scp紹介第22回 scp-1357

こんにちは
リョータ研究員です。

流れ的には今回は怖いscpなんですが、怖いと言うよりもただ胸糞なscpかな?

まぁいきましょう。



scp-1357【子どものための遊園地】

オブジェクトクラス:Safe


特別収容プロトコル:基本的に周囲を財団関係者で監視し、オブジェクトに近づいた人を拘束し記憶処理してね。
という感じである。

またこのオブジェクトの性質上Dクラスでの実験ができない。
もしも被験者を用意できても実験は最低限にとなっている。


説明:名前の通り遊園地である。
具体的にはポーランドにある約4平方キロメートルの遊園地だ。
入園した後はアトラクションに乗るにしろグッズを買うにしろ食事をするにしろお金がかからない。なんというお財布に優しい遊園地なんだ!
なお、アトラクションは異常性を発揮させた中で年齢が低い人の好みによって変わるらしい。

この遊園地には東西南北に1つずつゲートがある。しかし、誰もがこの遊園地に入れるわけでは無い。
特定の条件を満たした人でないと入れないのだ。

毎月13日に届くscp-1357-B(以下チケット)を持っていなければscp-1357-A(以下スタッフ)に入園をお断りされてしまうのだ。
ちなみにこのスタッフは人種や年齢・性別などは様々だが、入園した子どもの経験に基づいたキャラの衣装になる。
ま、要は子供の好きな漫画やアニメのコスプレってことよ。


さて、では入園できる条件とはなんなのか?


条件はこちら
・最少2人、お互い恋愛関係にある人物が存在する。
・最少1人、18歳未満の人物で、前述の人物を保護者としている人物が存在する。
・全員がSCP-1357-B(チケット)の現物を所持している。

これを満たしたものが無事に遊園地に入園できる。












ま、入園しない方がいいんだけど。








さて、発見された経緯についてだが、ポーランドのとある報道にて「一瞬で姿を変える遊園地」というものがあったので財団に見つかった。

もちろん財団はただ収容するだけでなく実験を行うのだが、条件が条件なだけに子持ちのエージェントの協力を得て実験を行った。














この後にとんでもない悲劇が起こるなど露知らず…









さて、実験の内容だが。
入園前に予め音声装置を渡しておき、入園してからはエージェントFredricksがインタビューを行うというものであった。

その記録を載せておこう。



『取材対象: SCP-1357-A-4878、子供向けテレビ番組"ブルーズ・クルーズ"の登場人物"スティーブ"の衣装を着用。

取材者: エージェントFredricks

前文: エージェントFredricksはこの取材のため、スタッフの1個体を他から引き離す。

<取材ログここから>

Fredricks: この場所について何か教えてくれないか?

SCP-1357-A-4878: わかりました! このPlaylandはあなたの家族全員の楽しみに応える場所です! 私たちはご家族の要望にいつもお答えし、皆様にご満足していただくためにために常にベストを尽くします!

Fredricks: お前たちを作ったのは誰だ?

SCP-1357-A-4878: Fredricksさん、そんな些細なこと、大事なことではありません![注釈:Fredricks一家全員、この発言以前にどのスタッフに対しても苗字を明かしていない]

Fredricks: 大事なことなんだ。ただ質問に答えてくれさえすればいい。[娘のほうを向いて]いまはダメだよ、仕事中だからね。

SCP-1357-A-4878: 仕事? なぜです、Fredricksさん!仕事なんて馬鹿げたこと、心配しなくてもいいでしょう!楽しみましょうよ!見てください、娘さんは遊んでほしがっていますよ!

Fredricks: [娘のほうを向いて]Hailey、後で行くからね、約束するよ。大丈夫、スティーブに意地悪なんてしないから。お母さんと行っておいで?[スタッフへ向かって]悪いがどうしてもこうするしかないんだ。お前のような奴がいるから私の仕事があるんだよ。

SCP-1357-A-4878: [ため息をついて]申し訳ありませんが、これ以上は他のお客様のお楽しみを台無しにすることになります。どうかお止めください。

Fredricks: 頼むから質問に答えてくれよ。この遊園地はいつから出来たんだ?

SCP-1357-A-4878: こんな事したくありませんでした。しかしあなたの娘さんはひどく心配しております。

<取材ログここまで>

後文: エージェントFredricksは3体のスタッフによって強制的にSCP-1357から追放。エージェントFredricksの妻Adelaide Fredrickは娘に激しく反対されながらも遊園地からの退去を試みた。その際、数体のスタッフが2人を分断し、Fredricksの妻の再進入と、Fredricksの娘の遊園地からの奪還を阻止。またこの時、ある個体が"心配するな、お嬢さん。帰りたくないなら帰る必要はないんだ!ご両親も君が帰りたくなったらそのうち来てくれるさ!"と発言。』



見ての通り全くインタビューに答えようとしない。

それどころか迷惑だからとFredricksさんを遊園地の外にポイーしてしまった。
奥さんも嫌がる娘を連れて外に出ようとするがなんとスタッフが2人を分断。
両親は再び中に入ることが叶わなくなってしまった。

事態を重く見た財団は直ちに機動部隊に救出作戦を指示。

しかし、遊園地側の圧倒的なスタッフの物量の前に娘Haileyの救出は失敗に終わった。




ここからは事前に持たせた音声装置にHaileyの声が入っているので、ログを追っていこう。


『Hailey: ねえ、どうして女の子のスティーブがいるの?

スタッフ: 男の子のスティーブはみんな君のために遊園地の準備をしてて忙しいからよ!

注釈: これは、失敗した機動部隊の救出作戦の最中に受信された。』



一体なんの準備なんですかねぇ




『Hailey: これすごく、すごく、すっご~くたのしい! ずっとず~っとここにいたいな、スティーブ!

スタッフ: はっはっは、僕も君と一緒にいられて楽しいよ、Hailey! 来てくれて本当に嬉しい!』



普通に楽しんでる。
まぁまだ子供だしね。




『スタッフ: これなんだと思う、Hailey!

Hailey: なにこれ、なにこれ?!

スタッフ: "Heeere comes the mail, it's just a snail, it makes me wanna wag my tail, when it comes I wanna wail, MAAAIIIL!"

Hailey: 違う違う、そんな歌じゃないよ。"it never fails,"だよ、"it's just a snail!"じゃないよ。

スタッフ: ははは、冗談だよ、忘れてただけさ!お母さんとお父さんから君に手紙だよ。やったね!4

Hailey: ありがとう!でもスティーブ、わたし字が読めないの。なんて書いてあるか教えて?

スタッフ: いいとも!"Haileyへ、楽しんでくれているかな?私たちも迎えにいきたいんだけど、仕事がいっぱいあって忙しいんだ。家に帰りたくなったら手紙を送ってね。すぐに迎えに行くからね。追伸:お父さんがちゃんと歯を磨けって言ってたぞ!"だってさ!』



もちろん、そんな手紙送ってない。




『スタッフ: …それで、ここが一番大きなベッドルームだよ。君はここを自由に使っていいんだよ、Hailey! あそこにあるシンキングチェア、君のために作ったんだ! 気に入ってもらえるとうれしいな!ベッドも大きくて、毎晩心地よく眠れるはずだよ!

Hailey: [歓声をあげて]わあ、すごい! ありがとうスティーブ!』



両親は心配で夜も眠れないだろうけどな




ここからは何回かのやり取りが続く、少し長いよ。

『Hailey: どうしてお母さんもお父さんも来ないの? お手紙がんばって書いたのに…

スタッフ: それはきっと、2人とも忙しいんだよ。きっと手紙を読んだらすぐにきてくれるさ。』

『Hailey: スティーブ、いつになったらお母さんとお父さんは戻ってきてくれるの?

スタッフ: どうしたんだい? もう楽しくなくなっちゃったのかい?

Hailey: もちろん楽しいわ! 私はただいつ家に帰らなくちゃいけないのか知りたいだけなの!

スタッフ: [笑って]ああ、Hailey、君はずっとここにいてもいいんだよ!

Hailey: やったあ!ありがとうスティーブ!』

『Hailey: 足が痛いし、もうずーっと待ってるよ。本当に今日迎えに来るって手紙に書いてたの?

スタッフ: うーん、もう一回見てみようかな…”お手紙読んだよ。一日休みを取ったから、土曜日に正面入り口まで迎えに来るよ。”うん、こう書いてあるな。

Hailey: ふん。 中に入ってもいいかなあ? Slushieを飲みたくなっちゃった。

スタッフ: いいともHailey。中に戻ったら、もう一枚手紙を書いて、来てくれなかったわけを聞いてみようじゃないか。』

『スタッフ: ”昨日だって言ってたかな?ごめんよ、すっかり忘れてた。私たちは大人だから忙しくて迎えにいくのをすっかり忘れてた。本当にごめんよ。 来月にまた休みを取って迎えに行くからね!愛してるよ。 お父さんとお母さんより。”

Hailey: [鼻をすする音]』

『Hailey: ねえスティーブ、お母さんやお父さんって自分の子供を嫌いになっちゃったりするの?

スタッフ: うん、そういうことも、あるんじゃないかな。どうして?

Hailey: お母さんもお父さんも、私のこと嫌いになっちゃったんだと思うの。[すすり泣く声]

スタッフ: おや、おや、おや、大丈夫だよ、心配しないで!僕たちは君のこと大好きだよ!君のご両親が君を嫌いになっても!

Hailey: [鼻をすする音]ずうっと?

スタッフ: ずっとさ。

Hailey: 約束してくれる?

スタッフ: 約束するよ。 僕たちはずっと君のためにここにいるよ。ご両親がいなくても。』

『Hailey: ねえスティーブ、お母さんとお父さんがほしい。

スタッフ: Hailey、そんな意地悪な人たちのことを考えるのはよそうよ! ほら、フェンネルケーキでも食べて、またメリーゴーランドにでも乗ろうよ!

Hailey: やだやだやだ!お父さんとお母さんがほしい!

スタッフ: [笑って]あいつらなんか面白くないよ。 ほら、私たちは君のためにいるんだよ! 私たちは家族だよ! ね、いこうよ!

Hailey: [何かを落とす音]もう遊びたくないよ、スティーブ!

スタッフ: どうぞ、おばかさん! ほら、あそこに新しい遊び場が君のために出来たよ!』



もちろんだが、両親は手紙なんて全く送ってない。完全に自作自演である。

Haileyも子供だ、それも字が読めないから読んでもらうほどに幼い子供だ、最初は楽しくてもいずれ両親に会いたくなるのは当然のことだろう。
終盤では遊びなんかどうでも良くなって不満しか漏らしてない。

てか、スタッフ側も最初は宥めてるのについにおバカさん言うとるし。




そして、事件は起こった。




『Hailey: お父さんとお母さんのところに連れてってくれるの?

スタッフ: どうして? もう楽しくなくなっちゃったのかい?

Hailey: お母さんとお父さんがいなくてずっと、ずっと寂しいの。

スタッフ:でもほら、僕たちは君の家族だよ!

Hailey: 違うよ! みんなは私の友だちだよ。 欲しいのは家族なの。

スタッフ: それじゃ、もう僕たちのこと嫌いになっちゃったのかい?

Hailey: もちろん好きだよ! でも家族のほうがもっと好きなの。

[長い沈黙]

スタッフ: [ため息]うーん、まあこういうこともあるよね。 おいで、君の家族に会わせてあげるよ。

[5分ほど、足音が続く]

Hailey: スティーブ? スティーブ、道に迷っちゃったんじゃないの?

スタッフ: 大丈夫だよ、大丈夫。

Hailey: 何あれ? なんだか怖いよ…

スタッフ: 家族に会いたい、そうだねHailey? さあおいで! これに乗って君の家族のところまで行けるよ!

Hailey: ほんとに、ほんとに約束してくれる?

スタッフ: もちろんだよHailey! 君にウソなんてつかないよ!

Hailey: うーん…分かった。

[摩擦音、ビープ音、回転音などがする]

スタッフ: また会おう、お嬢ちゃん。

Hailey: [悲鳴]

注釈: この時点で音声送信装置は故障した。』



明らかにHaileyに何かあった。


ちなみにここまでの音声ログは全てFredricksさんが聞いているはずである。

そして、このログでFredricksさんはブチ切れた。


「事件報告-1357-Zeta: 前述の事件後、エージェントFredricksが許可なくSCP-1357に戻り、侵入した後、罵声を上げながら約30体のスタッフを殺害しました。Fredricksは、正面入口にHaileyと思われる人物を目撃するとすぐに発砲をやめました。その人物はエージェントFredricksに近づき、抱きしめた後”言ったでしょ、まだ帰りたくないの”と言いました。その直後、2体のスタッフがエージェントに近づき、頭を殴りつけて気絶させました。エージェントFredricksには、財団から職務に反する振る舞いやオブジェクトに危害を加えた事に関して警告が与えられました。」


自分の娘に何かあって動かない父親なんかいない。
彼は無許可でscpに侵入し、スタッフを30体殺害。

相当なキレ具合である(それもそう)

しかし、Haileyと思われる人物を見つけてがまだ帰りたくないと言われた後にスタッフに強制退去させられてしまう。

あんなに音声ログで会いたいと言っていたHaileyがこんなにも簡単に手のひらを返してしまった。
間違いなくscpの影響だろう。

ちなみにFredricksさんは無許可で動いたが、警告に留まった。
(普通であればオブジェクトの破壊は財団の理念に反するので結構な罰をくらうが、今回は実の娘が囚われてる・実験は支持されてるから実質財団のせいで起きた事件なので警告に終わったのだろう。)



ちなみに次は正式に実験として入園した。
その結果がこれである。

「事件報告-1357-Eta: エージェントFredricksには2005年10月16日に行われるSCP-1357への実験の監督許可が与えられました。実験の最中、エージェントFredricksは予備のチケットを使って実験の被験者とは別に区域内に進入しました。その後Haileyに似た人物を探しだし、会話を試みました。その人物は会話に応えず、エージェントFredricksは約15分間意思疎通を試みた後、諦めて退場しました。」





Hailey完全反抗期

お父さんを完全無視するようになってしまった。
そもそもHaileyの自我はちゃんと残ってるのかな…これ…




次が最後の記録である。
これは送られてきたパンフレットに記載されている電話番号に電話した際の音声記録だ。

『Hailey: こんにちは、こちらPlayland、家族に最高の楽しみを提供します!ご用件をどうぞ?

男性の声: 娘を返してくれ。

Hailey: 申し訳ございません。あなたの娘さんは私たちと一緒に居たがっています。でもいつでも来てください。お知らせしていただければ、2枚のチケットをお送りします!それでも、娘さんはここに居たがると思いますが。』



…明らかにHaileyがスタッフ側になってしまっている。




これでこのscpの特性が完全に分かったね。









このscpは子供を攫うだけではない、攫った子供を遊園地のスタッフにしてしまうのだ。





財団の機動部隊がHailey救出作戦で物量に負けたように、この遊園地には相当な数のスタッフがいる。

つまり、それだけの子供が過去に攫われてしまったのだろう。

一体どれほどの親が、我が子を失った悲しみに涙したのだろうか。




さらには、Fredricksさんは娘に何かされた怒りでスタッフを30人ほど殺害してしまった。

つまり、自分と同じ境遇にある親の子供を自ら殺してしまったのだ。

悪気がなかったとはいえ、何とも言えない気持ちになってしまう。








CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1357 - The Children's Park
by azzleflux
http://www.scp-wiki.net/scp-1357
http://ja.scp-wiki.net/scp-1357