【高年法マスター★安元弁護士】

※2017.9.8の記事です。

自慢じゃないが,僕は九州で最も高年法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)で闘っている弁護士である。
一時は「高年法4部作」と称して(笑),ヘビーな高年法訴訟を4件同時に進行させていた。
法廷はいつも高齢者の傍聴でいっぱいである。

2件は既に和解で終了。1件は高裁の一部勝訴判決を経て最高裁係属中。
本日は,4部作最後の事件の高裁判決だった。
3件目のエリート裁判官が書いた高裁判決の理論を踏襲しながら,さらに議論を進めてこちらも一部勝訴でした。

正直,公法私法2分論の下,就業規則がよほどカチッとしている事案でない限り,地位確認請求がほとんど相手にされない現状にもどかしさはあるけれど,
この4部作を通じて,弁護士泣かせの高年法の,少なくとも継続雇用場面の損害賠償請求については,かなり前進したと思います。

今日の高裁判決は,
・継続雇用の場面においても,当該定年の前後における労働条件の継続性・連続性が一定程度,確保されることが前提ないし原則である。
・例外的に,定年前後で継続性・連続性に欠ける(あるいはそれが乏しい)労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには,同提示を正当化する合理的な理由が存することが必要である。
と規範を立てた上で,
本件では賃金低下を正当化できる経営上の合理的な理由がなく,その裁量権を逸脱又は濫用したもので違法と判示しました。
継続雇用場面の労働条件について,裁判所が正面から汎用性のあるまともな規範を立てたのは,たぶん初です。

労働者にとっても,使用者にとっても,野放し状態の現状より,はるかに良いことだと思います。
使い方次第で,今後の高年法の実務・立法を大きく変える可能性を秘めた判示です。

最近,継続雇用時の労働条件提示について会社に裁量があることをいいことに,
「辞めさせたい労働者には,継続雇用時にバカほど安い賃金を提示して,自分から辞めさせてしまえ〜」というのが流行りの手法ですが,
少なくともそんな悪徳なやり方は違法と断ずることになります。
自分の経験で振り返っても,受任に至らなかった相談で,この規範使えたな〜というのがいくつも思い浮かびます。
そういや,組合と弁護士とでタイアップして,高年法の大規模相談会とかやってもオモロイかもね。

まー,それもこれも当事者として何年も闘ってくれるおじちゃん,おばちゃんがいてくれるからです。
あと,そんなおじちゃん,おばちゃんが暗い顔にならないよう支えてくれるお節介な支援者がいてくれるからです。
本当に感謝しますし,リスペクトします。
引き続き,がんばりましょう。

なにより4部作の事件間でキャッチボールしながら議論を進めるなんて,事件数がないとできないもんね。
高年法の事件がこんなにたくさん起きるだなんて,北九州の労働組合の高齢化ゆえになせるワザだ。

組合の高齢化,バンザイ!(結論)

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