「歪な日常」さくっと感想(ネタバレあり)

平凡な学校風景が幕開きで、暫く退屈な高校生(だと思う)の「歪な日常」が続くが、物語中盤ぐらいから俄然目が離せなくなる。

現代で廃人→植物人間になってしまった主人公(パンフレットに役名の記載がないので、あっさり忘れました)の意識は、彼の過ごした高校時代に居て、その時期に亡くした、好きだった幼馴染をなんとかして救おうと奮闘している。

奮闘というのは、時間軸のなかで同じ行動を繰り返し続ける、「ループ」という行為に現れ、それを繰り返している限り、リアルで彼の意識が戻ることはない。

最初の立ち上がりからこのへんの説明のあたりでは、正直「ラノベか、ファンタジー小説かよ」と思ったんだけど、リアル世界の住人であるところの、刑事や、主人公の成長した弟、死んだ幼馴染の成長して刑事になった妹が出てきてからが、面白い。

そして、幼馴染の死の真相が語られる場面は、幕開きのときの、いかにも小さい小屋でやりそうな台詞回しとの振り幅が大きく、引き込まれた。

愛する人を、自分だけの世界に閉じ込めてしまいたいという欲求は、とても共感できる題材として同人誌含むあちこちで見ることが出来るメジャーなものだとは思うけれども、そっち側へ行ってしまう幕切れの唐突さが、気に入った。

主人公の過去の人間関係は、最初語られた以上に実は複雑で残酷だ。

そのなかで精神のバランスを崩した(と、私は解釈している)幼馴染が、彼女を愛する主人公の手で殺されなければならない理由が哀しい。

救いのないラストではあるが、誰かを愛することに、生きるすべてをかけた主人公の姿は、清々しく真っ直ぐに見える。

そしてその愚直さの犠牲になった人の悲劇もちゃんと描かれていて、観終わってみれば、地に足をつけた良い芝居だったと思った。

…で、難を言わせて貰えば、主人公の幼馴染役の技量が他の役者に遠く及ばず、他の役者も台詞の言い間違いが散見されたりして、ちょっととっちらかった印象に終始したことかな。

骨太な脚本だっただけに、そこは残念だったな。

あと、暫く芝居そのものを観てなかったせいか、いかにも芝居という感じの、台詞を何度も何度も繰り返す表現や、まるで音楽のように台詞を被せていく表現に、ちょっとアレルギーを感じたな。

それから(まだあるんかい!)、ちょっとエピソードが、もうひとつ整理されてれば良かったかなあと思った。

45人だかの植物人間のエピソードって、必要か…?

まあ、そんなわけだったけど、イイ点つけてもいい芝居かとは思った。

某FBに記載があった、今年一番面白かった芝居 とは思わなかったけどね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?