政府の副業解禁のウラ話

少し前の話ではありますが、2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を示し、「モデル就業規則」から副業禁止の規定を削除しました。この背景には、内閣の掲げる「働き方改革」が大きく影響しています。

モデル就業規則では、副業・兼業という章を新たに作り、下記のように記載しています。

・・・
(副業・兼業)
第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
                 ~厚生労働省HP「モデル就業規則」 

つまり、上記に掲げるような特別な事情がない限り、副業・兼業は原則自由にしなければならないということです。

副業解禁については、働き方改革による働き方の多様化や日本国内の深刻な人材不足に背景があるのですが、実はそれ以外にも全く違う事情があるのです。

伝統的な日本企業では、終身雇用と年功処遇の前提があり、スキルのない新卒を受け入れ、社内で教育を施し、社員の能力を会社が高めてくれます。社員の能力は会社が高めてくれているわけですから、その能力を社外で使うというのはご法度で、副業禁止の論理が今までまかり通っていました。

副業・兼業解禁は、この今までの日本型雇用慣行の前提がくずれ始めてきたことを意味しています。終身雇用で社員を定年退職まで雇い続けなければならない、かつ年齢とともにに年収を上げ続けるということが可能な企業はごく僅かです。

「退職をしてほしいわけでもないが、今の年収で今の業務をこなすというのは整合性が取れない。残業手当をすべて削って、出勤は週5日ではなく週3、4日でいいので、給与を下げたい、できれば半額くらいにまで。」というのが政府の副業解禁の諮問委員会に参加していた大企業の人事から直接聞いた本音です。

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