scp紹介第5回scp-096

scp-096 【シャイガイ】

オブジェクトクラス:Euclid


名前の通りとてもシャイな男性である。
身長が2.38m、筋肉量がとても少なく、軽度の栄養失調、両腕の長さが1.5m、皮膚に色素がなく、体毛もない、顎が普通の人の4倍に開き、知性がない、ということを除けば普通の男性である。


こいつの特性を解説する前に特別収容プロトコルから見ていこう。


特別収容プロトコル: SCP-096は常に5m×5m×5mの鋼鉄製の密封された独房に収容されています。週に1回、独房に裂け目や穴ができていないか検査します。SCP-096の独房の中に監視カメラや光学的道具を設置してはいけません。保全員は設置されている圧力センサとレーザ検出器を用いて、独房の中にSCP-096が確かにいることをチェックしてください。

███博士とO5-█から許可を得てないSCP-096の写真撮影、映像記録、録画と同等の行為は固く禁じられています。


収容室内はカメラで監視するな、こいつの写真・映像・録画と同等ものを許可なく見るなという徹底ぶり。






勘のいい読者ならもう察しが着くだろう。








このシャイガイ、自分の顔を見たものを殺しに行くのだ。
シャイってレベルじゃねぇ。

一応絵は大丈夫らしい、実験記録もある。


この極度の恥ずかしがり屋さんは見た人を消すという執念がハンパねぇ。

こいつは地球のどこにいようが、地下だろうが海だろうが地球の裏側だろうが、最低でも35km/hのスピードで追いかけてぶち殺す。
ちなみに追いかけている間自分の顔を隠そうとしないので、二次被害も凄い。


先程絵は大丈夫といったが、絵を用意した方法については言及していなかったね。
簡単にタイムラインを追って説明しようか。


①絵の得意なDクラス職員を鉛筆と紙・シャイガイの写真の入った箱ともに潜水球に入れる。ちなみに深度は10,800mである。

②シャイガイの写真を見せて、スケッチを書かせる。(この瞬間にシャイガイの脱走が確認される。)

③12分後に完成、スケッチを防水容器に入れ、元の写真を焼却

④潜水球が破壊される。


水深1万mを越えても殺しにくる恥ずかしがり屋さん。




ちなみに、こいつを何とか収容しようと初期探索隊が派遣されたのだが…

捜索隊は顔を見ちゃダメとか、なんにも指示がなかったようで隊長を除いて全滅、運良く顔を見ずに済んだ隊長もトラウマからか退職している。
















さて、このscp-096だが過去に収容違反を起こしている。

その時の記録を要点を掻い摘んで見てみよう。


<記録開始>

研究所内で、大きな鋼鉄製の箱に10人余りの研究者が群がっている。カメラの映像には制御ブースも映っており、箱の中の様々なセンサーの測定値が表示されている。

[1分32秒早送り]

センサーの測定値に注意をひかれて、制御オペレーターが前方へ体を傾ける。およそ5秒後、鋼鉄の収容箱の壁が外側へ大きく歪む。歪みは壊れるまで大きくなり続ける。SCP-096が絶えず鋼鉄を歪ませ続け、死に物狂いで脱走しようとしているように見える。脱走警報が鳴り、非常プレートが箱に落ちる。

[収容プロトコルに従いセキュリティ映像中ではSCP-096の顔がぼかされている]

セキュリティ・チーム2部隊がSCP-096に破られた収容室に入る。実弾と麻酔銃が発射されるも効果は見られない。約90%の研究員と警備員がSCP-096の顔を直視し、コード・リマが発令される。収容室とその周辺エリアは封鎖され██-クラス神経ガスが注入される。

約2分後、SCP-096は研究サイト██から外部の砂漠へ██km/hで脱走し、████へ向かう。
<記録終了>


収容箱のデータを見ている時に収容違反が発生、90%の職員がシャイガイの顔を見てしまったみたいだ。
シャイガイはさらにサイトから脱走。



<記録開始>

ビデオインタビュー記録 096-1-A

[オルクシー博士はとても落ち着いて、覚悟した様子で、すべての質問にゆっくり、慎重に答える]

質問者: 脱走時何処にいたのですか?

オルクシー博士: 脱走時か、コーヒーを飲んでいたよ。収容エリアにいなくて本当に幸いでした。

質問者: 脱走後のあなたの行動を教えてください。

オルクシー博士: ぼくはエコー・ロメオ-アクチュアルにSCP-096を追跡させ、ダン博士に状況を報告しました。それからぼくたちはSCP-096-1を探す仕事に取り掛かりました。SCP-096が向かっている大体の方向が決まったらすぐに、SCP-096の進行経路にある居住地域から人を避難させるために機動部隊タウ-1を派遣しました。すべて収容プロトコルに従っています。

<記録終了>


scp-096のサイトにいたオルクシー博士の挙動である。
scp-096脱走時には休憩室に居たそうだが、すぐにダン博士に報告を入れたそうだ。



<記録開始>

ビデオインタビュー記録 096-1-B

[ダニエル・█████博士はじっと座っている。彼の前のテーブルには改造された暗視ゴーグル一式のようなものが置かれている]

質問者: 念のため聞きますが、SCP-096が脱走している間、どこにいたのですか?

ダン博士: [データ削除済]の山岳地帯だ、SCP-096の起源についてもっと調査しようとしていた。急な研究探査だったので、オルクシー博士を収容担当として残していった。彼は有能でこれまでにも能力を示してきた。もう少し熱心であれば良いのだけど。これらは全て書面で確認できることだろう。疑わしく考えるのはよした方が…

質問者: 念のためです博士。さて、SCP-096が興奮状態の間、すべての攻撃に対して耐性があると知っていて、なぜ緊急対応部隊に狙撃を命じたのですか?

ダン博士: 当然だろう?SCP-096の移動を遅らせて、機動部隊-タウ-1のために時間稼ぎできる可能性があれば、何でも試す必要があった。試したところでER-Aを危険に晒す訳でもないし、彼らは振り切られそうだった。率直に言えば、ER-Aが状況に影響を与えるために他にできる事などほとんどなかった。

質問者: なるほど。つぎは、これについて説明してくれますか?

[質問者はテーブルのゴーグルを指さす]

ダン博士: わかった。これはプロジェクトSCRAMBLE、オルクシー博士と私がSCP-096対策として設計して、ER-Aと機動部隊-タウ-1に支給されたアイピースだ。それには映像を絶えず分析して、SCP-096の顔の特徴を検出する小型マイクロプロセッサーを搭載してある。顔認識ソフトが瞬時に検出を行い、光が人間の目に到達する前に視認できないように映像にスクランブルを掛けることができる。本当にとても画期的な開発だ。

質問者: そして高価。

ダン博士: とても高価だ。機能しなかったというのは本当に酷い話だ。

< 記録終了>


ダン博士はscp-096脱走時には、scp-096の起源について調査中だったようだ。
scp-096の調査について現地調査のダン博士と収容担当のオルクシー博士で分担していた。
さらに、オルクシー博士と共同でscp-096の顔を瞬時に編集してくれるゴーグルを開発していたようだが、脱走時には上手く機能してくれなかったようだ。

この間にもscp-096は市街地を進み多数の死者を出していた。
それも市民からしたら高速で動くシャイガイが「網膜に一瞬写った」レベルの話である。
scp-096の顔だと認識する必要は無い。
結果的にscp-096が「なんか通ったかな?」というレベルでアウトなのだ。

財団はこいつの特性を誤って認識していた。


さらには報道機関もいたらしいが財団の機動隊が止めたみたいだ。
…もしも世界中にシャイガイの顔が報道されていたらと思うと…


さぁ、ここから敢えて記録を最後まで飛ばしてみることとする。


< 記録開始>

オルクシー博士: これで終了ですか?

質問者: 最後に1つ質問、と言うよりもそのままの意見を。おかしな話ですが、研究サイト██には休憩室がありませんよね。コーヒーもです。

[回答者は沈黙したまま。]

質問者: もうそろそろお話しいただけると良いのですが。

[残りのビデオインタビュー記録096-1-Aは編集]

< 記録終了>


さて、もうひとつ


O5聴聞会の音声記録

O5-1: 君の証言、入手した映像記録、およびオルクシー博士の自白を精査した結果、SCP-096の重大な脱走事案への関与が認められたため、O5は満場一致で君の終了処分を決定した。

ダン博士: "より大きな利益の為に"という言葉の意味を、あなた方は理解していると思っていたのですが。

O5-1: 私を怒らせるなよ博士。インシデントの規模と潜在的な危険を考慮し、O5は君が提出したSCP-096の処分要請を承認する。SCP-096を理解している職員が不足しているため、徹底した警備と私の監督の下で君に処分を委任する。君自身の終了はそれ以降に予定されている。

< 記録終了>



もう理解したかな?




















オルクシー博士とダン博士はわざとこの収容違反を発生させたのだ








それはなぜか?
この2人は誰よりも早くこいつの特性を正しく認識していた。

それが分かるのは敢えて飛ばしたインタビューログにある。(要点のみを引用する)

< 記録開始>

ビデオインタビュー記録 096-1-C

ジャック・ウィルフォード少佐 (タウ-1の現部隊長): 俺は部隊とともにSCP-096-1の家を調査していた。あの可哀そうな野郎はセミプロ登山家で、█████████を旅行をしていた。どうも奴が景色を撮影したときに、背景にSCP-096が写ってしまったらしい。

[ウィルフォードは強調するために指を4本立てる]

Wilford: 4ピクセルだ。たった4ピクセルだぞ。被害者が何を見たか理解していたとは思えん。おそらく、ある日写真を眺めていたら色の抜けた部分が雪原にあると気づいただけだろう。それで普通どおり生活していた。


ダン博士: この事案において最も不安な要因がこれだ。SCP-096-1がいつ登山をしたか知っているか? 199█年だ。彼が写真でSCP-096を見るまで██年もあった。SCP-096の顔を見たと脳が反応する必要はない、つまり文字通り世界中に隠れた時限爆弾があるということだ。どれほどの写真がSCP-096を写していて、現時点で気づかれていないだけで、注意深い視線を待っているんだ? だから以前言った通り、私はこの事態を終わらせたい。すぐにでも。

< 記録終了>


4ピクセルのscp-096が写っている写真をただ見ても何も起きない。
しかし、たった4ピクセルのscp-096の黒点を「この点はなんだ?」と認識しただけで、scp-096は殺しにかかる。
たとえそれが撮影から少なくとも10年以上経過していてもだ。


それが何を意味するか。
















既に砂粒程の大きさで写真や映像に残っているscp-096がこの世に出回っている可能性がある。


その点を認識しなければいい、しかし、何年越しであろうとも気づいてしまったらヤツはやってくる。
これを果たして収容できていると言えるのだろうか?


ダン博士とオルクシー博士はこの事実に気づいた、よってscp-096を終了しようとした。(終了というのはいわゆる破壊と同じ意味だと思っていただいて構わない。)


しかし、財団の理念は「確保・収容・保護
そう簡単に終了処分など下されないだろう、それこそクソトカゲ並に凶悪でない限り。

だからこそ、2人はscp-096を収容違反させる形でこの事実を財団に突きつけたのだ。


結果、終了処分を引き出すことには成功した。
ダン博士の命と引き換えにだ。












さて、問題の4ピクセルの写真だが、君たちは既に見ているよ。


もちろん、最初の写真の黄色い丸の中だ。


















まぁ、財団によって該当部分には穴があるから、scp-096は来ないけどね。



CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-096 - The "Shy Guy"
by Dr Dan
http://www.scp-wiki.net/scp-096
http://ja.scp-wiki.net/scp-096

Document #096 -1
by Dr Dan
http://www.scp-wiki.net/document-096-1
http://ja.scp-wiki.net/document-096-1

Incident 096-1-A
by Dr Dan
http://www.scp-wiki.net/incident-096-1-a
http://ja.scp-wiki.net/incident-096-1-a