FRAGILE(ネタバレあり)

2008年初版発行のBL小説。木原音瀬著。
サラリーマンの主人公がまずボヤッキーか、テナルディエ(レミゼラブル)みたいな小悪党で、こんな主人公に感情移入出来るか!と思うが(笑)、その小悪党に想いを寄せるゲイがまたそれを上回る過激派。
主人公はこのゲイの男に陵辱の限りを尽くされ、(でも悪党なのであまりかわいそうではない)、相手役のゲイは、主人公から受け続けた屈辱を晴らすように、主人公に首輪をつけ、全裸にし、会社も勝手にやめさせてしまい、部屋に拘束する。人間性を奪われた生活を強いる主人公に、だがある日一発逆転のチャンスが訪れ…。

最後までぶれない人物造形、小狡い主人公に、どこが良いのか恋するゲイのストーカー。
いろんな大変なことがあって、最後はこの小悪党のぼやきで終わる。
そう、ハッピーエンドなのだ。おどろくべきことに。
こんな終わり方があるのか。
ちょっとニール・ジョーダン監督の、インタビューウィズヴァンパイアのラストシーンを思い出してしまった。

あんなにひどい愛憎劇だったのを忘れるくらいの爽やかなエンドマークに、人生、こんなふうに(行為はともかく)、泣いたり笑ったり、敵対したり戦友になったりしながら、パートナーと生きていくのかもしれないなあと思った。

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