閉鎖病棟/帚木蓬生(ネタバレあり感想文)

精神病院の閉鎖病棟で暮らす人々の群像劇。
私もついこの間、精神科閉鎖病棟から退院してきたばかりなので、興味深く手に取った。

構成が、最初の三章を使い患者の入院前の様子を描き、後の大半を使って入院患たちの日常を描く。そして後半だいぶたってから事件が起こり、物語は急転直下、ラストシーンに向かう。

何度も何度も言っているのでアレなんですが、ただ数字で場面を変えられても、まるで暗闇の中を歩かされているみたいで、すこぶるヤなんですよね(個人の見解です)

とはいえ、第何章〇〇と書くのが嫌な作家さんなのかもしれない。

でもさ、最後の項目24ですよ。これは四章ぐらいに分けたなかに入れてくれれば、もっと読みやすかったなー。

裏表紙や書評には「〜そんな境遇なのに、明るく生きようとする患者たち」とある。
私の感覚だけど、明るくしようとしてるんじゃなく、あの環境に安心しているんだと思う。

いろんな患者さんが居たけれども、私が居た病棟は、看護師さんはじめスタッフはきめ細かく迅速に対処してくれたし、穏やかな患者さんが集まってお喋りするときは、とても安心していたと自分で思うので。

で、よく分からなかったのは、時代。
最初の章で、終戦から2年後という記述がある。
で、そこである事件があり、35年後が物語の舞台となっているようだ。

ということは、1982-1983年ぐらい、なのかな。
なんだかですね、いつの精神科を描いているのか分からなくて、ちょっと混乱した。

みんなで近くの山まで行くシーンとか、とても美しく暖かく心に残るんだけど、患者だけでこんな外出出来る環境って、いつの話?とか、看護師さんを看護婦さん、ナースステーションを詰所、などと読んでいるところから、コレ戦前の話なの?とも思った。

私は結構どんな時代のどこの地方を描いているのかシッカリ頭に入れて読みたい方だから、途中、かなりモヤったな。

かなり細やかに病棟の様子を描いてるんだけど、やはり、時代がよくわからないために、現実感を伴ってぐさりとは入ってこない小説だった。

でも、そこで語られている患者さんたちの人生は壮絶だ。
病気がまるで悪魔のように患者を操り、残酷な事件と過酷な運命を引き受けさせる描写は、やはり、この小説を読むという体験をして良かったと思った。

ただ、再度言うけれども、これは現在の閉鎖病棟の話ではないと思う。


だからこそ、私はラスト近くの法廷シーンも、少しウエットに感じてしまった。

終わりです。



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