在宅ホスピスがんの自宅ホスピス施設の訪問(ドイツ 2日目 午前)

8人のゲスト(入所者)が来る スタッフも日の入るいい部屋を広く使う

2日目午前には8人定員の自宅をホスピス施設として運営する「在宅ホスピス」を見学した。医学・看護的管理として自宅以上病院ホスピス以下という位置付け。ただし、8人というこじんまりとした定員で対応することで個別性を担保しつつ、24時間対応で看護師による専門的ケアが受けられるというもの。ここでも宮崎のかあさんの家的な、自宅を改修して集合して住むという形になっている(が、住環境がそもそもとても良いので、広い庭と、芝生の気持ちの良い場所になっている)。

日本で類似というと宮崎かあさんの家になるとおもうが、そことの違いは、①1日500ユーロ(1ユーロ140円程度、円安!、こちらの最低賃金が12ユーロとのことなので、最低賃金の42倍というように補正すればまだニュアンスがわかるかも。)が医療保険からでること、②本人の自己負担がないこと である。

この施設では残念ながら、最終の日にちから週単位のタイミングでのみの入所になっていること。患者さんは98%の入居者ががん、2%は内科の疾患 肺・気管支疾患、ALSという。スウェーデンで10年前に見たホスピスは当時すでに自宅型になっていてかつ、在宅医療と連動し、家とホスピスをもう少し前倒して行き来するというかたちだったのでその点ではスウェーデンは当時からすすんでいたように感じる。


個人宅とはいえ、もともと住環境が恵まれている


看護師以外のサービスは外付けで、医師によるグループ診療SAPV(ブレーメンに一つしかない)・緩和ケアチームのアウトリーチがこの在宅ホスピスにも週に2回来てもらえる。その医師は病院の緩和ケアに所属しているので、日本の専業の在宅医とはことなる。GPによるアウトリーチと、緩和ケアの医師のグループ診療という形とは異なる在宅専門クリニックは重症患者にも機動的に対応できるという点で優れていると思うが、世界の仕組みとは異なっている点が面白い。

担当看護師・施設長からのレクチャー

スタッフの定着率は良く、17人の所属看護師は20時間から30時間しか週に働かない。ワークシェアすることで一人の負担を減らして、ワークスタイルに応じた働きやすさを追求することができる。心理カウンセラーが週に2回来て、患者(ここではゲストと呼ぶが)、スタッフの面談を行う。また看護師間の申送りも1時間の時間をかけてゆっくりとおこなうことができるのも精神的な余裕があることになる。

入浴介助の場所 BGMは明るい感じの曲から、アロマセラピー用まで幅広い

なんにせよ、自宅を利用したホスピスに対して1日500ユーロを払うということがとても贅沢で、しかも自己負担がないなんて思いきっていると思う。ただしごく終末期のみというようにしているので可能なのかもしれない。医療費の対GDPは日本に近いドイツであるが、このようなアクセントのつけ方も多死社会ではありかもしれない。病床を占めてしまうことを考えれば、一つの選択肢としてあってもよいと思う。

当院のカルテレビューからの検討で、がん末期患者はトイレに行けなくなってから一週間でやく半数が亡くなるということが分かっている。すなわち、介護負担がかかるのは本当に終末期ということがある。

そう考える、本当に負担がかかる最終的な一週間に資源を集中して投下するというのも一つの在り方かもしれない。
でも、「家か病院か」の2項対立・2拓ではなく、「家も病院も」という選択に未来は向かっていると思っています。

施設内発症は1回だけとのこと 面会時には抗原検査で対応

訪問先情報 入所型ホスピス Hospiz Brucke
https://www.hospiz-bruecke.de/

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