◇「コヴェナント」◇◆ネタバレ◆たぶん◆ありの◆感想文!◇

   例によって公開のときに見損なって悔やんでいたので、今回のアンコール上映に飛びついた〜。
 ブロマンス大好きの私、張り切って20:15からの上映に参ったのである。
 アメリカ映画(偏見かもしれんけど)なのに、あまり喋らない。軍のミッション中だから当然といえば当然なんだろうけれども、基本、必要な事以外は話さないプロフェッショナルな二人の固い絆。胸熱にならないわけがない。

 公開からだいぶ経っているからネタバレしてもあまり迷惑じゃないかと思うので簡単なあらすじを書いておく(項番はわたし目線でつけました。参考にしたのは、パンフレットのあらすじ)

① 2018年のアフガニスタン。
② 主人公ジョン・キンリー曹長の今回の任務は、タリバンの武器や爆発物の隠し場所を暴くこと
③ アフガン人の通訳が命を落としたため、新しい通訳を探している
④ 4つの言語を話せて非常に優秀だが、簡単には人の指図を受けないという噂のアーメッドを選ぶ。
⑤ 数日後、作戦中に激烈な銃撃戦が起こり、ジョンの部下全員死亡。
⑥ アーメッドと二人の退却がはじまる。(追ってくるタリバンをがんがん射殺しながら)
⑦ ジョン、足(太腿)と腕を打たれ、瀕死の重体となる。
⑧ ここからがキモで、アーメッド、木で作ったソリにジョンを載せて山道を下る。途中の村でトラックを買ったり、別の村でトラックと手押し車を交換したりする。厳しい山道を、手押し車を押したり引いたりしながら、100キロ先の米軍空軍基地までジョンを運ぶ。
⑨ 一ヶ月と一週間後、復帰したジョンは、アーメッドがあのあとアフガニスタンでタリバンに賞金掛けられて追われている情報を得る。
⑩ なんとかビザを発行してもらうように移民局に電話したり手続きを踏もうとするが、お役人たち全然駄目。ジョン何度もキレる。
⑪ ついにジョンは、自力で再びアフガニスタンへ戻ってアーメッドを見つけにいこうと決意する――。

 まずぶったまげたのが、瀕死のジョンを、アーメッドが、最初は自分で作ったソリ(なんか立派なやつ)で運ぶところ→村に寄るたびに人々と交渉し、薬と水と食料を買って、→更にトラックを買う→だけどそれは返ってタリバンにみつかりやすいと別の村で言われて、車と手押し車とを交換して→そこから手押し車にジョンを載せての逃避行が延々と続くところ。しかも時々タリバンに追い詰められて応戦したりしながら。(当然のことながら全勝。なんなのこの人の有能さって!)
 道路は全てタリバンが検問やってるから山を行けと言われて、山道の悪路を、成人男性、あと薬とか食料とか抱えて、押して行くんだよ!! 100キロ先の米軍基地まで!!
 途中どうしても轍か何かに車が嵌まり込んで上がらない。アーメッドは心身ともに疲れ切っている。→岩場に座り込んで、泣く。
 このシーン、すごかった。めっちゃ良かった。
 そういえばその前に、ジョンが部下全員を亡くしたときに泣くシーンがあるんだけど、止めようとしても頬を落ちる涙を、歯をくいしばって耐える。とにかく耐えた。これも良かった。
   そのときアーメッドは近くで彼を見ているが、「かける言葉が見つからない」。でも何度も何か言おうと口を開きかけ、そして閉じる。その繰り返し。これも良いシーンだった。

 で、さっきの、アーメッドの泣くシーンは、彼も疲労困憊な上、今の自分の力ではこんな道ひとつ上がれないのか、っていう焦りとか悔しさとか情けなさとか絶望とかが一気に弱った心に溢れてきたんだと思う。彼は非常に優秀な男なんだけど、そんな彼が絶望にくれる姿は痛ましかった。
 でも、仕事の出来る男は絶望の淵にいつまでも沈まない。身体を休ませた後で、再び手押し車に向かう。渾身の力で押す。動いたぁ!! ジャン・バルジャンか。
 で、なんとかそのあとは荷車を押したり引いたりしながら、基地までジョンを送り届けるのだ!すごい、なんて仕事が出来る人なんだろう。
 
 で、ここで言わば一幕が終了。二幕になると今度はアーメッドがタリバンに追われている。
 一人で助けに行く覚悟を決めて再びアフガンに向かうジョンなんだけど、その決意を固めるまでに、彼の頭のなかでは、重症の彼を歩いて運んでくれたアーメッドの姿や、敵との銃撃戦や、家族の姿が繰り返し繰り返し流れ、苦しむ。
 やがてアーメッドの安否しか頭にのぼらなくなった彼の言い草が「呪いをかけられた」っていうのも良かったなぁ。削りに削ってでてきた言葉って感じがして。
 で、感動の再会のシーンもすごく、さりげない。
 非タリバンの村(街?)で、ついに、車を修理しているアーメッドの姿を見つけたジョンが、慎重に近くに彼の行って壁に寄りかかり、しばらく彼を見た後で、話しかける。
「この辺りは犬が多いな」これだけですよ。
 で、びっくりしたアーメッドは、物言わぬ深いアイコンタクトのあとで、ゆっくり車から離れ、椅子を持ってきて近くに座る。彼が返した言葉が「その服(アフガニスタンの服)、似合ってる」(←記憶)♡♡
 ホントに、なんというか感傷に溺れない、日本風に言うと浪花節にならない台詞とストーリー運びが私にとってはすごく魅力的でした!\(^o^)/

 で、やがてタリバン側に見つかり、銃撃戦。二人には絶対に銃弾が当たらないのに、彼らが撃った弾は必ずタリバンにヒットするというね。まあ、そうだよね。
 でもついにジョンの銃の弾が切れ、もはやここまでか! ってなったそのときに、米軍のでっかい輸送機(?)何?何ていうのかわかんないけど、空いっぱいに出てきたよ〜、でかい灰色の鉄の塊が。どうもー、俺達アメリカ空軍で〜す!って言いながら。(言ってないけどね)
 んで、まるで虫けらの如く、空からレーダーで地上のタリバン達を銃撃する。ほどなく彼らは全滅。
 このシーンはもう、はいはいって感じなんだけど、やっぱりあまり好きなシーンではなかったな。
 すごく一方的な殺戮シーンだから。
最近「福田村事件」を観たし「鬼太郎誕生・ゲゲゲの謎」観て、そこから「総員玉砕せよ!」(水木しげる・著)とか読んだりしたから余計に、圧倒的な武力をもって空から打つ画(え)は嫌だなと思ってしまう。
 故・石原慎太郎氏も、なにかの折に第二次世界対戦末期の本土空襲のことに触れて、「あいつら(←爆撃機に乗っていたアメリカ人パイロットのこと)、ニヤニヤ笑いながら(子どもだった)俺達のことを狙ってきやがった」と苦々しい顔で言っていたのを思い出す。
 だから、ラスト近くの、タリバンは悪人で、悪い奴らを我々アメリカ人が懲らしめました的な銃撃戦のシーンは、とても嫌い。(もっと言ってしまえば、最初の戦闘シーンなんか、アメリカ軍、全員同じような保護色の戦闘服着て戦ってるから、誰が誰やらさっぱりわからんかった。それを防ぐための、リッチー監督が命名したのであろう(?)JJとかジャックジャックとか、なんかそういうわかりやすい名前だと思ったけど、やっぱりわからんものはわからんかった)
 とはいえ、アメリカ映画だから、タリバンの描き方もそうなって当たり前なのかもしれない。

 だけれども、ラストシーンには「アフガニスタン人の通訳とその家族300人以上がタリバンによって殺され、今もなお、数千人が身を隠している」というテロップが流れる。

 声高に戦争反対とか、友情とか、そんなことを叫んでいる映画ではないけれども、善の行いをした人とその人達の絆が丁寧に描かれていた映画だったと思う。(ウチの実家のお寺さんの言い方を借りれば、「よい功徳をなさいましたな」になる)
 でも、改めてネットに転がっている劇評を見てみると出てくる、「社会派ヒューマンドラマ」という宣伝語句はどうかなぁとは思った。
 ヒューマンドラマはその通りかと思うけど、社会派は抜いてもいいんじゃないか。むしろ抜いてほしい。敵であるタリバンの事情が何一つ(通訳という特殊技能を持った人々以外)描かれていないのに社会派はないでしょ。
 ブロマンスあり、ドンパチありの、今世紀の戦争映画ってことでいいんじゃない? 
 なんて私が言うことでもないんだけど。


終わりです。

 

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