「宦官」/三田村泰助 著 さくっと感想文

2003年文庫改版発行の記載が奥付にあるから、その頃買ったんだと思う。ずいぶん長いこと積ん読しといたもんだ。

今回、来月発売される高村薫先生の新刊にあわせて、それまでに読み終わる小説を積読本置き場で探してたんだけど、みつからなかったので、ノンフィクションに帰ってきた。

やっぱりノンフィクション面白いわ。

自分の知らなかったコトを知るのがダイスキなので、私にとっては最大の娯楽。

で、この本だけど、まず、章わけがオモシロイ。

・1-2章は、宦官とは?みたいな内容
・3-5章は、漢(前漢・後漢)、唐、明の歴史と宦官について
・終章1,2は、正直あまり印象にない😓
で、ワタシ的に刮目だったのは、巻末に寄せられた寄稿(増田義郎)「世界史の中の宦官」これが実にオモシロかった!!(後述します)

とはいえ、漢、唐、明に絞って、宦官を語る試みは、なんだか学校で習った歴史を裏側というか、ちょっとナナメから見るみたいなスリリングさを備えて、絶対テストには出ないんだけど、読み始めたらやめられない、そして少しだけうしろめたいものをみるような面白さがあった。
歴史のメジャーな人たちもたくさんでてきたしね!

タブーなものへの好奇心も勿論あるんだけど、こんなに政権の中枢に入り込む宦官たちのしたたかさと、あと、専制君主制の意外な弱点を見た感じもしたな。

私は塩野七生先生がお書きになっている、古代ローマとか、古代ギリシャとかの、合議制政体(と、ひとくくりにしちゃっていいのかな。乱暴かな)にずいぶん親しんできたので、東の(ペルシャ以東)専制君主制の国々について読む機会はなかなか無かったのだけれども、古代とはいえ、宦官を含めた権力者たちの残虐さ、非道さには戦慄を通り越して呆れるほどだ。

宦官は、必ず復讐する。
目には目を、歯には歯を、のヘブライ思想(?)を正しく継承しているのは彼らかと思うほどだ。

そんななかでオモシロイと思ったのは、紙を発明して人類文化の大恩人として知られている、蔡倫が、宦官だったということ。
まあ、知らなかったのは私だけかもしれないけど、なんだか、このくだりを読んで、人類の、知への貢献の度合いが半端じゃない、ユダヤ人のことを思い出した。さっきのヘブライじゃないけどさ。
かれらもしたたかに生き抜いて現在がある。宦官は、民族じゃないから、時代がくだって、今は消滅しているわけだけれども。

で、脈絡なくつらつらと書いていくけど、巻末の、世界史のなかの宦官という項目を、かなりオモシロく読んだ。

なぜなら、私の知らないことがたくさん書いてあったから。

あの有名なインカ帝国にも宦官(というか、去勢された男たち)がいたとかさ、
シェイクスピアの作品「終わりよければすべてよし」のなかに、「あいつらをトルコ人のところに送って、ユーナックにしてやりたい」という台詞があるとかさ。(ユーナック=宦官・去勢された男)
西欧は、宦官制度はなかったけれども、奴隷市場で、そういう男たちを「生産」し、輸出していた、とかさ。

で、なぜか、日本にだけ、古くから、後宮だの大奥だのがあるわりに、宦官制度が生まれなかった、ってとこで終わってる。

おそらく学者先生がお書きになったのであろうこの本は、時にどこかからか(勿論専門書でしょうが)引用したものそのものに思える文章もあるのだけれども、推測や思惑で書いていないので、私の好奇心を満たすには恰好の本だった。

てわけで、楽しく読みおわった。
次もノンフィクションが続きます🍀



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