「しきたり」

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▼キャラクター・設定


・井鳥 恋(いとり れん)
家は由緒ある神社の神主家。恋はその三男。
神社に伝わる「神楽舞(かぐらまい)」という神事を、
井鳥家の巫女が代々執り行う事になっている。
しかし、当代では井鳥家に娘が生まれず、兄弟の中で一番中性的で目鼻立ちが整っている恋が、神社のしきたりとして、女性として振る舞い巫女を務めている。


▼本文


【夏祭りの神社の境内にて】

(主人公が恋に近づいて来る)

(恋が主人公に気づいてバツが悪そうな顔をする)
っ…。

(主人公:よ。)

何だよ…。
冷やかしなら帰ってくれ。

(主人公:よく似合ってるぞ、それ。)

うるさい。
俺だって、好きで巫女服なんて着てんじゃねーよ。
お前だって知ってるだろ?
うちの神社のしきたり。

(主人公:神楽舞…だっけ?)

ああ…。
父さんと母さんの間に、一人でも娘が産まれてたら、
俺も女として振る舞う必要はなかったんだけど…。
お生憎様、うちは三人とも、みーんな男だったからな…。

でも、それに関しては仕方ないと思ってる。
産まれてくる子供の性別なんて、
コントロール出来っこないし…。

兄弟の中で、女としての役割が務まりそうな顔立ちしてたのは、
俺ぐらいだったしな。

(主人公:でも今、完全に男の口調じゃん。)

ん? 口調?
(少し笑いながら)ああ…、
お前の前では良いんだよ、別に。
うちの事情も知ってるし。

他のやつの前では、ちゃんと女らしい口調で喋ってるよ。

(主人公:どんな感じで?)

(咳払い)んっ、こほん…。

(わざとらしく女性っぽく)初めまして。
井鳥神社で「神楽舞」の巫女を務めさせて頂いております、
井鳥恋と申します。
どうぞよろしくお願い致します。

(主人公が爆笑する)

(呆れ顔で)…おい、こっちは真面目にやってるんだぞ。
いつまで笑ってんだ…。

(主人公:ごめん、ごめん。)

(呆れ気味)ったく…。

(しばらく無言)

(大きなため息)はぁ…。

(主人公:どした?)

いや…、カップルが多いなと思って。

(主人公:羨ましい?)

うん、まぁ…、羨ましくない、って言ったら、嘘になるかな…。

別に、恋愛を禁止されてたわけじゃないんだけど、
女として生きる事を求められてたからさ…。
なんも気にせず、普通に恋愛できるのは良いなって思うよ。

(主人公:というか、付き合うとしたらどっちなの? 男?女?)

はぁ?
そりゃあ、俺だって元は男なんだから、
付き合うんだったら、女に決まって…、(考え込む)

(少しの間)

…あれ、どっちなんだろ…。
なんか、自分でも分かんなくなってきた…。

(呆れ笑い)はは…、やば。
今一瞬、男と付き合うのもありかも…って思った…。

(主人公:じゃあさ、俺と付き合える?)

(少し笑いながら)はぁ?
何言ってんの?
お前となんて付き合えるわけないだろ。

(主人公が無言で恋を見つめる)

…え? 冗談、だよな?

…いや、なんか言えって…。
急に黙るなよ…。

(少しの間、気まずい空気が流れる)

…お、お前は逆にどうなんだ?
(動揺して一人称を間違える)わたし…、あ、いやちがっ、
俺と付き合えるのか…?

(主人公:余裕で。)

ほんとに?
マジで言ってる…?
男だぞ…、俺…。

(主人公:大マジ。)

マジか…。

(主人公:俺のこと嫌い?)

(焦る)あ、いや、お前の事が嫌いとか、
そういうんじゃなくて…。
色々と追いついてない、っていうか…、なんていうか…。

そのー…、
お前は今まで、俺の事…、女として見てたのか?
それとも、男として…?

(主人公:恋として、見てた。)

(ドキッとする)っ…、そっか…。
…。
……うん。

(目を逸らしながら)…じゃあ、さ。
試しに、一週間だけ…、付き合ってみる…か?

(主人公が恋に抱きつく)

(びっくりして、恋が女の子モードになる)

(女の子らしい悲鳴)ひゃっ!
な、なに…?
どうしたの?

(主人公:一週間じゃ足りない。)

…え? 一週間だと少ない?
だったら、一ヶ月とかにする?

…え?
もっと…?

(主人公の勢いに押される感じで)あ、えっと…、その…、
はい…、よろしく、お願いします…。

(終わり)

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