おなかが空いた


 


 おなかが空いた。


 今日は11:00に起きた。宅急便のお兄さんが鳴らすチャイムの音で目覚めて、寝起き10秒の姿で荷物を受け取った。それからのろのろとSNSを眺めて、気づいたら二万円近くの買い物をしていた。そんなこんなでふと時計を見ると、午後の2時。おどろいてしまうほど何もしていないのに、私のおなかは今、食べ物を求めている。


 昨日、友達からLINEが届いた。「何のために自分が生きているのかわからない」「何かいきいきとできるような目標がほしい」。仕事に疲れてそれを眺め、心のなかで大きな溜め息をついてしまった。何のために生きているのか。何のために生きているのか。何のために生きているのか。


 ここ一年ほどで、私は花を飾ることが好きになった。といっても、近くのスーパーの片隅に設置されている特に洒落てもいない生花コーナーで1種類か2種類の花を買い、食料品と一緒に袋へ詰め、家の窓辺に飾るといったささやかなものだけれど。今空腹な私の横で、満開のカスミソウがむっとした香りを放っている。カスミソウの香りは素直にいい香りと言えるような香りではないことはこの1年で初めて知った。そのいじらしい可憐な姿とは裏腹に。とはいえ、そのしたたかさが私は素晴らしいと思う。矛盾ばっかりで生きる苦しみを静かに、でも確かになぐさめてもらっているような気持ちになる。


 おなかが空いた。私は何のために生きているのか、そんなこと皆目分からない。何のために生きているのか、分かったところでそこに何の意味があるのだろうか。おなかが空いた。だからこのあとは、たっぷりのバターをフライパンで溶かして、目玉焼きでも焼いて、食べよう。



 

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