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旅での出会いが日本の日常も少し楽しくしてくれる 【だから旅は、やめられない #8】

〜だから旅はやめられない #8
旅での出会いが、日本の日常も少し楽しくしてくれる
なおこ(43歳・会社員)

旅で出会った思い出に日本で触れた時、いつもの日常が少しだけ違う日常に見えたり、少しだけ楽しくなる。これが、私が旅をやめられない理由です。

私の思い出に残る旅は、2016年7月の北欧ヴィンテージ食器買い付けごっこの旅です。

ヴィンテージ食器好きが高じて、自分で買い付けごっこをしてみようとフィンランドへ一人旅。それまでは、有名な観光地を巡ってガイドブックに載っている場所に行っては写真を撮るだけのスタンプラリーみたいな旅でした。もちろんそんな旅も楽しいのだけど、違う一歩を踏み出してみたくて、一人でフィンランドへ向かいました。

とはいえ、素人の買い付けごっこ。どこで何をどうやって買うのがいいのか、さっぱり分かりません。事前に調べて行ったヘルシンキのアンティークショップを巡っても、なかなかこれぞと思うものには出会えませんでした。

そんな中、どのアンティークショップにも貼ってある緑のポスターが目にとまりました。

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調べてみると、どうやら、郊外でヘルシンキ最大級の“蚤の市”がやっているらしい。こんなタイミングでヘルシンキに来ているなんて……このビッグウェーブに乗るしかない!

しかし、蚤の市についてネットで調べてみても日本語ではあまり情報がなく、ホテルのフロントのお姉さんに聞いてみても、「日曜日はバスがないから、うまく行けるか分からないよ」と言われる始末。それにもめげず、とりあえず行ってみようと、翌日、朝イチで特急のチケットを買って、ヘルシンキから電車で1時間くらいかけて郊外の街へ向かいました。

「バスはないよ」と言われた駅で、偶然出会えたタクシーに乗ることができ、蚤の市の会場へ。着いた会場は、もう夢のような空間でした。ヴィンテージ食器を扱うお店がところ狭しと並んでいます。日本人がほぼいない会場で、半日以上は会場の中をうろうろしていたため、お店の人にも「また来たね」と笑われます。それでも私にとっては、限られた予算と、持ち帰ることができる重さとの戦い。そう、食器はかわいいけど、重いのです。

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そんな中、私の好きな食器をたくさん取り扱うご夫婦のお店に出会いました。

「よし、このお店で選ぼう」と、たくさん並ぶ食器の中から、私が持ち帰りたい食器をじっくり選びます。「これください」と伝えると、「この食器は昨日まで私が食卓で使ってたのよ。あなたはセンスがいいわ」というようなことを微笑みながら言ってくれました。丁寧に食器を包み、まとめてくれた紙袋の中の食器たちに向かって奥様は呪文のように何かを伝え、私ににっこりと手渡してくれます。そして帰り際、「また来年会いましょうね」と手を振ってくれるご夫婦。

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ここで出会った食器を日本で使うたびに、フィンランドの空の下で、この食器は何十年も食卓を彩ってきたんだな、とあのご夫婦の日常を感じます。

旅で出会った思い出に日本で触れた時、いつもの日常が少しだけ違う日常に見えたり、少しだけ楽しくなる。これが、私が旅をやめられない理由です。

私は、まだ知らない何かに出会うために、旅に出ます。そして、旅で出会った思い出に日本で触れるたびに、いつもの日常も少し違うものに見えてくるので、それが楽しくて旅がやめられなくなるのです。

次の旅ではどんなことに出会えるのだろうと、わくわくしています。

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