減らす(自分なりのストレス解消法を見つけておく/Piscine前の雑念はすべて晴らしてから参加する)ことがPiscine前の準備では重要だと思います。
1. 人が環境をつくり、環境が人を育てる。
1-0 42のはじまりと42Tokyoのはじまり
読者のみなさんへの課題です。
課題:
42のはじまりと42Tokyoのはじまりについて調べてください。
方法:
インターネットで検索するのも、人に聞くのも方法は自由です。誰かと一緒にやってみてもおもしろいかもしれません。ただし、最終的に自分の言葉で「42の始まりは〜。42Tokyoの始まりは〜。」と説明できるように情報を整理しながら調べてください。参考になりそうな記事を以下に挙げます。
Cue:
「Nicolas Sadirac」「Xavier Niel」「DMM」
42Tokyo 公式サイト
私淑しているnopさんが書かれた記事
42Tokyo 初代事務局長の文次郎さんの記事
Nicolas Sadiracさんの著書
どうだったでしょうか。42、おもしろそうですよね。私も42の歴史は、伝聞でしか聞いたことがないので、詳細はPiscine中や入学後に適切な人から聞いてみてください。
1-1 函館での学び
1回目のPiscine受験後、シェアハウスに暮らしながら、教育・まちづくり分野で活動する企業でインターンをしていました。
シェアハウスでは、同居人がやるカフェを手伝ったり、演劇や展示などのイベントをやったり、地域の祭りなどと連携したりしていました。インターンでは、「建築家チームと自治体と町民が一緒に新しい公共建築物を建てるプロジェクト」のワークショップで場づくりをしたり、「中高大学生とプロのライターがローカルマガジンをつくるプロジェクト」で学生チームの伴走をしたり、「大学生向けのキャリア合宿」を一から企画して実際に行ったり、「ある国立大学のシンポジウムの場づくり」を手伝っていたりしていました。
その中で感じたのは、非力な自分でも、学び考え、企画し、一緒にやる仲間を見つけ、集客をすれば、社会に対して何か少し変化の波紋をつくれるということです。シェアハウスもインターン先の企業も創設時は大学生が代表をやっていました。地域とも深いつながりを築き、さまざまな形で交流が生まれているのを肌で感じると、学ぶことが多かったです。私と同じように、そのシェアハウスで学びを得たり、イベントをきっかけに新たな挑戦をしている高校生や大学生を見ると、「人が環境をつくり、環境が人を育てる」という中学2年の担任がおっしゃっていた言葉の意味が少し理解できた気がします。そして、その環境は、私たちもつくることができるのです。
1-2 高校で学んだ民主主義
もう一つだけ自分の体験を書かせてください。私は、高校1年生のときに将棋同好会を創設しました。部員を集め、顧問を見つけ、部室を探し、規則に則って、1年がかりでつくりました。2年生に上がり、「同好会の対外試合は認めない」という昭和50年代から変わっていない校則を生徒総会で改正しました。その2日後には、県大会で優勝し、初心者から始めた部員6人中4人は卒業までに全国大会に出場しました。多くの先生方が書類業務や他の先生方と協議してくださり、報酬のでない顧問を引き受けてくださり、仲間たちが日々研鑽に励み、同じ高校のみんなが賛同してくれてこそ成し得たことです。部の後輩も全国に行き、生徒会の後輩たちは翌年も別の規則改正を成していました。行動を起こせば、その波紋がいろんな形で広がっていくことを感じた経験でした。
1-3 42とPiscineという環境
この章のはじめで調べていただいたように、42/42Tokyoの創設には多くの方が尽力しています。42Tokyoは、DMMをはじめ多くの企業がスポンサーとなり、素晴らしい環境で学習できます。卒業生や現在42で学ばれている本科生の方々も42Tokyoという場に多大な貢献をされています。
Piscineでも、勉強会を開催したり、それぞれ教えあったり、一人一人の行動の積み重ねで、場が醸成されていきました。だから、Piscineを受験しようとしている読者の方がいらしたら、どんどん仲間をつくって行動して、自分たちの環境をつくっていってほしいなと思います。
自分で環境をつくってみると、今いる環境への感謝が溢れてきます。
2. コミュニケーションがあるところに学びは生じる。コミュニケーションがないところに問題は生じる。
公立はこだて未来大学の美馬のゆり教授の言葉です。
2-1 不登校から1回目のPiscineへ
前述した将棋同好会や生徒会、受験、進路選択のストレスが重なり、不登校になりました。一番の原因は、八方美人になろうと見栄を張っていて、それを保つのが嫌になったことです。誰にも本音を打ち明けず、タスクを振り分けられず、一人で全部やろうとしていました。
たくさんの人に迷惑をかけましたが、多くの人の支えがあって、もう一度進路を再検討できる状態まで回復しました。
そのとき、海外の教育について調べていて見つけたのが、「42が2020年4月に上陸し、そのために最初の入学試験を1~3月に行う」という情報でした。鹿児島にいた自分でもその情報にアクセスできたのは、インターネットのおかげです。不登校の様子を見ていた祖母が応援してくれました。
1回目のPiscineは今思うと散々でした。見栄っ張りな傾向も変わっておらず、上手くコミュニケーションが取れませんでした。合否が明らかになって内省をしたとき、自分のコミュニケーションへの姿勢を改めようと思いました。
2-2 2回目のPiscineで痛感したこと
函館生活で、同世代とも大人の方々とも話す機会が多くあり、以前より人とコミュニケーションが取れるようになりました。自分がつけていた鎧を外しても、肩書きや成果という断片ではなく、私という全体を見て話をしてくれた人たちがいました。
そんな中、42Tokyoが2回目のPiscine受験を認めるというニュースを目にして、再受験を決めました。今回は自分の貯金を使って挑戦しました。
Piscineでは、というより、人生でも、自分から行動を起こさないと前に進めません。この行動というのは、誰かに話しかける、助けを求めるということです。
42Tokyo1期生のユウさんの記事から引用します。
2回目のPiscineでは、分からないことがあったとき、分かっていそうな人に質問するようにしました。そのおかげで、学びが深まり、最後まで泳ぎ切ることができました。
「質問」はとても重要だと思います。ユウさんは、この「質問」についても1ヶ月のPiscine中に思考し、実行されていたので、本当にすごいなあと思います。
3. 学習と質問とピアラーニング
2回目のPiscineでもどう学ぶべきか、どう教えるべきかを考えた私は、Piscineが終わった後、『数学の問題の発見的解き方2』という本に出会いました。9月1日に新装復刊していたので、運命を感じています(Piscineは9/2まで)。
3-1 中学2年生の発見
現在は大学で数学を学んでいる友人と中学2年生のときに、「円に内接する四角形の2本の対角線の比率」に関してある規則を見つけました。その友人に自分の予想を言うと、友人が授業で習った証明の書き方を参考に証明してくれました。それを二人で高校の先生に持って行くと(中高一貫校だったので高校の先生が数学の授業に来ることがありました)、その先生が大変褒めてくださり、高校で学習する三角関数を用いても証明できる話をしてくださいました。
この経験が中学時代に数学が好きになったきっかけです。自分で発見した予想を、みんなが納得できる言葉(友人が書いた証明)にして、一つの法則にできる。それがおもしろくて、初等幾何の授業では予想と証明に明け暮れていました。
3-2 自分が体験して気づいた学びは、あらゆるときに応用できる。
この言葉は、函館でのインターン先の理事の言葉です。この章の初めに、ポリアの言葉を引用しましたが、同じことを意味していると思います。自分の身体を使って、発見した(気づいた)学びは、特定の文脈や場面、分野に限らず、広く応用できると思います。
例えば、私は、インターン先で「信用は積み重ねるまでに時間がかかる。あたりまえのことをあたりまえにやり続けることが信用につながる。しかし、マイナスの行動をとると信用はなくなり、一度失われた信用を築き直すのは大変」だということを身をもって学びました。この学びは、恋愛の場面にも適用できます。また、1章の表題「人が環境をつくり、環境が人を育てる」に関しても、複数の経験からそれを学んで、実際に応用(実践)したこともありました。
Piscineとどう関係があるか疑問に思う方もいらっしゃると思います。Piscine(42/42Tokyo)では、Peer Learningが重んじられています。このPeer Learningをするときに、答えを聞くのも教えるのも簡単ですが、それでは相手(自分)の学びにはなりません。相手が自分で解決できるように、ヒントを出したり、一緒に考えることが大切だと思います。
また、42Tokyoでは入学後の課題に「printf関数の再実装」といった「車輪の再発明」をさせるような課題があるそうです。「車輪の再発明」とは、「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を(知らずに、または意図的に無視して)再び一から作ること」です。42がそのような課題設計を行なっている意図は、「物を学ぶ最良の道は、それを自分で発見すること」だからだと思います。自分で発見できるとそれを学ぶ楽しさも感じられます。
3-3 Piscineでの学習と質問のステップ
教わる側は「最大限自分で発見(解決)できる学び方」をして、教える側は「最大限相手に発見(解決)する喜びを感じてもらう教え方」をすると、素晴らしいPeer Learningになると思います。
では、どのように学習/質問すればいいのでしょうか?
まずは、焦らないことです。Piscineは試験なので、周りと比べて焦ってしまうことが何度かあると思います。でも、理解を疎かにして先に進むと後々になって後悔します。だから、理解を重視する姿勢を大切にしてください。
その上で、前出のユウさんの記事にある質問の型がとても役に立つと思います。
学習やPeer Learningについては、nopさんの記事が大変参考になると思うので再掲させていただきます。
4. 次のPiscine生へ
初めてプログラミングに触れる方/Piscine中に焦りを感じている人へ
What ultimately matters is not so much where you end up relative to your peers but where you end up relative to yourself when you began.
(Harvard UniversityのDavid J. Malan教授の言葉を少し変えています。)
プログラミング経験者/普段独学で学んでいる方へ
"Seul, on va plus vite ; ensemble, on va plus loin"
(Nicolas Sadiracさんの著書『Apprendre 3.0』に出てくるアフリカの諺です)
peerに話しかけるのが怖い方へ
コミュニケーションがあるところに学びが生まれ、コミュニケーションがないところに問題が生じます。自分から話しかける人ほど、話しかけやすい人と思われるそうです。また、Piscineで泳いでいる人たちはみんな優しいです。
Piscineを泳がれているすべての方へ
「マニュアルやドキュメントを丁寧に読み込む」「毎日学んだことを紙に書いたり、復習する」「自分の頭で考え、質問し、言語化しながら理解し、教えあう」など、日々の習慣が大切だと思います。睡眠時間や食事を削るのは良くないです(1ヶ月の試験となると、良くも悪くも習慣の複利が最後の方に利いてきます)。
Piscine中に自分(の習慣)を変化させる必要が出てきて、つらいと感じるときもあるかもしれません。知らない人ばかりの中で、ピアラーニングすることにストレスを感じるかもしれません。でも、そのつらさは成長痛のようなもので、その後には学び(気づき)と楽しさを感じる瞬間があります。つら楽しいPiscineは、苦楽一如な人生の縮図です。
そして、自分の限界を決めているのはいつも自分です(鏡の中の自分と目を合わせ、自分に問うてください)。つらさと楽しさは0を中心にした絶対値のような関係で、苦しんだ分だけ心から笑顔になれると思います。自分の限界を決めず、最後まで泳いでみてください。
5. Piscine is a life.
Piscineでは、技術的知識やスキルだけでなく、普段の日々や習慣、自分自身への気づきや人生に対する新しい視点や学びを得られます。つらいですが、楽しい試験です。万人向けではありませんが、すべての人におすすめです。こちらから応募できます。
一緒にPiscineを泳いでくださったみなさん、42Tokyo運営のみなさん、本科生のみなさん、DMMをはじめとする42のスポンサー企業のみなさん、宿泊先や1ヶ月間の食べ物や飲料水を栽培飼育・製造・輸送しているみなさん、LINEで励ましてくれた家族や友人たち、すべての人に感謝します。ありがとうございました。
参考:
↑スマホ版 こんな活動やってます。 PC版↓
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