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2020年のお米、これからの販売について

こんにちは!禾の新米を選んでくださったみなさま、ほんとうにありがとうございます。すこし前にお知らせした通り2020年のお米の販売をいったんお休みしていましたが、明日からまた再開しようと思います。

今回はこれからのお米の販売について書きました。お手数をおかけしますが、ご一読いただければ幸いです。



これからのお米の販売について

理由などは後ほどご説明しますが、実は今年のお米の約半数ほどがすこし食味や風味が落ちるお米になってしまいました。農家として非常に残念なことではありますが、妻と何度も試食をしてみて感じた正直な気持ちです。


お米は30キロの米袋ごとに分けて管理をしているので、今までお届けしたものはすべて、自分たちで食べてみてほんとうにおいしいと思っていたお米です。お米の乾燥・籾摺りをお願いしている地域の農家さんが、私が収穫後に持っていったお米に異変を感じて、それぞれを分けて管理してくださっていたおかげです。


自分たちですべて食べきることができたらとも思ったのですが、とても食べきれる量ではありません。それと、おいしいと感じていた方のお米の在庫が早々に無くなってしまったことから、きちんと事情をお話して、それでもと思っていただけた方々に向けて、特別価格にて販売させていただこうと決めました。


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玄米:1キロ通常価格800円のところ特別価格600円
白米:1キロ通常価格900円のところ特別価格700円
※こちらに別途、消費税と送料がかかります。詳細はウェブショップにてご確認ください。
※何度も試食をしてみた結果、新米ということもありそうですが、少し水を少なめに炊くといいような気がしました。ご参考までに。
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どうしてこうなったのか

2020年は3つの集落、合計9枚の田んぼで米づくりをしていました。1つの集落は昨年もお米をつくった田んぼ。もう1つの集落は昨年は大豆をつくった田んぼ。そして最後の集落は今年初めて栽培をした田んぼでした。


今年初めての田んぼは2年前まで地元の方がお米をつくっていましたが、つくり手の方が突然亡くなってしまい、地主さんから近藤くんやってみないかとお声がけいただいたところです。それが昨年の6月のお話で、タイミング的になにかをつくるのは難しかったので1年間は休耕田として、今年の春から初めて禾としての栽培を始めました。


田植え後の夏、その田んぼでは他の田んぼとは大違いの生育を見せてくれました。見たこともないスピードで成長し、茎の数もどんどん増えていき、これは秋の実りがすごいことになりそうだと内心ドキドキしていました。


しかし、それは本来あるべき姿ではなかったようです。たくさんあったけど穂がつかなかった茎たち。稲に負けないほどのヒエに覆われてしまったところ。鳥にたくさん食べられたところ。そして、いもち病という病気です。これは一般的には、雨が多く温度が低い状態が続くと繁殖しやすいと言われています。今年は7月の長雨がすごかったから県内でもあちこちで多発していますよ、と普及指導員の方は教えてくれました。しかし同じ雨の下、同じ人間が管理をしていたのに、いもち病が出ていない田んぼもたくさんあります。だからきっとその雨はきっかけであって、ほんとうの理由はそれぞれの田んぼに、何よりもそうした田んぼを整えて仕上げることができなかった私自身にあったのだと思います。


収穫量が減ってしまったこともありますが、実際に食べてみて、他の2つの集落で穫れたお米と比べて食味と風味がやや落ちる気がしました。見た目にも白い粒が多いです。この約半年間どの田んぼでも同じように心を込めて作業をしてきましたが、食べものとしてみなさまにお届けする上で正直にお伝えしなければいけません。



これからについて

今回いもち病がたくさん出たことをどう受け止めるべきか、どう解釈すればいいのか、ずっと悩んで考えてきました。先輩農家さんたちにも相談をしてまず知ったのは、自然栽培1〜2年目のときに同じ事が起きていたことがあったということ。そして起きないこともあったということです。


なにかの事象を極端に単純化することは危険ですが、ひとまずそれだけを考えるなら来年も今の田んぼがどうなるかはわかりません。1年で落ち着くようになるのか、ならないのか。そしてもう一つは今後も管理面積を増やしていくのなら、同じことが起きるかもしれないということです。


農家としての技術的な話をすれば、もっと選択肢を持てるようになることが大切だと思います。昨年大豆を育てたところも同じように自然栽培1年目でしたが、昨年も今年も病気についての大きな問題は感じませんでした。お米にしても例えば耐性のある品種を選ぶようにするなど、無農薬無肥料の農業でもできることはありそうです。


しかしもっと大切なことは、いかに自然本位の農業をすることができるか。自分自身の心のありようだと思いました。


この2年間どの田畑でなにをつくるか、あまり悩むことはありませんでした。全体でどれくらいの管理面積があるか、どれくらいほしいか、どうすれば作業効率がよいか、それにそれぞれの田畑の状況を踏まえて、お米(ササニシキ)にするか大豆にするかを考えてきました。選んだ中でできる限りのことを精一杯してきたつもりでしたが、ほんとうはこの選択肢を持っているだけでは人間本位の農業をしてしまっていたのかもしれません。


田畑の状況によっては米麦大豆のいずれでもなく、緑肥と呼ばれるようなものを育てて、売ってお金になることはないけれどその土地のために必要なものを選ぶべきときもあるのかもしれない。思い切って何も作付しないほうがよいときもあるのかもしれない。何かを栽培をするにしても、選ぶべきものがあるのかもしれない。


お借りする農地は、何も栽培しないとしてもずっと放置するわけにはいきません。年に何度も畦草を刈らなければいけませんし、田畑の中も草でぼうぼうにしてしまうだけではいけません。農業の観点で何も生産しないとしても、管理作業やコストはどうしてもかかります。

今年から本格的にお米の品種や麦を増やしていこうと種を紡ぎはじめていて、欲しい作物はどんどん増えていきます。そして、この時代に生業としての農家を選ぶ素晴らしさも厳しさも、少しずつ実感を伴ってわかるようになってきました。まったくの0から始まった濃い2年間を経て、これから自分がどんな農業をしていくべきなのか改めて深く考えさせられました。



無肥料無農薬の自然栽培は自然との対話でうまれる農業だといつも思っています。見えるものも選択肢も増えてきた中で、自分がほしいものをほしいだけとろうとする人間本位の農業をするのか。それぞれの農地や周りの環境も含めた自然のリズムやめぐりに適応しようとする自然本位の農業をするのか。はっきりとした線引はなく、すべてが程度の問題かもしれませんが、それでも、これからがほんとうの意味でそれを問われていくのだと感じました。願わくば、自分が心から尊敬する先輩農家さんたちのように、自然と調和した、自然と人、人と人とをつなげてくれるような、おいしくて豊かな食べものをつくっていけたらと思っています。



みなさまにきちんとご説明しなければと書き続けてきましたが、たくさんのことを教えてくれたこの田んぼと、いろいろなものを乗り越えて生き残ってくれたお米には心から感謝をしています。このめぐり合わせは、これからの私たちにとって必要な意義深いプロセスでした。次の収穫までの1年間、私たちもこのお米を日々噛み締めながら、大切に頂いていきたいと思っています。


これから三年目、そしてきっと四年目、五年目と続けていきながら、もっともっと良い稲作ができるよう、そして良い自然栽培農家になっていけるよう、励んでいきたいと思います。

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