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琥珀糖

シーグラスのような色合いで、勾玉の原石のような見た目をしている。いかにも硬そうだ。どうせいつもの砂糖菓子だろうと高をくくる。しかし、その美しさに魅せられて好奇心が勝る。砂糖のかたまりにみえるそれを口にもっていく。

どうせ硬いだろうと思い、舌の上で溶けるのを待った。。。すると、なんと、やわらかいものが現れた。シン食感。砂糖の殻は薄く、中にはゼリー状の寒天が包まれていた。シャリパリッと結晶化した表層とやわらかな深層。ブリュレに似ている。しかし、ブリュレとは似て非なるものだ。なぜなら、目ではなく口にしてはじめて内側がやわらかいと知るからだ。

ピンっと張っていた緊張の糸が緩む感覚と似ている。はじめましての会話や喧嘩後の仲直り。自ずとつくられた心の殻が何かの拍子にひび割れて、じわーーーっと、あたたかくやわらかいものが心に広がる感覚。そんな感覚が口内に広がった。

この琥珀糖は、シェアハウス内の物々交換でもらったものだ。地元の生ラーメンと海苔をあげたら、琥珀糖が返ってきた。私は、この物々交換が好きだ。理由は、琥珀糖の食感と同じ。シャリパリッ、じわーーーっとである。部屋の扉が開くように心の扉も開き、溶け揺らぐ境界からほのかな熱が伝導する。

ありがとう。

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