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「他人の人生を背負えるとは思うなよ」〜先輩からもらった大切な言葉

自分にとっての「忘れられない対話」って、何があるだろう?

そんなことを考えていたら、1つの言葉に思い当たった。

他人の人生を背負えるとは思うなよ


これは先輩からもらった大切な言葉だ。

今日はこのことについて、書いてみようと思う。

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以前の私は都内の自治体で仕事をしていた。

まだ20代だった私は当時スポーツ部門にいたのだが、たった一枚の辞令によって福祉部門へ異動することとなった。

生活に困窮する約90世帯を1人で担当する、いわゆるケースワーカーという仕事だ。

ケースワーカーの仕事は対象者の生活全般を支えるもので、自治体によっても、時代によっても関わり方は様々なのだけれど、当時の私の異動先はがっつりと対象者に寄り添い、そして支えていた。

だから住まい探しに不動産屋と交渉もすれば、入退院や入退所の付き添いやら手続きやらもするし、金銭トラブルの解決を支援したかと思えば、葬儀の手配をしたりもする。生と死にも関わりながら、必要なら警察にも行くし、遠くの病院にだって足を運ぶ仕事だった。

こんなに重い仕事、私には無理じゃないか・・・?

福祉の知識なんて全くない、どちらかと言えば「福祉ってちょっと苦手かも」と思っていた私にとって、この異動はかなりのプレッシャーを感じるものだった。

私が福祉?しかも何もわからないのにいきなり今日から1人で90世帯も??

そんな私を心配してか、当時とてもお世話になっていたT先輩が話しかけてきてくれた。

T先輩もケースワーカーを経験した一人だ。


「いや、いきなり90世帯なんて無理です…」

「そもそも福祉のことなんて何も分かってないし、知識だってないし、それをいきなり一人で…」

そう言う私に彼は、「大丈夫だよ」「できることをやればいいんだから」と励ましの声をかけてくれた。

そして、このときT先輩からもらった言葉が、冒頭に書いた「他人の人生を背負えるとは思うなよ」だった。

これから君が担当する仕事は、目の前の人に親身になって関わる仕事、もっと言うと、人生に深く関わる仕事だ。

そして、それに見合う権限も大きなものがある。

きっと君のことだから、目の前の人に一所懸命になって、なんとかしてあげたい、どうにかしてあげようと奮闘することになると思う。

でも、相手の人生は相手のものであって、君のものじゃない。

その人の人生のほんのいっとき、ほんの一部分だけなんだよ、君が関われるのは。
だから、君が相手の全てを背負えるわけではないんだ。

誠実に、親身になって接することと、その人の人生を肩代わりしてしまうこととは違うことだ。

ここは勘違いしてはいけないよ。

ケースワーカーとしてできる精一杯はやっていこう。

でも、その人の人生はその人自身のものだ。

だから、他人の人生を背負えるとは思うなよ。


面倒見のいいT先輩のことだから、彼自身が相手の人生を背負おうとした過去があったのかもしれない。

私の感じていた不安やプレッシャーを理解して、真正面から受け止めてくれた上で、彼は大切な言葉を届けてくれた。

この言葉、「他人の人生を背負えるとは思うなよ」は、ケースワーカー時代はもちろんのこと、プロのコーチとして生きている今でも、私の心にずっと残っている。

精一杯向き合う。できることはする。でも、その人の人生はその人のものであって、私が安易に背負えるようなものではないのだ。


言葉って、人の心に残るものだなと思う。

だから私も、誰かに届ける言葉は、できるだけ大切にしたいと思う。

言葉は放つものではなく届けるものだ。

相手の言葉、気持ち、こだわり、そんないろいろを丁寧に受け止め、そして私からは、大切と思う言葉を届けていく。

そんな対話を、これからも私は大切にしていきたい。



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