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おばさん

この間の日曜日、近くに住んでる親戚のおばさんから電話をもらった。

「わたるが来るからご飯一緒に食べておいで」

わたるっていうのはおばさんの孫で僕と同い年、はとこってやつだ。

僕はこうやってたまにわたるとごはんを食べに行く。

おばさんの家に行くと、「いらっしゃい」と同時にティッシュにくるんだお金を僕にくれた。5000円札である。僕は27歳にもなって、5000円をおばさんにもらうことにまだウキウキしている。

わたるがくる。わたるも、ティッシュにくるんだ5000円を握手する様にもらった。わたるもウキウキしている。

「美味い居酒屋があるから行こうぜ」とまるでおごってやると言わんばかりの勢いで、僕はわたると夜の板橋に繰り出した。

居酒屋でわたるがハマっているものについて熱弁していた。わたるはカードゲームを集めるのが趣味らしい。
「このカード1枚5000円するんだぜー!」って言って僕も「マジかよー!!」なんてゲラゲラ笑って話していた。

途中、「大丈夫かな?俺、5000円しか持ってないよ?」「俺も俺も」なんて不安になってしまった。酒は旨いのだけれど10分に一回は2人で確認しあった。

お会計で2人ゴクリとツバを飲んで伝票を確認した。4325円。全然足りてた。むしろ、倍以上頼めた。

「安くて良い店だったね」なんて小心を安さのせいにした。誰も傷つかなくてそれはそれで良かった。

帰っておばさんの家でアイスを食べた。

おばさんはまだ起きてて、また僕に紙に包んだお金をくれた。一体全体どうなってんだい!?と思いながらやっぱり鮮やかにいただいた。

おばさんとわたるにさよならして帰宅。包み紙の中は3000も入っていた。大事に使ってねっておばさんは言ってた。

パッと包み紙を見ると何やらワープロで書いてある。
おばさんの短歌だ

おばさん多趣味で短歌とか書いてるんだ。ワープロも一生懸命覚えようとしてた。

何行にもわたって書いてある。どれも良い短歌だ。詩っていうのは誰でも共感できるような当たり障りのないことは書いちゃいけない。

おばさんの短歌は顔が見える。

「向かい家の一尺程の隙間より春の日しばし厨まで射す」

短歌の中の一つだ。知ってる人にしか分からない一尺程の隙間。知らない人は想像で情景を思い浮かべなくちゃいけない。詩ってのはその瞬間に輝くんだろな。

この短歌を3000円貰って読んだわけだ。自分に置き換えるなら3000円あげてライブに来てもらうってことか。なんだか、情けないことをしてしまった。

今度、おばさんにご飯作ってあげようと思う。おばさんはあまり料理得意じゃないので喜んでくれるかな。食べに行くときっとお金を出してもらってしまいそうなので。


浅戸梁のMVです

アメリカンスピリット
https://youtu.be/rnVjAakZDL0
ギブソンギター
https://youtu.be/-dSEbWfCXtE

是非聴いてください!

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