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電子辞書・BrainでLinuxを動かしてみた。

先日、とあるリユースショップを探索したところ、あるものが目に飛び込んできた。

SHARP製の電子辞書・Brainだ。


Brainといえば、裏でWindows CEが動いていることで有名で、古くからツールを使ってそのWindows CEを表示させるハックが行われてきた。実際私も高校時代にBrainを持つ後輩に依頼され、このハックを使ったことがある。

電子辞書がコンピューターになる。そのロマンに痺れた方々が積み上げてきた、Brainに関する膨大な情報がインターネットには転がっている。


しかし、ハッキリ言ってWindows CEでは拡張性はない。Windows CEは組み込み用途のWindowsなので、通常のWindowsで動くアプリが動かなかったりするからだ。

とはいえこの電子辞書は事実上コンピューターなのは間違いない。と考えると、Linuxが動いたりはしないだろうか。そう思った。

そこで少し調べてみると、あった。
Brainuxという、Brain専用のLinuxが。


これで一気に興味を惹かれた。


このBrainの外観を見てみると、状態はかなりよさげである。私のようなジャンカー御用達、黄色と青色がコーポレートカラーの某リユースショップに頻繁に足を運び、ハッキリ言って商品というよりかはただのゴ●に近いようなジャンク品を数々眺めてきた私から見ると、これは100点中90点の超美品だ。付属品がないのも某リユースショップじゃ普通。

電源ボタンを押しても電源は入らなかったが、値札にご丁寧にも「充電式/USBコードで充電できます」と書いてある。ここから、機種固有の電源アダプターなど不要で、普通のパソコンのUSBポートから給電できる可能性が高いと踏んだ。


決め手になったのは、この機種はBrainuxの起動・キーボードの認識・タッチパネルの認識すべてに対応しているということ。

私はこのBrainと、そのへんのカゴの中に転がっていたmicro USB Type B―USB Type Aケーブルを充電用に持って、レジへと向かった。7,000円弱とお高い買い物ではあったが、ロマンに完全に頭をやられていた


起動確認

家に帰ってジャンカーお決まりの「ウェットティッシュで拭く」という儀式を終えて、早速USBケーブルを繋ぐ。

ピピッという電子音がして、「充電量が足りないからもう少ししてから電源ボタンを押せ」という指示が画面に表示された。

そしてしばらくすると充電が終わったのか勝手に起動した。


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液晶の表示も完璧。効かないキーなどもない。

この時点で正常動作を確信。これは大当たりだ。


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セットアップを終えて、ホーム画面が表示された。思っていた以上にあっさり起動してしまった。


マシンのスペック

購入したのはSHARP Brain PW-SB2-Aという機種。Brain Wikiによれば、2015年製で「第3世代」と呼ばれる区分に属しているようだ。

ARM第5世代(ARMv5TEJ)のFreescale i.MX28というMPU(1コア1スレッド)に、128 MBのRAM。

コンピュータとしてみたら恐ろしいほど低スペックだが、本当は辞書なので。


Brainuxをインストール

Brainuxはありがたいことに簡単にインストールできる。
必要なのは、4 GB以上のmicroSDカードとそれを書き込むパソコンだけだ。

公式Wikiを読みながら進めればできるはず。

私はwgetとddを使った。

$ LATEST=2021-04-19-195555 # 最新リリースの名前
$ cd ~/Downloads
$ wget https://github.com/brain-hackers/buildbrain/releases/download/$LATEST/sdimage-$LATEST.zip
$ unzip sdimage-$LATEST.zip
$ sudo dd if=sdimage-$LATEST.img of=/dev/mmcblkX status=progress # 書き込み先のデバイスファイル名はlsblkなどで確認

書き込み終わったら、BrainにSDカードを挿してリセットボタンを押す。そうするとBrainuxが起動する。


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デスクトップ環境としてJWM、OpenBox、Westonを選べる(シェルのみもある)。名前を聞いたことはあれど、どれも初めて使うデスクトップ環境だった。OpenBoxはマウスポインターしか表示されず使い方がわからなかった。Westonは、ArchWiki曰く「Wayland コンポジタのリファレンス実装」らしいが、そのWaylandが災いしたのかタッチパネルを認識せず断念。結局デフォルトのJWMを選択。


ターミナルはLXDEのLXTerminal、Webブラウザーは軽量系のMidoriがインストールされている。ただ私の環境ではアサーションエラーでMidoriは起動できなかった。どのみちインターネットに接続していないのでネットは見れないが(公式Wikiのいう「極めて高速に表示されることで有名な著名人のサイト」を見れたら最高に面白い)。


それから、私の環境では時刻がずれていたので修正した。

$ sudo date -s "yyyy/mm/dd HH:MM" #現在日時に置き換え

けれども電池が切れる度に時刻がおかしくなるので、放っておくことにした。


ちなみにこのBrainux、SDカードにインストールされているだけなので、本体の環境(辞書のほう)には一切影響がない。SDカードを抜いたら普通の辞書に戻る。


まとめ

今回は、SHARPの電子辞書・Brainをジャンクで購入し、BrainuxというLinuxディストリビューションをインストールした。今回はまとめられるほど大したことはしていないが、界隈を見てると頑張れば面白いことできそうなので、これからもいじってみる予定である。

ではまた。


なお2021年10月31日(日)夜に、Brain Hackers Meetupというイベントが行われるらしい。

これまでIT系のイベントに参加したことはなかったけど、YouTubeでLIVE放送するみたいなので観てみたいと思う。