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北のミサイルが日本に落ちない理由 (1/4)

「北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか ―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている」の復刻を記念し、本文の一部を4回に渡り掲載します。

     <聞き手: 白馬社編集部  話し手: 秋嶋亮>

―北朝鮮問題についてはヤラセというご見解ですが、それはどのような理由に拠るのでしょうか?

だって子どもが考えてもおかしいことばかりじゃないですか。ミサイルが首都圏に飛来するかもしれないというのに総理大臣はゴルフをやっている、総理夫人はカラオケをやっている、閣僚は夏休みの外遊に出ている。しかも有事法の策定に関わる憲法審査会の面子が呑気に休んでいるわけですよ。Jアラートが発動された当日ですら国際線は通常運航で、不動産株も銀行株も国債も地価も大した動きがなかった。戦争となれば証券の代替としてゴールドが高騰するのに市場にそんな動きもなかった。つまり政治社会だけでなく経済社会も北朝鮮のミサイルを全くリスクと見なしていない。それだけではありません。なぜ(戦争となれば前線地となる九州で)玄海原発を再稼働させるのか、なぜ標的とされる東京でオリンピックを開催するのか、なぜ高層マンションが続々と建設されるのか、なぜ外国人観光客は史上最高なのか、なぜ核シェルターではなく五輪スタジアムを作るのか……、疑問は尽きないでしょう。

―要するに誰も本気で戦争になるとは考えていないと。

例えば2011年に福島原発事故が発生した際、各国の大使館は自国民に関東から避難するよう勧告していました。全く報道されませんでしたが、アメリカは在日米軍の家族2万人の退避を支援していたし、イギリス、フランス、ベルギー、ロシアなどはチャーター機を派遣していたのです。そうやって24万人以上の外国人が脱出したわけですね。ところが今回はそのような動きは全くないでしょ?このように帰納的に推論すれば、各国政府も日本と北朝鮮が戦争するなんて考えてはいない。日本にミサイルが落ちるわけないと思っているわけですよ。

―つまり、新聞テレビが煽る北朝鮮脅威論には根拠がない、というわけですか?

核実験の回数でみればロシアは700回以上、中国は45回、これに対し北朝鮮は僅か6回です。核ミサイルの数でみればロシアは約7300発、中国は約260発、これに対し北朝鮮は推定8発に過ぎない。またロシアは北方領土に軍民共有の空港をはじめ基地を続々と建設しているし、中国も尖閣諸島から僅か300キロの地点に要塞を構えるなどして橋頭保(侵攻の拠点となる場所)を築いています。だから仮に北朝鮮が脅威だとしても、中露のそれには全く比するものではない。そもそも北朝鮮の軍事予算は1兆円にも満たないのですよ。これは実に日本や韓国の5分の1以下、アメリカの70分の1以下です。だからそのような弱小国をクローズアップして脅威と位置づける馬鹿げた世論(非対象性に言及しない議論の異常さ)を点検しなければならない、というのが僕の主張です。

―やはり北朝鮮の実態が報道によって歪められているように思います。

少なくとも北朝鮮がテロ国家であるという文脈には無理があります。すでに北朝鮮は150以上の国々と通商関係を築いているのですよ。ちなみに北朝鮮経済の25%が輸出に依存していると推定されますので、その意味ではアメリカや日本よりも国際社会との関係は深いとも言えます。いずれにしろ「狂犬のような独裁者が君臨するイカレた国」という北朝鮮像は、日本とせいぜいアメリカのインフォテインメント(報道番組に偽装したワイドショー)の中にしか存在しないということです。

―それではどのように北朝鮮という国を捉えなおせばいいのでしょうか?

重要なことは金融というセグメントから考えることです。つまりカネの流れから捉えなければ本質は何一つとして分からない。はっきり言いますが地政学や軍事学で語る北朝鮮論はみんなマヤカシですよ。最新の事情は「コリア・レポート」などにも詳しく記されていますが、北朝鮮にはコバルト、ウラン、チタニウム、タングステン、モリブデン、マグネサイト、金銀などの鉱山や油田があり、そのような天然資源の総額は1000兆円とも推計され、各国から莫大な投資を呼び寄せています。

―それだけでも北朝鮮のイメージが随分違ってきます。

そもそも98年にアメリカの鉱山協会がレアメタルの試掘権を入手しているんですよ。また01年にはイギリスのアミネックス社が油田探査の独占契約を締結していますから、いずれ北朝鮮の資源は欧米メジャーの流通に乘るのではないでしょうか。そしてエジプトのオラスコム・テレコム社が携帯網を作り、ドイツのDHLが物流インフラを整備し、日本の麻生ラファージュがセメントを生産するといった具合に、すでに現地で設立された合弁企業は350社を超えているそうです。そしてこれらのプロジェクトにはロシアや中国はもちろん、韓国、イタリア、スイス、シンガポール、インド、台湾、香港、タイなどの企業が参加しているんですよ。いずれにしろ北朝鮮がとっくに「開国」を果たし、国際社会の一員になっていることに変わりはありません。

―エジプトの企業が北朝鮮の携帯網を整備しているんですか?

北朝鮮は70年代頃からエジプトを通じてソ連製のミサイルを購入しているんですよ。そしてそれを分解して逆設計する形でミサイルの製造技術を蓄積している。だから両国の繋がりは深いわけです。ちなみに北朝鮮の携帯網プロジェクトには(国交がないはずの)フランスの資本も入っています。

―新聞テレビは北朝鮮が経済制裁を受けて破綻間近だみたいなことばかり伝えていますが……。

対北投資額はさらに引き上げられる見込みです。経済特区(外国企業の自由な投資や特権的な税制度を保障する地域)などもドンドン作られ、すでにその数は韓国の2倍以上になるとも指摘されています。各国の資本により工業団地なども造成され、電子部品の生産どころかソフトウェアの開発なども進んでいますからね。つまり現在の北朝鮮は80年代当時の中国さながらに「開放政策」の過渡期に入っているのです。レアメタル・バブルに沸く首都平壌などは「ピョンハッタン」と揶揄されるほどですから。

―しかし国民はとんでもない勘違いをしています。北朝鮮は前近代的な鎖国状態に在ると思っていますからね。

よくよく考えなくてはならないことは、北朝鮮がミサイル発射を繰り返した2007年の8月以降も、各国は合弁プロジェクトを凍結しなかったことです。つまりこのような宣戦布告にも等しい行為にかかわらず、日米を始めNATO同盟国が北朝鮮に対する資本やイノベーションの提供を止めなかったことが何を意味しているのか、この点をよく考えなくてはなりません。僕が知る限り、ミサイル発射の制裁措置として事業を中止したのは中国とインドくらいです。他の国も何かしら制裁措置を講じるようなマネをしていますが、それはあくまで表面的な対処であって、対北朝鮮投資を全面的に引き揚げるには至っていません。

―以前からパチンコや統一教会絡みのカネが北にわたり、ミサイル開発や軍事費などに充てられていると指摘されていますよね。

93年の国会で自民党の武藤嘉文が「パチンコの金が何千億と北朝鮮に行っている」と答弁しているんですよ。業界の1割から2割くらいが北朝鮮と通じていると言われていますが、いずれにしろ23兆円という巨大産業の一角が北への送金に関与していることは間違いないでしょう。ちなみに業界団体である「パチンコチェーンストア協会」の政治分野のアドバイザーとして自民党の議員が23人、日本維新の会の議員が7人、希望の党の議員が6人、民進党の議員が4人、立憲民主党の議員が3人参画しているのですが、これには山本有二や野田聖子など大臣経験者も名を連ねています。連中は国政の場で「北朝鮮のミサイルはけしからん!」とか騒ぎながら、その裏で北へカネを送る便宜を図っているという。これが「美しい国」の実態ですよ。

―金日成は「毎年の軍事予算6000億円のうち約4000億円は日本のパチンコ業界から送金されるものだ」と公言していたそうですが。

現に自民党は「遊技業振興議員連盟」、民主党は「娯楽産業健全育成研究会」という団体を設立していましたからね。要はパチンコ業界に諸々の目こぼしをする代わりに献金を貰うシステムを作っていたわけですよ。これには警察官僚のトップも絡んでいるわけだから、公安調査庁もカネの流れを遡及できないでしょう。有名ブロガーの山田博良さんが「北朝鮮の本体は日本にある」とおっしゃっているのですが、それはこういうことを意味しているわけです。そもそも日本の政治家や官僚がパチンコ屋と一緒になって北朝鮮にカネを送り、それが核の開発資金になっている件は、アメリカの国防総省にも指摘されていますからね。

―言われてみると国際問題は腑に落ちないことが多いですよね。マスコミは一面的な報道しかしないけれど、よくよく考えると確かに矛盾したことばかりです。

例えば憲法改正議論に発展するほど北のミサイルが問題視されながら、日本の財務相である麻生太郎の出自である麻生グループが北朝鮮事業に投資をしているわけです。第二次大戦中ジョージ・ブッシュの祖父であるプレスコット・ブッシュがIG・ファルベンなどのナチ企業に莫大な投資を仲介していましたが、今の日本の政財界も同じようなことをやっているわけですよ。繰り返しますが彼らはミサイルが発射される準戦時状態にありながら、北朝鮮での合弁事業を殆ど凍結しようとしない。欧米各国だって資源開発事業を殆どストップしていないでしょ?これらに投じられた資本が間接的に核開発や兵力の増強に使われるにもかかわらず、ですよ。また先日はロイターが中国製アパレルの多くが北朝鮮製であることをすっぱ抜いていましたが、中国による対北の経済制裁も全くポーズに過ぎないということです。

―「アメリカと北朝鮮は国交がない」なんて大嘘ですね。

クリントン政権は95年頃から、対北朝鮮の経済制裁を解除しているんですよ。それまで「対敵国通商法」や「米国輸出入銀行法」などによって厳しく規制していた北朝鮮への送金、民生品などの輸出入を段階的に緩め、商船の寄港や民間機の乗入れも許可しました。それだけでなく農業、工業、石油、木材、セメント、交通、インフラなどへの投資もほぼ解禁しました。つまりアメリカと北朝鮮は20年も前から<正常な国交>を結んでいるわけですね。「狂犬のような独裁者が君臨するイカレた国」という北朝鮮像はインフォテインメント(報道番組に偽装したワイドショー)の中にしか存在しないとはそういう意味です。

―結局のところ、北朝鮮はどのような意図で日本にミサイルを発射しているのでしょうか?

様々な事情が輻輳していますが、第一の目的は改憲です。それによって戦争国家を作り、兵器産業の市場を拡大させる狙いなわけですよ。つまり金正恩は「北朝鮮がミサイルを発射する危険な状態なのだから、憲法を改正してこれに備えなければならない」という文脈作りに貢献しているわけです。言い換えるとこれは日米北の政府が共同して軍事費を引き上げるための「皮下注射モデル(即効的な世論操作)」であるわけです。実際に北のミサイル脅威論を受け、2018年の防衛費は過去最高になる見込みです。またすでにアメリカでも6兆円規模の兵器予算が上積みされています。だからこれはもう「リージョナル化」と言っていいでしょうね。つまり隣接する北朝鮮と日本の二国がアメリカの描いた絵図のとおり連携しているわけです。 (続く)


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