scp紹介第28回 scp-548-JP

みなさんこんにちは
前回に続いてNeutralizedシリーズです。

scp-548-JP【歌う雨音】
オブジェクトクラス:Neutralized

このオブジェクトは一見なんの変哲もないビニール傘である。

こいつは傘をさしてそこに雨の雫が当たった時に異常性を発揮する。(雨以外の液体ではダメ)

なんと、雨が当たるとそこからピアノの音がするのだ。
この時の旋律はショパンの「練習曲作品10第3番ホ長調」と一致する。この曲は日本では「別れの歌」として親しまれている。(ちなみに私は分からない)


ちなみにこの傘、演奏の度に技術が向上することが判明している。
口頭でリクエストをすることができるのだが、難易度が高い曲だとミスが出る。
しかし、演奏を重ねるにつれてそのミスが減っていくことが確認されている。
逆に長い間雨が降らずに演奏が行われていないとだんだんと技術が下がっていくことも確認されている。




さらにさらに、この傘は演奏の合間に拍手などで喝采を浴びせると技術の向上が3~5倍に上がるらしい。逆に罵声を浴びせると音が乱雑になったりリクエストを無視したりする。


…もしかして自我ある?

さて、この傘に対する実験は107回行われている。
一部が報告書に載っているが、それは興味のある人は覗いて見て欲しい。

今回1番大事なのは最後の107回目の実験だ。


2000年代のとある冬、日本を襲った大寒波の影響でなんと3ヶ月間も雨が降らない時期が続いてしまった。
それにより久しぶりの雨ではまともに音が出せないほどこの傘は衰えてしまっていた。

このままだと異常性が消失してしまうという懸念から、塚原博士は実に200人以上の職員を収集。
次の実験を行った。

実験記録548-107
担当者: 塚原博士
内容: 約███名の財団職員が聴取する中でSCP-548-JPへ向け、ビゼーの「カルメン前奏曲」、リストの「パガニーニによる大練習曲第3番 嬰ト短調」、モーツァルトの「ピアノソナタ第11番第3楽章」をリクエストし、SCP-548-JP-Aが終了する度に拍手と賛辞を送る。

結果: 「ピアノソナタ第11番第3楽章」の演奏を経て、SCP-548-JP-Aの演奏技術は極めて高まったと認められた。音色は終始「楽しそう」「嬉しそう」なものだった。


200人もの喝采を受けて、その技術は記録上最高潮に、演奏も楽しそうだったと周りは感じていた。












しかし、問題はその後に起きた。





傘は次のリクエストに応えず10分間沈黙。

その後「別れの歌」を演奏し始めた。

ここまでの実験では周囲の人間は普段の演奏を聞いて「嬉しそう・楽しそう」と感じ取るのだが、最後は違った。


「満足そう」であった。

演奏終了後、傘は突然「巨大な何かが衝突した」ように弾け飛んでボロボロになってしまった。
骨組みは折れ、傘布にはタイヤ痕が現れたという。


傘は即座に回収し修復されたが、その後異常性は現れずNeutralizedに認定された。

この傘はとある事故現場で発見された。
その事故現場が雨だったために異常性が発現されて回収に至ったのだ。

この傘は事故当時10歳の少女の持ち物であった。
財団の調べでピアノのコンクールに向かう道中で事故にあった事と、「別れの歌」が彼女の課題曲であったことが分かっている。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-548-JP - 歌う雨音
by 29mo
http://ja.scp-wiki.net/scp-548-jp