ユージニア(恩田陸/著)ネタバレ感想

地方都市K市の、代々医院を営む名士・青澤家で、祝いの乾杯の直後、家族、近所の人等を含めた17人が毒殺された。
三ヶ月後、近所に住む青年が自殺したことで、捜査は終息を迎えるが、数十年後、再び関係者が語り始め、事件は新たなの展開を見せ始める。

という感じのあらすじなんだけど、とにかく読みにくいことこのうえない。文章が平易なので、するするとは読めるが、平易な文章=必ずしも良い文章ではない、ということをこの小説で教わった気がする(笑)。

14章からなるこの小説、章がかわるたびに語り手が変わり、主語がない章も多いため、誰が誰のことを言っているのか意味不明な場面がかなり多い。

場面の情景描写は素晴らしいが、
なんか、それ(情景描写)だけでミステリーに仕立てようとして、壮大に失敗した小説という気がする。

これがミステリでさえなければ、私はもっと楽しんで読めたのではないかと思う。

ミステリの重要要素であるところの、謎解きについては最後まで曖昧。

当然、犯人は? 動機は?
ということが最後に語られるのであろうと期待して読み進めたわけだが、最後までスッキリしなくて、もうー、なんかモヤモヤする。

かといって、ブンガク的に面白いかと言われたら、それにも疑問符をつけざるを得ない。さっきも書いたように、情景描写と、それぞれの人物に関しての掘り下げに関して、なるほど、と思うところもあるが、それはあくまで、読者である私がこの小説に自分の人生や体験を引き寄せた末の感想であって、そうでなければ流してしまう場面も多々あったのではないかと思われるからだ。

私はこの小説を読んで、天童荒太先生の、「永遠の仔」を思い出した。
あの小説は、あれほど児童虐待という社会問題に深く入り込み、何度も心揺さぶられ、人間とは、ということを深く考えさせられた小説だったが、最後の最後で、ミステリとしての仕掛けが用意されており、なんとエンタテイメント小説としても上質の小説に仕上がっていた。
(あの小説が、直木賞を逃したのはまさにそのエンタテイメント性に原因があるような気はするが、賞なんか獲得しなくても、面白いものは面白いから良いのだ)

なぜこの小説と比べたかというと、なんとこの「ユージニア」も、日本推理作家協会賞という、かなり権威ある賞を獲っているから。

まあはっきり言って、嘘でしょー?って感じだけど、あれかね、審査員や編集者の方々、よくあるミステリに飽きてしまって、こんなトンデモミステリを推してしまったのかね。

とはいえ、良い勉強にはなった、
マジで。

こんな小説は書かないぞっていう意味でな!

そして今回も、どこから目線な感想文でした。どうも失礼しました。


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