【第一話】転職面接のシミュレーションしてみた

(コンコン)
(ガチャ)

失礼します

―はい、どうぞ。では席におかけください。

ありがとうございます、よろしくお願いします。

―今日は弊社の面接にお越しいただきありがとうございます。
では、簡単に自己紹介をお願いできますか?

こちらこそお時間いただきましてありがとうございます。
りょうたといいます。
現在35歳で、2度目の独立をしているのですが思うところがあり、転職活動をしています。
今まで4社経験、2度の個人事業主をしてきました。

―なるほど。35歳で6か所ですか…少し多いですね。
今までどんなことをしてきたんですか?

2007年4月に新卒で入社したのは財閥系メーカーで営業をしておりました。
最初の1年半は本社のある愛知で営業企画、
その後2年は東京で営業、
そこから大阪へ転勤し、転職するまでの約1年営業していました。

―なるほど、メーカーの営業だったんですね。
どんな営業内容だったんですか?

取り扱う製品は、揺れを防ぐ「防振ゴム」というものでした。
売上の8割は自動車向けなのですが、僕は鉄道や住宅向けの製品を扱う事業部に配属されました。
営業スタイルは鉄道向けはルートセールス、住宅向けは新規開拓がメインで、どちらかというと新規開拓の方がやりがいがありました。

―ほう、なぜルートセールスではなく新規開拓の方が?

そうですね、ルートセールスはクライアントもやるべきこともある程度決まっていました。
商談の内容も技術的な話がメインであり、技術者同士の打ち合わせをセッティングすることと、納期や予算などの案件管理ばかりしていました。
あまり自分がそこに介在する意味を見出せずにいたんですね。
反対に、新規開拓は会社として新しい取り組みであり、今までやったことのある人がほとんどいなかったため、自分で試行錯誤しながら進めることができました。
もちろん方針や大まかなやり方などはありましたが、具体的な動き方についてはある程度任されていました。
そこで市場のことや新規開拓の方法など、幅広く情報を集めて自分なりにまとめ、実行しながらノウハウを構築していくことに非常にやりがいを感じました。

―なるほど、既存の方法をなぞるよりも、新しいことをやることにやりがいを感じる、ということですね?

そうですね、既存のものを組み合わせて新しいものを作る、ということがとても好きです。
・目的を明確にする
・幅広く情報を集める
・集めた情報を目的に沿って構築し直す
・実際に確かめながら修正する
というやり方で成果を出してきました。

―当時の営業ではどのような成果を出しましたか?

鉄道向けでは目立った成果を出せませんでした。
ほぼ何もしなくても、月2000万円ほど売り上げが発生するような仕事内容だったので…自分で何か成果を出した感覚はありません。
新規開拓では商流の構築を手掛けることができました。
東京・大阪ともに、地場の中堅ホームビルダーとの取引開始や、商社への販路開拓によって売り上げの基盤を作りました。
こちらは月100万円ほどとあまり売上規模は大きくありませんでしたが、0→1を経験することができました。

―なるほど。ではその成果を出すうえで工夫したことはありますか?

先ほどお伝えした通り「既存のものを組み合わせて新しいものを作る」ということを意識したのですが、中でもうまくいった方法があります。
担当地域のハウスメーカーや工務店にテレアポをするのですが、その際に製品の案内を匂わせると全くアポが取れませんでした。
しかし、「地震対策についてのアンケート」という名目でアポを取ると、商談セッティング率が飛躍的に向上したんです。
扱っている製品に関するアンケートですので、市場調査という意味も込めてその場をセッティングしました。
先方からしても「アンケートぐらいなら答えてもいいかな」ということで気軽に会ってくださいました。
実際にお会いした際にアンケートに答えていただき、最後に先方から
「ところで何か地震対策の製品は扱ってるの?」
と反応があったタイミングで製品説明をしました。
そこから更にヒアリングをしながら、もしニーズに合うようであれば提案を続け、その場で受注することも多々ありました。
押し売りしても売れないことはわかっていたので、いかに興味を持ってもらうか、いかにニーズにマッチしているか、ということを伝えることを意識していました。

―それは業界や製品が変わっても使えそうな方法ですね。
もともとそういったやり方をしようと考えていたんですか?

実は小さいころから「人の相談に乗る」という機会が多くありまして、なぜか色んな人から相談されるんです。
そこで自分なりの考えや、調べたことを伝えていたんですが、相手の悩みとずれていたり自分の主張を伝えすぎたりしても、相手が変わることはほとんどなかったんですね。
反対に、相手のニーズに合わせて引き出しの中身を増やしたり出したりすることで、相手の現状が大きく変わるという機会を数多く経験してきました。
小学校6年生のときからそういった経験を積んできたので、20年以上の経験を積んだことになります(笑)

―営業というと「製品を売る」という印象だけど、そうじゃなくて「相手の現状を変える」という役割と捉えてたわけですね。

まさに仰る通りです、製品を売ることが目的ではなくて、クライアントの問題解決をする手段として営業活動であったり自社の製品があったり、と考えているので。そのスタンスがうまくはまったんだと思います。

―わかりました。で、そのあとはどのような会社に転職したんですか?

次は経営コンサル会社に転職しました。2011年8月です。

―メーカーから経営コンサルですか。
これまた何でコンサルなんですか?

はい、これには小さいころからの想いが関係してまして。
僕は神戸で生まれ育ったんですが、小学校4年生のときに阪神・淡路大震災を経験しました。
自宅の被害はそこまで大きくなかったのですが、祖母の家が全壊全焼でなんとか助け出されたり、友達の家族がお亡くなりになったりと、
「いつ死ぬかわからない」
という価値観が芽生えました。
大人になるにつれ、徐々にその記憶が薄れてはきたのですが、2011年3月の東日本大震災によって、強烈に蘇ってきたのです。
やっぱりいつ死ぬかわからないな、と。
このままずっと同じ環境で、死ぬときに満足するのかな、と。
自分の人生を考えたときに、いくら新規開拓で成果を出しつつあるとはいえ、会社として8割以上がルートセールス重視であり自分が介在する余地がないとなると、環境を変えることに挑戦してみたい、という思いが強くなりました。
もともと親が自営業で、飲食店を営んでいるということもあり、いつかは自分も独立してみたい、と思っていました。

―なるほど、では独立をしたいと思うようになった、と。
なぜ独立ではなく、転職を選んだんですか?

独立するとなると、大きな会社で得られたノウハウは通用しないと感じたためです。
担当する業務はビジネスの中でほんの一部分であることはわかっていましたから、ビジネスの流れを一通り経験したい、ということがまずありました。
また、どんな事業内容で独立するのか考えたときに、
・求められること:相談に乗る機会が多いこと
・好きなこと:自分なりのノウハウをもとに問題解決すること
という2点を踏まえて、コンサルティング業ということにとても興味を持つようになっていました。
メーカーで営業をしながら、コンサルタントとして必要なことを学ぶ機会を増やし、それを日々の業務にも応用していました。
また、相談に乗る機会の中で特に多かったのはキャリアについてでしたので、キャリアについても将来は関わりたいと考えていました。
コンサルティングという手段を使って「経営に悩む人」「キャリアに悩む人」の問題を解決したい、という方向性が固まりました。
そこで、独立する前に「経営コンサルティング会社」と「キャリアコンサルティング会社」で働くことで、独立に向けた修行をしよう、と決めたことが、独立ではなく転職を選んだ理由です。

―それはなかなか用意周到ですね。準備には時間をかける方なんですか?

はい、思い切った行動を取ると思われがちなのですが、実際に行動に移す前には、大量の情報収集や思考の整理を欠かさないようにしています。なので、とりあえずやってみろー!という経営方針だとちょっと成果を出しづらいですね…

―でもいくら準備していたとはいえ、メーカーの営業マンから経営コンサル会社に転職というのは狭き門だったのでは?

はい、それは転職エージェントも難しいと思っていたらしく、「まぁ記念受験になると思いますが…」ということも言われました(笑)
でも僕は落ちるつもりでは選考を受けていませんでした。
面接は商談みたいなもので、会社が求める人物像に自分がぴったり合っているんだとしっかりアピールできれば通ると思っていましたので。
すんなりと最終面接まで通過しました。

―面接は自分を売る場みたいなものですしね。
最終面接はいかがでしかた?

役員4名、応募者4名のグループ面接でした。
持ち時間は4名で1時間。
で、年齢順に質問されてたのですが、僕は一番若かったので最後でした。
前の3名で50分以上時間がかかってしまって、僕の持ち時間は10分もありませんでした(笑)

―それは厳しい(笑)

で、色々と質問をされたのですが、当時の社長が「君のことを詳しく知りたいけど時間がない。なので、この質問にだけ端的に答えてくれ」と。

―おぉ。なんか圧がすごい。

「目の前に、めちゃくちゃ理想の女性と、現金1000万円と、うちの会社の仕事がある。どれかひとつだけ選ぶならどれにする?」

―究極の選択ですね。

そうなんです。そう問われてめちゃくちゃ考えました。
時間が無い、端的に答えろと言ってる、そしてこれは入社の最終面接だ。見られているのは、経営コンサルタントとしての資質があるかどうかだろう。
そこで僕は「御社の仕事です」と即答しました。

―で、役員たちのリアクションは?

「ふーん、あっそ」みたいな、実際には言ってないですけど、そんな雰囲気になりました(笑)
まぁそりゃそう言うよなー、おもしろくないなー、みたいな(笑)

―それはまずいですね(笑)

そうなんです、そこで僕は補足説明することにしました。
「これには理由があります。まず、理想の女性ですが、もしお付き合いできたとしても、今の僕であれば長く続くほどの魅力がないかもしれません。なので遅かれ早かれ別れてしまうことになります。また、現金1000万円についても、お金の使い方がよくわかっていないので、消費して終わってしまいます。
しかし、御社の経営コンサルタントとして活躍すれば、年収1000万円を稼ぐコンサルタントになれると考えます。そうすれば、毎年1000万円手に入るわけですし、業務を通じて経営者としてのお金の使い方も身に付けると考えます。そうすると消費ではなく投資マインドになっていますので、1000万円を増やすことができます。
そういった自分であれば非常に自信を持って人と付き合うことができるので、理想の女性と出会えば長く続くと考えます。
ですので僕はその3つの中から御社の仕事を選びました。」

―おぉ、なんかそれっぽい!

はい、ここで意識したのは、ロジックがどうかというよりも、「1つを選ぶことで3つとも手に入れる」という考え方をアピールしました。ボウリングでいうと、ストライクを取る考え方みたいな。
経営者って色んな選択を日々迫られると思うんですが、捨てることも大事ですし、1つのアクションで複数を手に入れられるような本質的な選択も必要だと思ってたんですね。
僕はそんな考え方ができますよ、というアピールをしたかったんです。

―その補足説明をしたら役員はどんな反応でした?

明らかに態度が変わりました。みなさん、手元のメモに「○」と書いてるのが見えました(笑)

―おぉ、じゃあもう通過したも同然ですね(笑)

はい、心の中はめちゃくちゃにやにやしていました(笑)


第二話に続く…

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