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北のミサイルが日本に落ちない理由 (2/4)

「北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか ―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている」の復刻を記念し、本文の一部を4回に渡り掲載します。

     <聞き手: 白馬社編集部  話し手: 秋嶋亮>

―やはり核心は経済ということですか?

北朝鮮のミサイルが日本に発射された2017年の8月、アメリカの兵器企業トップ10社の株価が全面高騰していました。これはその前年にトランプの大統領就任が決定して以来最高の出来高です。周知のとおりトランプ政権の閣僚は軍事企業のステークホルダーですから、それによって彼らが莫大な配当益や売却益を得ることは容易に想像できるでしょう。それだけでなく、彼らは(北朝鮮脅威を最大に煽った論功行賞として)退官後は関連企業に天下り、法外な役員報酬を手にするわけです。これは9・11同時多発テロを端緒に当時のブッシュ政権の閣僚たちが途方もない財産を築いたのと全く同じ仕組みです。結局、いつの時代も戦争が一番儲かるんですよ。

―たまたま結果としてそうなった、ということはないでしょうか?

昨年の11月にトランプが来日して、(北朝鮮対策のため)迎撃ミサイルや戦闘機を売り込んだ際にもアメリカの軍需株は軒並み高値を更新していました。なかでもレイセオンやロッキードの株価は年初から比較すれば30%値上がりし、ボーイングやクラトス・ディフェンスのそれに至っては実に70%近く高騰していました。これはダウ平均の上昇率が15%平均であることからしても異常な爆上げです。

―逆説的に北朝鮮の脅威がなければ、これらの株価は低迷するわけです。

おっしゃるとおりです。そもそもテロリズムとは敵国が最も嫌がることをすることですよ。ところがこのように北朝鮮は敵国が最も喜ぶことをしている(笑)。現実として日米のエスタブリッシュメントは北のミサイルが発射される度に資産が増える構造です。

―当時の防衛大臣の稲田朋美なんて軍事企業の大株主でしたからね。北のミサイル発射を受け沈痛な顔で会見していましたが、それで益々配当が増えるわけだから、内心はさぞかし嬉しかったでしょう。

彼女は川崎重工、三菱重工、三菱電機、日立製作所などの軍事関連株を大量保有するステークホルダーですから、株価の上昇によってウハウハですよ。だから国民はそのような根本的矛盾をよく考えなくてはなりません。これはある意味、株主価値説(経済社会は投資家の配当を最大にするために営まれるという仮説)の証明的事実ですからね。

―いわゆる「ネオコン支配」ですよね。それほどアメリカは酷い状態なのでしょうか?

国防長官のジェームズ・マティス、中央情報局長官のマイク・ポンペオ、司法長官のジェフ・セッションズをはじめ、軍事にかかわる閣僚の全員が兵器産業の関係者です。要は戦争屋が政権運営を担っているわけですよ。そして財務長官、経済会議委員長、商務長官など金融閣僚ポストの全てがゴールドマン・サックスの出自者によって占められています。

―恐ろしい話ですね。日本の政治を決定するアメリカ議会が軍事と金融の寡占資本に掌握されているわけですから。

ちなみに財務長官は財政運営を所轄するだけでなく、金融・経済・税制を策定し、さらには通貨発行権を担い、連邦準備制度理事会や国際通貨基金の代表すら兼務します。つまり財務長官とは大統領を凌ぐ宗主国の権力なのですが、このポストは過去30年以上にわたりゴールドマン・サックス、メリルリンチ、シティバンクの出自者(あるいはそれらの関係者)による交代制なのです。そして彼らの投資物件として兵器メーカーが連なるという構造です。

―ミサイル問題はヤラセと断定してよろしいのでしょうか?

僕の見解としては間違いなくヤラセですね。軍産金融複合体はアメリカの議会を睥睨するだけでなく、支配地域の政治をも決定しているわけで、そのような世界的な権力構造に北朝鮮も日本も与しているということです。つまり北朝鮮を「ならず者国家」に仕立て上げ軍需を奮起することにより、兵器企業や投資家がボロ儲けしようという魂胆でしょう。つまるところ北朝鮮のミサイル騒動とはトランスナショナル・ポリティクス(多国間に跨り連携する政治)の所産なのです。

―国連が介入して北朝鮮問題の解決を図ることはないのですか?

国連常任理事国であるアメリカ、フランス、イギリスなどは兵器輸出国なのですよ。この三国だけで世界の武器市場の80%近いシェアを占めている。つまり国連そのものが軍産金融複合体であるわけです。だから彼らは紛争を収束させるのではなく、真逆に煽り立てることにより兵器産業の利益を図る立場なのだと捉えなくてはなりません。

―戦争経済の枠組みから北朝鮮問題を捉えなくてはならないと。

重要なことは目的論において北朝鮮を検証することです。つまり何のために、どのような目的で、北朝鮮という国が存在させられているのかという視点が重要です。

―さきほどおっしゃられたように、「ならず者国家」を演じて日米の軍事費を引き上げるのが北朝鮮の役目だということですね。

そのとおりです。ちょっと専門的な話になりますが、これについてはI・ウォーラーステインの「世界システム論(世界が支配国と被支配国の分業体制によって営まれるという説)」や、ネグリ&ハートの「帝国論(資本帝国に各国は併合された状態にあるという説)」などを知っておく必要があります。もっともそんなに難しい話ではなく、要するに世界が国家や政治という単位ではなく、資本や企業という単位で動いているという論理です。現実に日本やアメリカの政治家を見ても、誰一人として国民のために働いていないじゃないですか。増税や社会保障の切り捨てで捻出した何百兆円ものカネを、グローバル企業の減税や破綻した投資銀行の救済とかにぶち込んでいる。

―北のミサイル騒動がアメリカ、北朝鮮、日本の三国によるヤラセだという仮説を実証できるのでしょうか?

極めて蓋然性(確からしさ)の高い仮説を述べることができます。アメリカの議会には国防授権法と宣戦布告権がセットで付与されていることをご存知でしょうか?つまりアメリカの憲法は自国とその同盟国(事実上の経済支配地域)に対する脅威が認められたら、それが兆候の段階であっても攻撃してよいと定めているわけです。要は「予防戦争」を保障しているわけですね。最近のケースではリビアやイラクなどがこれによって空爆されました。いずれも「我国の脅威となる可能性があるかもしれない」という言いがかりのような理由によって戦争を仕掛けられたわけですよ。サダム・フセインなどは国連の核査察を受け入れると公式に表明していたにもかかわらず、攻撃された挙句に国を乗っ取られました。それなのにアメリカは北朝鮮に対して全く軍事行動を取らない。

―確かにおかしいです。しかし日本は独立国であってアメリカの領土ではない。だからアメリカ政府は北のミサイル問題なども不介入の立場だということではないでしょうか?もっとも今後は集団的自衛権の適用によってどうなるか分かりませんが。

いや日本はアメリカの経済領土ですよ。もっとはっきり植民地だと言ってもいい。おそらくこの構造は金融を通じないと見えてこないでしょうが。例えば上場企業やメガバンクの主要株主は欧米系の投資銀行だし、東証市場の取引の70%以上が彼らによるものです。だから東証なんてNY株式市場のセカンダリ・マーケットだと言ってもいい。そもそも今時代は各社が5%程度の株を握れば、他の株主と協調して議決権を握ることができます。そうやって外資金融は株主連合を作って東証企業を支配しているわけですよ。いいですか、株式が制圧されているということは、企業資産である土地や社屋や工場や生産設備なども間接的に彼らに所有されているということですよ。

―なるほど。これほどまでに搾取できる植民地にミサイルを撃ち込む国をアメリカが放っておくはずがないと。

そういうことです。しかも今後アメリカはSEZ、EPA、FTA、TPPなどを通じ植民地体制を強化する目論見です。そしてさらにアメリカ国債の買い取りを強制する、アメリカ系企業への補助金や還付金などの増額も要求する、アメリカ製兵器の買い取りもさらにノルマ化するでしょう。それだけでなく種子法を廃止して農業も乗っ取る、国保を骨抜きにして医療保険の市場も牛耳る、民営化によってインフラや水道も分捕ろうとしているわけです。だから「これほど途方もないカネを生む(搾取の見込める)自国の経済テリトリーが攻撃されるのを指をくわえて見ている程アメリカは馬鹿ではない」というのが僕の持論です。

―北朝鮮のバックに中国とロシアが控えている、だからアメリカは迂闊に戦争できない、という説についてはいかがですか?

昔ながらに社会主義陣営VS資本主義陣営という括りで見ているのでしょう。しかし、すでに中国もロシアも市場経済(株式市場)を導入した事実上の資本主義陣営なのですよ。中国は78年からロシアは91年からアメリカ資本を取り入れ市場化プロジェクトを推進している。しかも(労働権や福祉権など社会主義の骨格を根こそぎ解体する)シカゴ学派の指導の下でアメリカ型の経済システムを導入したのです。この意味がわかりますか?

―むしろ中国やロシアの体制はアメリカ寄りだということでしょうか?

繰り返しますが、そもそも北朝鮮が「米朝枠組み合意」に調印し、日本と韓国から核開発の資金を導入した事情とは、中露が資本主義陣営に寝返ったことなのですよ。すなわち90年代に中露の社会主義体制が解体されたことによって北朝鮮は孤立化した。だから金政権はアメリカ主導の核開発を受け入れざるを得なかったわけです。いずれにしろ現代世界において中国、ロシア、アメリカは金融市場を通じて資本を融通し合う仲間であり、多少の体制の違いはあれど同じ国家主義を推進する連合なわけですよ。

―資本に国境はない、ということですね。

ヘッジファンドはプラスとマイナスの両者に投資して必ずトータルでプラスにするんですよ。現にゴールドマン・サックスなどの投資銀行が米国陣営と中露陣営の双方に出資しているとおり、ここでもそのような第一原理は実証されるわけです。結局のところ200年も前に開発された両建構造の投資術は現代においても先端スキームなのです。

―そうやって国家の主権そのものが解体されるわけですね。

もっともすでに主権なんて無いに等しいですよ。それを解体するものとして、日米経済調和対話、日米地位協定、日米合同委員会、日米安保条約、日米原子力協定、国際連合憲章(敵国条項)、日本経団連政策評価(外資連合による政党コントロール)、主要都市の経済特区(外資の治外法権区域)化、自由貿易化に伴うISD条項(投資家の要望による規制解除)などがあります。そしてこの他にも憲法の上位法としての諸々の密約がありますから、民族社会は「体系の鎖」を幾重にも巻き付けられた状態にあると言えるでしょう。

―だとすれば自由貿易に批准するまでもなく既に主権が消失しているわけです。これでは国家など「経済的な諸関係の調整的枠組み」に過ぎないと言ってもいい。

ちなみにメルケル政権下のドイツは福島原発事故を教訓として脱原発に舵を切ったのですが、直後にISD条項が発動され(脱原発が投資家の利益を妨げるとして)38億ドルを賠償請求されました。このように、自由貿易体制とは資本が相手国の民意を粉砕することと同義であるわけです。何度でも繰り返しますが、過去の事例からいずれ日本でも反米(反多国籍企業)運動が起きることが分かっている。だからそれに先立ち暴力政府を樹立し弾圧法を整備するわけです。現に60年代の安保反対運動などは事実上の内戦に発展するほど過激化しましたから。言うなればこれは予防対抗暴力なのです。 (続く)


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