レミゼラブル2021版みてきた(長いよ)
2021/6/18 13:00開演。二階センターブロックにて観劇。
いきなりですが、、始まってすぐなんか違和感が…?と思ったら、回り舞台が無くなってた!!!
帰宅してからネットで調べたら、2013年の新演出公演からなくなったらしい。てことは、2013年の前2011年以来、レミゼ観てなかったってことか。(上原理生さんのアンジョルラスを見た覚えがあり、上原さんは2011年から参加ってパンフに書いてあったから)
いやーびっくりしたなぁ。
まあ、回り舞台問題はあとで触れることにして、はじめっから感想書いてくよ。たぶん長いよ。
すごく高性能なマイクのせいか、声を良く拾ってた。オープニングの囚人たちの歌の中で何人かのソロがあるんだけど、めっちゃ響いてた。そりゃ、私が一番みていた1997~2000年頃に比べれば、技術は格段にあがってるだろうしねぇ。よって、OP「囚人の歌」も迫力満点。みんな頑張って櫂をこいでおりました。(新演出は海での労働。映画もそうね。因みにご存じの方も多いとは思いますが旧演出は石切り場)
そのOPソロで、♪主よ、主よ、殺してくれ♪と歌うのが、たしかジョリ(学生)役の人だったと記憶してるんだけど、高音がすごく響くフレーズなんだよね。今回の人もそうで、この声なんだよなーとなんだかじーんとしてしまった。
アンサンブルといえば、レミゼラブルはアンサンブルのミュージカルと言われているけれど、それぞれ声質も演技もキャラクターもいろいろで、本当に見甲斐があるんだけど、とにかくアンサンブルの歌唱力たるや、あの頃よりめっちゃ向上しててすごく感動した。以前(以前の話ばかりするな)はプリンシパルにスター俳優を置いて、アンジョルラスの♪ブラック 夜のお~わ~り~!♪の超高音を一生懸命出している俳優さんが殆どでさ…。←ディスってるわけではない。その頃のレミゼラブル大好きだから。そこに怪物・岡〇二郎のアンジョルラスが出て、その突き抜けるような声にびっくらこいたのを、ついでに思い出したわ。
閑話休題。今回のレミゼは今月から幕を開けているわけだけれども(プレビューは含まず)全体に曲のテンポが早いと感じた。イマってこうなの?大体は千秋楽に向かってテンポが早くなっていくので、今からこんなんじゃ大楽の頃どうすんじゃといらぬ心配をしてしまった。走り過ぎてるような気もちょっとした。もっとゆっくり聴きたい場面も。
仮出獄許可証は、頭の上で三回破らないのね、新バージョン。曲の終わりに一回破ってポイって捨てる。あっさりしてんな(笑)
ついでにその話題にずれると、レミゼラブルは、ほかのミュージカルに比べてとても写実的なミュージカルだと思っていて、だからこそ、ふつうのミュージカルでの「言語」とでもいうべき、歌を「歌ってしまったり」、嬉しい表現のときに思わず「踊って」しまったりすると、すごく浮く。と思ってる。だけど、今回はすごく歌ってたし、コゼットはマリウスと会えてシェネってた…。エポニーヌも何回か回ってた。その状況下で踊るなよ。
テナルディエは橋本じゅんさん&マダムテナルディエ森久美さんのベテランコンビで、安心して酒場のシーンは楽しめた。テナルディエの店に来る二番目の客(勿論身ぐるみはがされる)、えらい面白かった。パンフの香盤表には載ってないんだけど、以前版だったらコンブフェール(学生)の役の人がやってた。でもこんなキョーレツキャラではなかった。盲目状態(杖の音がうるさい)で出てきて、椅子に座ったらいきなり靴脱ぎ始めたりやりたい放題。その間に、荷物とか、当然テナルディエ夫妻に盗られるよね…。でも歌の後半、マダムが一人みんなの輪から抜け出て、♪逢えると夢見てたプリンス それがなんだよ あいつがプリ~ンス♪から始まる夫への怨嗟(?)の歌に、女性陣はもっとマダムのもとに寄り添ってほしかったな。で、これはマイナーバージョンアップ時(ジョン・ケアードの)からそうなんだけど、全員で盛り上がったあと、シーンを残すんだよね。たぶん次に控えるバルジャンがコゼットを引き取りに来る「取引」につなげるためだと思うんだけど、これは終わったらガッと暗転して次につなげるのがしっくりくるんだよなあ(私は何様なんだ)。で、店に辿り着いたバルジャンんに森久美マダムの最初の一言「あ、お酒出せないんで」。わろた。
ちょっと前後するけど、ファンテーヌ死亡直後のバルジャンとジャベールのサシ殴り合いは、かなり臨場感あった。(若いっていいな)バルジャンは、座ってた椅子の足を武器に使わない代わりに、ジャベールの持ってた鎖(捕縛するのに使うのか、武器なのか)を奪い取って首絞める。さすがもと「力自慢の囚人(by原作)」。そんな、戦車と戦車のぶつかり合いみたいな闘いを制したのはバルジャンだったけど、緊迫感に溢れてた。(以前バージョンのジャベールちゃんは弱すぎた…)
あとバルジャンの偽物を助けるためにバルジャン本人が法廷に姿を現すシーンでは、裁判官は一人だった(以前は三人だった。たしか裁判長アンジョルラス、両端にマリウス、グランテールという意味深(←あとで書く)な組み合わせで。といっても全然喋らずただバルジャンが逃げたので慌てるだけなんですがね…)
で、パリのシーン。ここからアンサンブルたちは名前付きの学生で出てくる。ここでもう一度オープニングの「囚人の歌」を全員で歌うんだけど、♪下向け、目を合わすな♪で、パッと照明が明るくなって、全員が動きを止めて客席を見るシーンは、カットされてた。好きだったんだけどなあこのシーン。
とはいえ、今回はマチネなので、ガブローシュが本当の男の子で、その子がとっても良かった。元気いっぱいで、歌もうまくて。この子が元気であればあるほど、のちの悲劇が効いてくるんだよね。
ジャベールに「ハイ、ムッシュ!」と言って気をつけの姿勢で下手(しもて)側に去っていって、その後のジャベールのソロ「スター」の後、舞台の二階で♪大きな顔して何様気取り、仕切っているのはこの俺様だ 街は俺が守ってやるぜ 覚えておけよ(←うろおぼえ)♪が、効く。で、今日のガブローシュくんはそのあと客席に向かって軽く敬礼してくれて、かーわいい♡
上原理生さん(ジャベール)の「スター」は素晴らしかった。自信満々で順風満帆のジャベールの現在をみているような気がした。背景の夜空に星が輝いて美しかった。ちょっと飛ばすけど、反対に、「自殺」では、負傷したマリウスを背負ったバルジャンと遭遇するジャベールの佇まい、「スター」の落ち着きとは別人かと思うほど我を失い、♪あいつはどんな悪魔だ 俺を捕まえて また放すとは♪と歌う。この曲は、一幕のバルジャンが改心して生き直そうとする曲と同じ曲なんだけど、こっちは、徐々に伴奏の和音が狂っていき、ジャベールの髪は乱れ、ついにセーヌ川に身を投げる。私、ここは以前と違うデジタル効果をふんだんに使った舞台だからこその工夫で、臨場感ある身投げが描かれるのかとかなり期待していた。だ・が・、橋から飛び降りるときちょっともたついた。最初の音で落ちたように見えないと、あといくら黒い煙幕みたいな画面で隠しても、お芝居感が抜けない。そんな技術なんかなかったときは、ジャベールが思わず橋の欄干から乗り越えてしまうところから、飛び降りるまで、長い独白(歌だけど)が続き、ジャベールは息を乱し、頭のなかで生と死の狭間を行ったりしているのがよく分かった。で、♪俺には行く場所 辿る道もない♪と叫ぶと同時に、橋がさっと上に移動し、それによってジャベールが川に落ちたところを表現した。ほんとに落ちたかと毎回思うタイミングの巧さだった。あれは、きっと何回か本番をやらないと合わないんだろうなー。(と、いいつつ、2007年、2009年と公演は重ねているから、あれでギリだったりして…。だとしたら、とても残念だ…。
ちょっと戻って二幕目はじまってすぐのエポニーヌのソロ、「On my own」(素晴らしかった!!)のあと、ついに出てくるバリケードなんだけど、どこもかしこも銀色に光ってて、正直「メカかよ…」と思ってしまった。
それまでにも「民衆の歌」にも荷車使わず、省エネ(?)できたのに、ただでかいだけに見えるバリケードがこれかよ、と正直思った。もっとみんなで作った感がほしかった。そんでここが回り舞台でない最大のマイナス要因であるところだと思うんだけど、舞台が回らないから、バリケードを向こうから見ることができないのだ!!(バリケードはデフォルト、客席側に内側(学生たちが居る方)を見せているんだけど、弾丸を取りに行こうとして、ガブローシュがバリケードの外に出るシーンがあって、そこで舞台がぐるっと回ってバリケードの外側が客席側になる。そこでガブローシュは、歌いながら死んだ兵士から弾丸を取るんだけど、(♪チビ犬でも戦えるぞ♪と歌いながら、敵兵に撃たれて命を落とす)、今日のは、バリケードはこちら側のまま(当たり前だ)バリケードの向こうからガブローシュの歌声と銃声が響く。しかも、そのあとガブローシュはまたバリケードを上ってきて、上からの照明を一杯浴びながら、死ぬ。
これさー、たしかに回り舞台(しかも傾斜がついた舞台)は危険だし、誰かが転んだり怪我をしたりしたのかもしれない。あとは新演出の(制作側の目玉ということで)そうしたのかもしれないんだけど、頼むから、回り舞台だけは復活してほしい。ミュージカル・レミゼの面白さ半減だよ、マジで。このあと、学生たちは全員戦死するんだけど、「彼を帰して」のメロディーでゆっくりと再度部隊が回って、バリケードの外側には赤い革命旗と一緒にさかさまになって死んでいるアンジョルラスと、その傍らのガブローシュの姿がある。ここで客席は拍手する→もう一度舞台が回ると、もう誰もいないっていう見事な演出が観客を唸らせた。
だけど今日は、舞台回らないから、バリケードがはけたあとは、荷車に載せられてアンジョルラス(の死体)が登場し、ガブローシュ(の死体)も出てくるんだけど、誰も拍手してなかったねー。そりゃそうだよね、と素朴に思った。
闘いの最中のバルジャンのソロ「彼を帰して」は素晴らしかった。あの高音を楽々と(←勿論そんなことはないと思うけど)歌い上げた。しかもあくまでマリウスを思って、柔らかく優しく包み込むみたいな声だった。完璧。
下水道。ここでデジタル技術が大活躍。バルジャンが負傷したマリウスを背負って歩き続けるシーンを、下水道の広さと、暗さと、不気味さをうまく表していたと思う。因みに(またかよ)以前の演出は、上からピンライトがあたるたびに、バルジャンはマリウスの背負い方を変えて、時間の経過を現していた。いや、好きだったんです、このシーン。
そういえば、倒れていたマリウスとバルジャンを見つけたテナルディエのソロも良かったな。♪天国見上げても、丸い月が見下ろすだけ♪と歌い上げる声は美声だった。この方、酒場での歌のほか(マリウスの結婚式での、マダムとのデュエット)では歌唱力を惜しみなく発揮してて耳に心地よかった。
で、そこでバルジャンを見つけるんだけど、今までは、「バルジャンだ!バルジャンだ!」とびっくりしながら逃げて行ってたんだけど、今日のは、いきなり笑い出して、「世間は狭いですネ」とか言ってどこまでも余裕のあるテナルディエでした。
そのあと、目を覚ましたバルジャンは、ジャベールと再会するんだけど、このシーン、ジャベールにもうちょっと深みが欲しかったなぁ。以前やっていらした俳優さんの、哲学者みたいな横顔を思い出すなあ。
そういえば、今回の演出は、私が見てたのとは、かみしも(上下)がことごとく逆になっとったな。なんでやろ。なにかへの挑戦なのかな。マンネリになるのだけは避けたいという作り手側の気概は感じた。
で、マリウスのソロ「カフェソング」。その前の、女たちの歌の最後に、赤とオレンジ色の、光る珠みたいなのを地面に置いてはけるんだけど、そのあと、マリウス一人で登場して「カフェソング」歌い、途中で死んだ仲間たちが後ろに立つ。その演出も、今までいろいろなバージョンを見てきたけど、今回のが一番良かった。アンジョルラスを中心に、歌の後半に珠のところまで各自移動して、彼の歌が終わるタイミングで、ユニゾンで珠を取りあげる。そして全員が舞台からはける。これは美しかった。
このあと、マリウスへのバルジャンの告白があって、結婚式のシーンにつながるので、この場面のあとマリウスは早替えをしなければならないのだけれど、前は、マリウスが旅立つバルジャンを見送ったところで暗転。その間、舞台上で着替えてたのが、今回は、告白をきいたマリウスが先に退場、バルジャンは、二階の明かりがついている部屋(コゼットの部屋)を見上げ、やがて肩を落として退場。→結婚式のシーンへとつながった。これ、どうかなぁ。ここはマリウスに「だけ」真実を告げていなくなるバルジャンが肝だと思うから、前の演出の方が良かったな…。
結婚式。相変わらず華やかで楽しいシーン。ただ、テナルディエ夫妻は、マダムのドレスはともかくとして、わりとフツウの中年夫婦に見えた。あまり悪ふざけをしなかったから、というか、二人の息がぴったりで、いちいちアドリブで笑わせられたから。芸達者で大変安心してみられた。で、給仕役をアンジョルラスの人がやるんだけど(今日はちょっと確認できなかった)、みんなが躍りながら退場するとき、一番最後に変な踊りを披露してくれるのかと思ったら、二台の長テーブルを二人の給仕が片付けながら退場。これはどうなんだろう。レミゼラブルは、どこまでも写実的なミュージカルであってほしいんだよなあ。小さい小屋のストレートプレイじゃないんだから、セットは全部自動で動かすようにしてほしいなあ。
で、このシーンは、テナルディエ夫妻が、強烈な社会風刺を歌う場面でもあるんだけど、舞台奥にはけるときに、一回振り向いて♪お前らと地獄で♪。気負いすぎてもいなくて、今まで観たなかで一番良い退場だったな。
そのあと、バルジャン臨終のシーン。私はいつもここのバルジャンの台詞(この最後の言葉は、もはや歌わなくてもいいとさえ思う)♪お前は、愛した母が預けた子だ、私は、父じゃない」から、エンディングにかけては涙を抑えることができないのだけれども、今回は泣かなかったな。歌ってたしなぁ…。
全体的に、映画の演出の印象を強く感じた舞台だった。
まだまだ書きたいことはあるんだけど、一部を除いてここらでやめときます。ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。
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