しあわせな週末の午後の過ごし方(あるいはある活字中毒者の行動療法)


Photo by mariannehope

■たとえばそれは新宿の紀伊國屋で.
駅からダイレクトに入るクラシカルな煉瓦の壁をみながら
(むかし地下にあった ぼてじゅうはおいしかったなぁ)
壁に貼られた村上春樹さんの新作イベントの案内などをみる.
(本人がいないのに楽しいのだろうか)

■まずは2階の新書のコーナーへ.
ハードカバーの装丁をじっくり眺めて英気を養う。 
いろんな本が....こんなにいっぱい......すばらしい.....

■窓際は詩歌などの棚.
ここで,角川のだした銀色夏生さんのムックをほぼ一通り読む.尾崎豊さんとの対談とか.
平凡社コロナブックスの「作家の食べ物」「作家のおやつ」などが気になる(いまみたらコロナは雑誌「太陽」からきているとのこと.)

■本屋,出版論の棚.
池澤夏樹さんの娘さん(春菜さん,ふたり揃うとお笑いみたいな名前だ)の読書案内本をみる.
祖父(渋澤龍彦)について、とかまったくずるいよな.
巻末の対談で,夏樹さんが「あなたは,小学校の卒業の時,図書館の本は全部読んだ,っていってたもんね」とう台詞が.
これって、読書好きがやりたくてまず成し遂げられない、羨ましいエピソードだ。 

■ちょっとずつずれて現代作家,エッセイの棚.
柴田元幸さんのコーナーがあって,ポールオースターの新作写字室の旅に惹かれる(前から気になっている.装丁がクラフト・エヴィング商會風なのだがその記載はない)をしげしげと見る.けど買わない.

■子供向けの古典の新訳がシリーズになるみたいで阿川佐和子さん訳の「クマのプーさん」を手にとる.
悪くはないのかもしれないが,私は石井桃子さんが好きすぎるのかも.「これをなるす(鳴らす)」という訳が大好きなのだ.
児童文学の訳者の石井桃子さんは自宅を開放して私設図書館をつくられて,阿川さんはそこの1期生だったという縁を考えると受け継いでもいいのかもしれないが.
もうとっくに絶版だけど,子どもの図書館 (石井桃子:岩波新書)にそのあたりが書かれている.

■翻訳者繋がりでいうと,朝のNHKドラマの影響で,村岡花子さんの訳本などのコーナーを多く見かける.
村岡さんも石井さんの門下生だ.立ち寄りついでにスウ姉さん のラストを立ち読みする.でも私がモンゴメリの作品で一番好きなのは丘の家のジェーンなのだ.これは見つからない.

■さて,移動.上の専門書へ.と上がったとたんにビジネス書の山.
こんなに啓発されて、勉強法があったら実践する時間なんかないだろう.お腹いっぱい.
とはいえタスクシュート時間術が平置きされているのを確認する.

マンダラートの紹介でよく引用されている考具を発見してちら読み。で視線をあげたらハイブリッド発想術があって喜ぶ。そこはアイデア、発想術の棚だったのだ.

話題になっていたクリスギレボーさんの1万円起業を手にする.(そして買わない)


いろんな人がいる.目的があって本を探している人.
ボランティアの本はないですか.
知的商材の本は.

棚の向こう側から聞こえる仲良さそうなカップル手前ぽい男女の話し声(「私 村上春樹って読んだことないんだよねー.」「俺も.」)おいおいそんな恥ずかしいことを大声で言うなよ、などと思う(偏見ですね、すみません. 思っただけです).

■ちょっと見慣れない哲学書の棚にむかう。
日本語なのに外国語のように見えるのはなぜだろう.
論理トレーニングの実物を初めて見る.その隣の隣に脳のなかの天使が.

■宗教とか、歴史とか、軍事とかを素通りしながら文庫の階に向かう
(今日はそんなに時間がないので、絵画、建築、語学参考書の階はパス)

■文庫は、新作は小さい本屋でも見られるからSFミステリー棚が一番楽しい。 
(オリバーサックスさんの妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)が文庫になっているのに驚く.
ダンアリエリーさんの著作も(でも買うならKindleだな)

■岩波,からちくま文庫への茶色表紙の流れに落ち着く.
もちろん新潮の青も好きだし.平置きさている1Q84をいつも恨めしそうにみてやっぱり今日も買わない.

あと,追悼企画の安西水丸さん,やなせたかしさん,まどみちおさんなどの特集をみて切なくなる.

■なぜか作家になった先輩さんの新作を見つけてしまう. が,やはり買わない。

■新書の棚。岩波と中公がやはり好きだ。
新学期なので 理科系の作文技術 が大きく平積みされている.
ワープロ作文技術 があったら買ってしまおうかと思ったがさすがに置いていない.

■もう一度未練たらしくオースターの棚に戻り本を手に取って棚に戻す.

■最後に人でごったがえしている一階の新刊コーナー(ここだけ普通のTSUTAYAっぽい)で週刊朝日の朝日堂の特別版を読んで最後の一文にしんみりする.

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そして表に出ると、映画館から出たときのように太陽の眩しさを感じつつ、こんなに多い人混みを久しぶりに感じる.

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とことこと新宿南口に向かいスープストックトーキョーでオマール海老のビスクとパンとビールを飲めたら, 幸福な午後の最高の締めである.(隣のワッフル屋さんも焼きたてでとても美味しい)

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