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「ハイパー起業ラジオ:ネットワーク効果編」のまとめ⑧ ネットワーク効果の倒し方

フェスティナ・レンテ!Ryotaroです!
今回は「ハイパー起業ラジオ:ネットワーク効果編」から、「ネットワーク効果の倒し方」についてをまとめていきたいと思います!

Podcastだと大体このあたり↓の内容をメインに扱います!

それではいきます!

ネットワーク効果の倒し方:3選

この「ハイパー起業ラジオ:ネットワーク効果編」をまとめてきたシリーズでは、「ネットワーク効果最強!戦わずして勝つにはネットワーク効果が必要だ!」という話をしてきましたし、既存の巨大な企業はすべからくネットワーク効果を回しているよ、だから強いんだよ、ということをケーススタディで確認してきました。

となると、
・我々は、巨大な企業が制圧している今の社会の中で、手も足も出せず、巨大企業に課金し続ける人生を過ごしていかなればならないのか
・我々は、巨大な企業に立ち向かうことはできないのか
・我々は、巨大な企業を倒すことはもうできないのか

こんな疑問が浮かびます。

が、ご安心ください。ネットワーク効果の倒し方、あります。というのが今回のお話です。

その方法は3つ

①アトミックネットワーク返し
②①×Tool to Networkから始める
③「ネットワーク効果の上限」を攻める

以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。

①アトミックネットワーク返し

「アトミックネットワーク返し」というのは、アトミックネットワークで始まったものを、新たなるアトミックワークで攻め入る、という方法のことです。

というのも、アトミックネットワークで始まったものは、アトミックネットワークで書き換えられる可能性があるのです。

このことは、SNSの歴史を見てみるとよくわかります。

今でこそ全世界の人が使うこととなった「Facebook」
これは初めは「ハーバード大学の一部の学生たち」という小さな小さな(アトミックな)ネットワークから始まったサービスでした。

Facebookはアトミックネットワークからサービスを回し始め、段々とその規模を大きくしていって、終いには世界中に広まっていったのです。

こうして「SNSといえばFacebook」というところまで成長を遂げたFacebookですが、その牙城を崩したのがinstagramやTikTokです。

これらのサービスは「若者向けのSNS」という形で人気を獲得していきました。

これが「アトミックネットワーク返し」です。

すでに「世界中の多くのユーザー」が使っているFacebookを差し置いて、「若者」というSNSをまだ使ったことがない世代の人をターゲットにし、そこから全世代が利用するサービスとなった。これがinstagramやTikTokです。

この「SNSをまだ使ったことがない世代」というのはネットワーク外部性(仲間外れになりたくない)がSNSにおいては働いていない世代です。

ということは、ネットワーク効果がギチギチに効いている業界において「新しい世代」というのは、まだネットワーク効果の波が届いていないところにいるユーザーというわけです。

だからこそ「若者」は、大人が使っている既存のサービスを使うよりも、自分たち世代だけが楽しめるサービスを使おうと思います。

新しい世代(若者世代)からの人気を獲得すると、その若者世代の親たちとか、若者とコンタクトを取りたい上の世代というのが入ってくることとなります。そうすると、若者向けだったサービスが幅広い世代が使うサービスとなるわけです。

このように、「若者」という新しい世代にフォーカスをすることで、ネットワーク効果をひっくり返すことが可能になるわけです。

このように、アトミックネットワークを起点として「すべてをひっくり返す」のがアトミックネットワーク返しのひとつのパターン。

もうひとつは、すべてをひっくり返しにはいかず、「一部の人に選ばれればOK」とするパターンです。

ネットワーク効果の一流派「ネットワーク外部性」の弱点は、「仲間外れになりたくない」という気持ちを煽りすぎて「この人とは仲間になりたくない」という人とまで繋がりができてしまうことです。

結果として生まれるのが「使い分け」です。

SNSなら、Facebookやinstagram、Xといったプラットフォームは「広く多くの人と繋がる」ということに活用し、「一部の本当に仲の良い人たちと繋がるため」に他のSNSを使うという使い分けが生まれます。

「BeReal」というSNSは、本当の仲間とのやり取りを楽しめるため、若い世代の人に特に人気のようです。

かつてはBeRealも、「すべてをひっくり返す」方向性でプロダクトデザインがされていたようですが、最近のアップデートを見てみると、「一部の人に選ばれればOK」という方に舵を切っているように見えます。

ネットワーク効果を「アトミックネットワーク返し」する場合には「すべてをひっくり返す」のか「一部の人に選ばれればOKとする」のか、方向性を決めておいた方がよいのです。

②「アトミックネットワーク返し」×「Tool to Network」

2つめの方法は「アトミックネットワーク返し」に「Tool to Network」を掛け算する方法です。

Tool to Networkとは「ツールからネットワーク効果を回していく」という方法のことです。

この「Tool to Network」には
・Create + Share with others
・Organize + Collaborate with others
・System of record + Keep up date with others
・Look up + Contribute with others
の4種類があります。(横文字やめて!!)

Create + Share with othersは、「クリエイトしたもの(画像、動画、絵など)を他人とシェアしてネットワークに変えていく」という方法のことです。これの代表例がPixivです。


Organize + Collaborate with othersは、「自分の整理したものを、他の人とも共有することでネットワークに変えていく」という方法です。これの代表例がAsanaです。


System of record + Keep up date with othersは「一箇所で保存管理しておかないと面倒くさいツールをみんなでアップデートできるようにすることでネットワークに変えていく」という方法です。これの代表例がGitHubです。


Look up + Contribute with othersは「自分が振り返るために記録していたものが、他の人にとって参考になるのであれば、それを他の人にも共有することでネットワークに変えていく」方法のことです。これの代表例が食べログです。


例えば、instagramは初めはまだデバイスで画像処理が難しかったころ、画像におしゃれなフィルターを施せるツールとしてサービスが始まりました。

instagram初期の頃の15種類のフィルター(wikipediaより)

Twitterが出はじめた頃は、タイムラインに画像を投稿することができなかったため、こういったフィルター加工した画像をinstagramに保存しておいて、それを見てもらうという形がとられていました。

そして、だんだんと画像の点数が増えていくに従って、画像を閲覧するユーザーも増えていきました。

そこで、instagramはより身近な人に画像を見てもらいやすくなるような機能やハッシュタグの横に「旅行」とか「グルメ」とかをつけることで同じ趣味の人を持つ人に画像を見てもらいやすくする機能をつけたりしました。

こうして、instagramは単なる画像保存サービスから画像を投稿&閲覧できるSNSサービスへと変容を遂げました。

これが、Tool to Network。このinstagramの例は、Create + Share with othersの例と言えるでしょう。

このようにinstagramは、はじめは若者の認知を獲得し(アトミックネットワーク)そこに、掛け算的にツール機能を組み合わせたことでネットワーク効果を高め、ついにはSNSの総本山のFacebook(現META)に買収されるまでに成長した、というわけです。

③「ネットワーク効果の上限」を攻める

「ハイパー起業ラジオ:ネットワーク効果編のまとめ」シリーズの中で、ネットワーク効果を回すためには「ティッピングポイント」を超えるタイミングを狙う必要がある、という話を書きました。

ティッピングポイントとは、水の沸点のように、あるものが劇的に状態を変える臨界点のことを指します。

例えば、あなたが「すぐ呼べて、すぐ乗れる」タクシーの配車サービスをスタートさせるとしても、まずはみんながタクシーを「すぐ呼べる」ためのデバイス(スマホなど)が広く普及しなければこのサービスはうまくいきません。

また、スマホをみんなが持つようになったからといって、「すぐ乗れる」ために必要な量分のタクシー車を調達することも必要になります。普通に考えて、今から全国津々浦々に自社の車と社員を配備するのは現実的ではないので、「自社サービスと提携してくれる人」を増やす方が早いはずです。

そのために、全国津々浦々に営業をかけて、「すぐ呼べて、すぐ乗れる」配車サービス網を引く努力をする必要があるのです。

こうして、膨大な時間と労力とお金、あとは技術的なイノベーションなどによりスマホの普及率やタクシー数がティッピングポイントを超えてはじめて、「すぐ呼べて、すぐ乗れる」配車サービスを回すことができます。

では仮に、そんな配車サービスが全国に「既に」普及されていたらどうでしょうか。どうやらその配車サービスは「呼んだら大体3分から10分くらいで車が来てくれる」サービスのようです。

ただ、なんとしてでもあなたは、あなたの考えたタクシーの配車サービスを浸透させたい。

このとき、

「相手の車が3-10分で来るんだったら、自社は呼んでから3分で確実に来てくれるサービスを展開すれば勝てる!」
と思ってしまうと、これはあまりよろしくないのですね。

というのも、タクシーを呼んでから車が来るまでの時間が「7分が5分に短縮された」ときの価値と「5分が3分に短縮された」ときの価値とでは、どちらも2分の短縮という数値は同じでも、「7分→5分」の方が「5分→3分」に比べて価値が高いのです。

これが、「ネットワーク効果の上限」です。

つまり、ネットワーク効果が回りまくって、サービスの質が向上し続けたとしても、ユーザーが価値を感じるポイントには上限があるということです。

であるならば、タクシーの配車サービスの打ち手としては「タクシー利用率が高いビジネス街に限定して、確実に5分で到着する配車状況を作る」とした方がよいです。

そのために、そこに一極集中で資源(お金や人)を投じて、そこを取り切る。そして、だんだんとネットワークを広げていって最終的にはすべてをひっくり返す、とした方がよいかもしれません。

こうした戦略を実際にとったのが「PayPay」です。PayPayは「LINE」が決済サービスに参入した際、ユーザーが最も頻繁に利用するコンビニやポイントが多くつく家電量販店を狙って営業をかけまくりました。

結果、PayPayはコミュニケーションツールとしてネットワーク外部性をバチバチに回して覇権を取ったLINEに比べてユーザー数が少なかったにも関わらず、「決済といえばPayPay」と言われるほどに、業界の覇権を握ることができました。

LINE Payが広くユーザーに間口を開いた傍らで、「言うてもユーザーが決済サービスを使うのってコンビニとか家電量販店だよね」とネットワーク効果の上限を突いたことで、PayPayはLINEに勝つことができたのです。

アイデアは既存のもの同士の組み合わせ

これまで見てきたように、ネットワーク効果を倒すためには「アトミックネットワーク返し」「Tool to Network」「ネットワーク効果の上限を攻める」といったことを念頭に置いて事業アイデアを考えていくことが必要です。

必要なのですが、困ったことにアイデアを考えようとしても「アイデアが思いつかない」という問題にぶち当たってしまうものです。

そんなときに大事にしたいのは「アイデアは既存のもの同士の組み合わせによって生まれる」という考え方です。

これは、アイデア創出を仕事にしている人で読んでない人はいないくらいの名著『アイデアのつくり方』に書かれてあることです。

この本は、「この本をまだ読んでいない人は、いますぐにでも読むべき」本なので、絶対にいますぐ読んでほしい本です。

今後、新規事業を考えるときにはこの本に書かれてあることを応用した、以下の公式を活用していただきたいです。その公式とは

定石×イノベーション=新規事業アイデア

です。

「定石」には、これまでこのシリーズで語ってきた
・相互ネットワーク効果
・規模の経済
・ブランド

などの「勝つための定石」が入ります。

「イノベーション」には
・AI
・VR
・Web3

などが入ります。

では最後に、「相互ネットワーク効果×AI」で生まれる新しい事業のアイデアを考えてみましょう。

ここでは、今とても話題となっている「画像生成AI」を使った新しい事業を考えてみます。

それは、Pixivのような画像投稿&閲覧ができるサービスです。それになぞらえて、「AIで作った画像を投稿できるサイト」を作るのはどうでしょうか。

残念ながらこのサービスは他のサービスと差別化ができず、一躍脚光を浴びるサービスとなることはできないでしょう。

「なにを!?しっかりとネットワーク効果×AIで考えたじゃないか!誰でも気軽にAIで作った画像を投稿できるサービスを作れば、そこに描く人が集まって、それを見たい人が集まる。するとまた描く人が集まるという相互ネットワーク効果が生み出されるじゃないか!」

と、考える方もいるかな、と思うのですが、残念ながらこの主張は誤りです。この主張には「相互ネットワーク効果を回すには、ハードサイド(=集めにくいサイド)から集める必要がある、という観点が抜け落ちています。

かつての、画像投稿サービスでは、見る人よりも描く人の方が集めにくかったので、描く人がハードサイドだったのですが、生成AIが普及したことにより、描く人はハードサイドではなくなってしまいました。

みんな自分が生成した絵を見てほしい。結果、一億総クリエイター社会となり、今や絵を「見る人」の方が集めるのが大変になりました。

では、「見る人をたくさん集めればいいんだね!そしたら見てくれる人のために配るお金をたくさん用意して、たくさんの見る人を集めればいいんだ!」と思うかもしれませんが、ここで大事になってくるのが「セレクション価値」です。

セレクション価値についてはケーススタディのAmazon編で書きました。

セレクション価値とは、「単なる品数の多さ」ではなくて、「真にユーザーが比較検討できるもの」でした。

例えば、ユーザーが環境指向が高く、「環境や素肌にやさしい石鹸がほしい」と思っているときに化学成分がたっぷり使われた石鹸が10点あって、環境にやさしい石鹸が1点しかなかったら、セレクション価値は高くはありません。

このユーザーのセレクション価値を高めるなら、「環境にやさしくて、肌にもやさしい」A社、B社、C社の石鹸を並べるべきです。その中からユーザーが、他にも付加価値を感じる石鹸(例えば送られるまでに時間はかかるけど、完全手作りのもの)を選ぶことで、ユーザーの顧客体験が高まるのです。

話を新事業のアイデア作りに戻すと、生成AIを見てくれる人をお金の力でたくさん集めたとて、それは単に「品数」が多いだけなので書き手にとってのセレクション価値は高まりません。

では、どうするか、書き手が「この方々になら見てもらいたい」と思える人たちを集めるのです。それなはAIでは代用できない「人脈」とか「経歴」とかを使って「評論家を100人集める」とかの打ち手を取るといいかもしれません。

そうすることで、あそこのサイトに画像を投稿すれば、自分の絵に評価がついて、万が一高得点を取ろうものなら一躍有名になれるかも!という心理が働くことになります。

次に大事になるのは、「私も評論家の一人になりたい!」と思わせる仕組みのところです。ここさえ思いつけば、見る人が描く人を呼び、描く人が見る人を呼ぶという相互ネットワーク効果が完成されることになります。

この考え方で大事だったのは、イノベーションによって「希少性」がどこに移動したかを考えることです。

生成AI登場の前と後で、画像投稿サービスにおける希少性は「描く人」から「見る人」に移動しました。ここに気づけることで、他のサービスでは提供できないオリジナリティを発揮できるのです。

こうした「生成AIの登場」のようなイノベーションが起きた時は、「生成AIで何をするか」といったことが語られることが多いですが、肝心なのは「生成AIが出てきたことをどう捉えるか」です。

この、WhatではなくHowを考えるためにも、
定石×イノベーション=新規事業アイデア
という公式は覚えておくといいと思います。

今回は以上です!
それでは、すろすろ、すろーす!

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