18 ぷよぷよ、エクセルで重要なもの、カレンダーの祝日

えらいから結論から書く。色弱だよというお話。



自分が色弱なんだと気がついたのは高校一年生のとき。友人ごっちゃんと隣同士の席でガラケーで!ぷよぷよをしていたときのことだ。

単純なゲームとはいえ、それまでぷよぷよをやってこなかった自分にはそれがなかなか難しかった。3つ(4つだっけ?)のぷよを並べて、これでどうだ!と思っても消えない。…ふーん。よくわからないけど、何か別の条件を満たさなかったのかな。とにかく次のぷよだね。次は、、こうかな?あれ、消えないな…。ということを繰り返し、気がつけばゲームオーバーになる。何度かやるうちに、同じ色なのにくっつくぷよとくっつかないぷよがいることにも気がつく。なんぞ?

あたまの上にハテナマークを浮かべながらぷよぷよしているぼくに向かって、横からチラ見してきたごっちゃんが言った。え!なんで違う色をくっけようとしてんの!?と。


その後のごっちゃんの解説によりわかったのは、ぼくが思っていた以上にぷよたちは色彩豊かであること。そしてその中に自分がほぼ識別不可能なパターンが存在するということ。それは青と紫であり、たしかオレンジと黄緑であり、あとなんかもうひとつくらいあった気がするけどそれは忘れてしまった。

ほぼ、と書いたのは、厳密には睨みつけるように凝視すればわからなくもないからだ。ただ、ぷよぷよのスピード感にはついていけない。上からランダムに落ちてくるぷよを見ながら、あー、こいつは青か?ん、紫?あーーー、え、やっぱり青ってこと?いや、えーーーわからん!ダメだ!もう青ってことで!よいしょ!って紫なんかーい!ってな感じだ。難易度が高すぎる。もはや別ゲームだ。そんなわけで、齢16にしてぷよぷよとは今生の別れと相成った。


そんなぼくも大人になり23歳にして社会人となった。それっぽく書けば外資系IT企業のバリバリのビジネスパーソン、の卵、と言えなくもない新入社員の一番の悩みはエクセルの色だった。

毎週月曜の朝一に、所属する営業部の定例会議があった。営業部長がたぶん週末に用意したのであろう案件一覧のエクセルをプロジェクターに写しながら会議は進んでいく。数字に対して一切の妥協は許されない空気のなかで、チーム全員に鋭い目を向けながら部長は言う。全体として重要な案件を赤字にしてあります。これらの進捗をここで確認させてください、と。新米でそんな重要案件にはほぼ関わっていないながらも、真剣な面持ちでぼくは思う。さあ、赤字の案件はどれなんだろう?と。

一事が万事こんな調子である。エクセルでもパワポでも、振り返れば黒板ですら、重要なものはすべて赤くなり、赤くなればなるほどにぼくには見えにくくなる。重要なものほどよく見えない人生であった。いや、赤はよく見えないんすよ!例えば青でお願いしゃす!と声を上げる勇気はぼくには無かった。


そんなぼくも退職し、36歳となった今では農家だ。個人事業主となり自分でいろいろ決められるので重要なものはだいたい青くしてる。そんな中、先日のこと、いつものお米のお便りにこのゴールデンウィークについて書いていた。今年は3連休が2回と、まあまあ控えめですね。我が家では、、つらつらつらと。書き上げたものを見てくれた妻がすぐに指摘してきた。いや、後半は4連休だから、と。

う、うそだろ!?と急いでカレンダーに目をやる。考える。位置的に4と5は赤なんだろう。そして長年の経験により大型連休を形成するために3もきっと赤なんだと推察される。2は結婚記念日だけど平日だって妻が前に言ってたからこれは赤くないはず。となると、6か!6だけを凝視して、5や7と見比べると赤字に見えなくもない。6、お前もか…。

(まぁ実際には日付の横に祝日の名前があればそれは赤、とわかるけど、その文字が小さいからちゃんと意識して見ないと気がつかない)


他にも、花火にはもっと色味がありそうだということをだいぶ大人になってから知ったり。レゴブロックもちょくちょく色を間違えて息子に指摘されたり。色がぶつぶつってしてる中に数字が書いてあるやつは見事にわからなかったりする。ちょっと際どくてここには書けないこともあったし、きっと自分でも気がついていない色の階調がどこかにあるんだろうと思うけど、どうにかここまで生きてこれた。こと色に関しては、ただただマイノリティであることを自覚しながら、この社会よ、もっと万人に優しくあれと願っている。

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