【2023年更新版】ほんとあてにしないほうが良いイラスト講座
ときどき、イラストを描き始めた人から質問をいただくのですが、自分も初めてイラストを描き始めたときはそんな風に悩んだこともあったなぁ〜と思う質問もあり、ちゃんとまとめておくと他の人にも役立つんじゃないかと思い、noteにまとめてみることにしました。
僕自身はデジタルイラスト自体をちゃんと描き始めたのはほんの4~5年前からで、年に数枚程度しか描いていませんが、絵やデザインの世界に入って17年生きてきました。
イラストの仕事をしているわけではありませんが、趣味で気が向いたときに描いています。
では早速ですが、寄せられた質問への回答をまとめていってみたいと思います!
Q.1 絵を描きたいな〜、で終わってしまう
絵を描いてみたいなと思うこと、創作意欲が湧いてくるのは人間にとって自然なことです。
特に今はいろんな絵や創作物に気軽に触れられるようになりました。
たくさんの人の想像力に触れてたくさんインプットすると、その分アウトプットしたくなりますし、そうしないと悶々としてストレスがたまったりもします。
とりあえず「良いな」と思った絵を線だけでトレースしたりするだけでも、思ったより心がすっきりするのでオススメです。
Q.2 なんの筆をどのくらいの太さで使っているの?
色塗り編
あくまで個人的に使っているブラシですが、Photoshopに最初から用意されている……
ハード円ブラシ
ソフト円ブラシ
主にこの2種類を使っています。
ハード円ブラシについて
基本的にはこのハード円ブラシを使って描いていくのですが、少しだけ設定をいじっています。
上の画像の「やわい」「かたい」を見比べてもらうと、微妙に雰囲気が違うのがわかると思います。この2種類を描くものによって微妙に使い分けています。
ちょっとした違いですが、タッチにかなり差が出るのがわかると思います。
こちらのイラストで、実際にどこにどのブラシを使っているかを見ていきましょう。
やわいハード円ブラシ
人物のように微妙な陰影や、形が連続していて色味がグラデーションしていくような場合、やわいブラシのほうが色が馴染みやすいです。
ただし、アニメ塗りをしたい場合はかたいブラシのほうが良いと思います。
かたいハード円ブラシ
かたいブラシは、パキっとした面を描きたいとき、主に建物や細かな装飾品を描くときに使っています。ハイライトやリムライトみたいなパキっとさせたほうが見栄えが良い部分でも使います。
建物のように形がパキっとしたものは、やわいブラシで描くと最終的な仕上がりも全体的にボヤっとした感じになりがちです。
ただし、ここはこういうブラシで描かないといけない!という決まりはないので、どんな風に仕上げたいかで考えます。
やわいハード円ブラシのブラシ設定
やわいハード円ブラシはこんな感じでブラシ設定しています。各設定項目の意味は別に知らなくてもいいですが、ブラシ設定をちゃんと勉強したい!という人は下記など見てみると良いと思います。
ソフト円ブラシについて
ぼやぼやっとした感じのブラシで使いどころが限定されますが、とても効果的なブラシです。
イラストのなかでどんな風に使われているか見てみましょう。
ボケボケのブラシは特に柔らかい部分など、フワっとした形を描きたいときに使ってます。
あとは、例えばいろんな色を使っているとまとまり感がなくなってしまうことがありますが、そんなまとまり感を持たせたい(トーンを整えたい)ときに、ソフト円ブラシを最大サイズ、ボケも最大に設定して、ぽんぽんと色を置いて整えたりします。
整えた後のほうが、より光に包まれている感じが出ていると思います。
線画編
主線を描くときは、どんな絵に仕上げたいかを意識して選ぶといいと思いますが、僕の場合はだいたい下記のような感じです。
鉛筆系
丸ペン系
Gペン系(ハード円ブラシ)
鉛筆系なら…
水彩画風に仕上げたい場合などは、鉛筆系のブラシを使うと雰囲気が出て良いと思います。
丸ペン系なら…
くっきりとした均一な線で仕上げたい場合は、鉛筆よりも丸ペン系のブラシが良いと思います。
Gペン系(ハード円ブラシ)なら…
全体的に馴染んだライン、抑揚のあるラインを描きたい場合は、色塗りで紹介したハード円ブラシをそのまま使っても良いと思います。
鉛筆系や丸ペン系ブラシのおすすめ
鉛筆系や丸ペン系のブラシは探せばいろいろ配布されていると思いますし、鉛筆系はPhotoshopにも最初から用意されています(されていた…はず…)
自分の好きなものを使うのが良いと思いますが、個人的にはAdobeが提供しているKyle T. Websterさんお手製ブラシのものが肌に合ってる気がしています。他にも多種多様なブラシがあるのでオススメです。
この中の"Kyle's Manga - Basic"(丸ペン系)と、"Kyle's Drawing Box - HB Pencil Pro 5px"(鉛筆系)を使ったりします。
特に鉛筆系は太さや筆圧によって表情も変わるので、自分好みに調節しながら描くといいと思います。
Photoshopを使用していなくても、似たようなブラシはあると思います。あくまで僕個人の好みで選んでいるので、自分の好みに合ったブラシを選びましょう。
番外編
もう一つ欠かせないブラシがあって...
消しゴム
消しゴムを消すためだけに使う人もいますが、形を整えたりするのに必要不可欠なブラシです。特別な消しゴムではなく、どこにでもあるごく普通の、ボケみのない消しゴムです。
あとから消しゴムで形を整えるタイプなので、ざっくり色をおいてから、消しゴムでシルエットを整えたり、消しゴムの透明度を調整して、細かな陰影を表現したりします。
影や光をグラデーションで表現したいときなども、一度しっかり色をのせてから、半透明にした消しゴムで何度もこすりながらグラデーションを作ったりしています。
太さ編
ブラシの太さについては、カンバスサイズや解像度によって適した太さは変わってくるので、描こうとしているカンバスサイズ・解像度に合わせて、細かく調整しながら描くと良いと思います。
色を塗るときにはレイヤーマスク機能を使うことがほとんどだと思うので、ほぼ太さを気にすることはないと思います。
主線については、あえて具体的に言うなら例えばA4サイズ・300dpiの設定で6~14pt程度が割とちょうど良い太さになるかなと思います。
あくまで参考なので、自分の描きやすい・イメージに合った太さを見つけると良いと思います。
Q.3 何色使ってるの?
色が決まっているものを描く場合は、そこに何色の光が当たっているのかを加味した色を塗ります。
赤いものに青い光が当たっていれば紫色っぽく、みたいな感じです。
絵を描き始めたばかりの人がよくやってしまうのが、「肌色なんだから肌色で塗る!」というやつです。
例えば、下記のイラストを参考に色を見てみましょう。
人によって感覚は違うと思いますが、基本的には肌は色白な肌色、髪は金髪に見えるんじゃないでしょうか?
ですが、実際に置かれている色をピックアップしてみると、肌色に見える部分はほぼ青ですし、金髪に見える部分はほぼ緑です。
こんな感じで、物の色は光の色次第でいろいろと変わります。一般的にイメージされる肌色など、物の「固有色」というのはあくまで太陽光(白色光)が当たっているときの色、と意識しておくと良いと思います。
こうやって色を使えるようになると、物がちゃんと空間の中にあるように見えます。
ただ、僕の場合は色センスがあまり良くないので、最初はかなり適当に色を置いてます。そのあと色調補正などで色を変えて、「おっ、ちょうどいい!」という色に調整していきます。
いきなりイメージに合った色を見つけるのは難しいですが、調整しながら選べると楽ですね。
このとき大事にしているのは、自分のイメージだけでは作れなかったような色の組み合わせを発見していくことです。目盛りを動かして徐々に色を変えていくと、思いもよらない意外な色が画面を引き締めたり、より魅力的に見えたりしてきます。デジタルならではの配色方法です。
こういう感じの機能はフリーのペイントソフトでもついてると思うので、
便利なツールはどんどん使っていきましょう。
Q.4 キャンバスのサイズは?
キャンバスサイズは、絵を描くのに慣れるまでは下記を参考にしましょう。
A4サイズなどは身近にもあふれているので、「そんな普通のサイズでいいの?」と思うかもですが、アナログで絵を描く人たちの多くはこれらのサイズを基準にして描いていますし、プロのイラストレーターでも、最終的に印刷物になる場合はそのサイズで切り取られることを意識して描いています。(一般的な雑誌はA4、A5、B5、漫画はB6)
この中でも、特に汎用性が高いのはA4サイズです。
デジタルの場合、「dpi」という解像度を設定する必要がありますが、基本的には300〜350dpiに設定しましょう。(プロは基本350dpiだと思います)
上の表のピクセル数も、300dpiの列を参照してくださいね。
もちろんこれは基準であり、最終的にこのサイズを守らないと絵として認められないということはないです。完成してみて、「う〜ん、もうちょっと細長い方が良いかも」と思ったらズバっと切り捨てましょう。
アナログの世界ではオリジナルサイズの枠を作るのが大変なので、大昔からなんらかの規格を使っていますが、デジタルではただ切り取るだけでいいのである程度自由にやっていきましょう。
Q.5 レイヤー分けkwsk
かなり個人差のあるポイントです。
最低限ですが、レイヤー分けはまず.…..
線画
色
の2グループで分けると良いと思います。
更に、各グループ毎にキャラ、背景、前景、描いてある物でグループ分けしたりします。
人の目が集まる部分はより細かく描き込むためのレイヤー、後から色を変更する可能性があるところ、透明度を調整するところ、など目的に応じてどんどんレイヤーを増やしていきます。
こちらのイラストを例に見てみましょう。
例えばこのイラストの場合、各オブジェクト毎にグループ分けしており、メインとなるキャラだけでも、装飾、髪の毛、フード、服、腕、目、口など、各パーツ毎にグループ分けしています。(赤い部分)
部分ごとに位置を調整したり、色味を調整する可能性があるときは、面倒ですが細かくレイヤーを分けて管理すると、後で調整が楽です。
更に細かく見ていくと髪の毛グループの中はこんな感じで、19のレイヤーで描いています。ベースとなる色、影の色、ハイライトの色、髪が白くなってる部分、耳の部分、細かく描きこむレイヤーなど。この場合はレイヤーの表示・非表示で簡単に修正ができるようにしています。
このイラストのようにキャラ以外の背景もしっかり描いているような場合は、最終的に2~300レイヤーは使ってると思います。
レイヤーの多い少ないは特に関係なく、必要に応じて使い分ける、ということですね。
Q.6 影の付け方は?(想像力が欠けてる、どうしたらいいの!?)
初心者にありがちなのは、いきなり細かい影を描き始めてしまうこと。まずは大まかに影をつけてみましょう。
首は全部影!胸から下は全部影!腕も足も上面以外は全部影!
最悪これだけでも見栄えが全然違います。
「どんな風に影が落ちるの?」というのは、現実世界をよく観察するしかないですが、そんな面倒臭いことやってらんねーという人は、上手なイラスト(特にアニメ調がわかりやすい)を、光の面・影の面の二つだけを意識してよく観察してみましょう。
普段何気なく目にしているイラストも、「滑らかに描いてあるけど実はこっから全部影だ!!」とか、「こういうポーズしてるときはこういう影が落ちるのかぁ〜」とか、いろいろ気づきがあるはずです。
そしたら今度はその絵と同じポーズで、描きたいキャラクターを描いてみて、全く同じように影をおいてみてください。
「こういう形を表現するときにはこういう影になるんだ」とか「光の面と影の面の境目は色が濃いぞ!?」とか、「主線の近くは逆に明るい!?」とか、ここでもいろいろな気づきがあるはずです。
あと、練習するときはまずはアニメ絵を意識して描いてみるといいと思います。アニメ絵は長い年月の中で、いかに簡単で合理的かつ効果的な絵を作るかに特化してきた分野なので、「現実的ではないけど全然違和感ない、なんで!?」みたいな発見がたくさんあるはずです。
Q.7 目が描けません、どうしたらいいのでしょうか?
上手な人のイラストをよく観察してみましょう。
解剖学的にどうのこうの、という話もありますが、「目玉は球体」ということだけ覚えておけば問題ないです。あとは上手い人のイラストを真似しましょう。
自分が一番好きな絵柄のイラストの、目の部分だけを拡大して、よく観察すると良いと思います。観察しながら自分でも真似して描いてみましょう。
また、目は位置も大事です。
位置が数mmずれるだけで、顔全体の印象はガラっと変わります。
位置と同様、角度(パース)も重要です。
もちろんパースは狂っていてもいいです。上のような例の場合、左側の顔は右頬が伸びていて、目もやたら垂れ目のタヌキ顔に見えますが、右側は比較的整った顔に見えると思います。
どっちが正しいという話ではなく、わずかな位置や角度の違いで、顔はもちろん、絵の印象は大きく変わる、ということがわかってもらえたらと思います。
自分が理想とする絵になるまで細かく調整を繰り返し、自分の表現を突き詰めていくのが絵を描く楽しさの一つです。
Q.8 アタリの取り方は?
骨格や筋肉は写真で理解しよう
骨格とか筋肉とか難しい…、という人もいると思いますが、まずは描きたいポーズを自分でとって、写真に写してみましょう。
これだけである程度どんな身体の形になるのかがわかると思います。
ただ、これだけだとただの模写になりがちなので、「絵作り」を意識しないといけません。
絵作りで意識すべきポイント
人体などを描くときに、骨格や筋肉を理解しろ、とか言われますよね。美術解剖図を見て骨格や筋肉を頭に入れる・・・ってこと!?と思うかもしれませんが、そこは写真である程度合わせるとして、そこから自分なりの「絵作り」をしていかなければ、ただリアルに描くだけになってしまいます。
つまり、「絵作り」というのは簡単に言うとデフォルメということです。そしてそのデフォルメをする上で、個人的に重要だとおもうポイントがこの4つです。
重心
比率
位置
質量(大きさ)
ではひとつずつどういうことなのかを見ていきましょう。
重心
例えば、頭を少し後ろに、足を少し前にずらすと、重心は少し後ろに傾きます。
絵作りにおいては、現実的には不可能なポーズをとらせたいこともあります。その場合、写真をそのまま参考にするだけでは、現実的にはなるけど絵としてはつまらなくなりがちです。
写真では普通に立っているけど、絵としては後ろに倒れる瞬間を描きたい場合、足や頭の位置をずらして、重心がずれるように調整してみましょう。
比率
人間の身体にはだいたい基本となる比率があります。ただし、絵作りにおいてはこの比率をいじることも必要になることがあります。
例えば自分の足が短い、太っている、そもそも女性を描きたいのに自分は男、というような場合、写真をそのまま絵にしても、思ったように描けないと思います。
足はスラっと細くて長く、身体も細身で…という自分のイメージしたキャラクターの比率になるように、写真よりも足を少し長く、腕も長く、ウエストも細く…といった具合に調整していきましょう。
位置
例えば、顔が上側を向いているとき、口が前に出過ぎていると、アゴがしゃくれている人に見えます。
絵作りにおいては、特に顔などは現実とは全く違う比率・位置で描くことがよくあります。
なにが間違い、ということはありません。自分のイメージにぴったり合うまで、細かく位置を調整していきましょう。
質量(大きさ)
例えば、頭が大きいのに体が小さいとなんだか不安定な人に見えます。
どこにどれくらいの大きさのものがあるのか、は結構大事です。頭以外にも、手・足・目・口・おっぱいなど、大きさのバランスをいじることで絵作りをしていくことができます。
昔のアニメ絵なんかだと、異常に目が大きかったり、手足が大きかったり、という絵作りをよく見かけましたが、それはそれで完成された絵になっていたと思います。
デッサンが合ってなくてもいいの?
合ってなくていいです。例えば上の図をみて、どちらがより自然な人体なのか、と言われれば右側になります。ただしそれはあくまで解剖学的な正解でしかなく、絵作りにおいては必ずしも正解ではありません。
正しい人体構造なんかは絵を描いているうちに自然にわかるようになります。それよりもまず、自分の理想とする絵作りがなんなのかをしっかりイメージしましょう。
その「理想」をイメージできるようになるために、まずはいろんな絵をたくさん観てみるといいと思います。
結局まずは真似ることから
自分が好きな絵をよく観察して、どんなバランスで描いているのかを意識してみましょう。
キャラクターなら、その絵のキャラはどこに頭があって、どこに体があり、それぞれどういう向きなのか。目がどの位置にあって、どれくらいのサイズなのか。肩の位置は?肘の位置は?手の位置は?など、観察すればするほど発見があると思います。
参考にするイラストの上に、ポイントとなる部分に点を打ったり線を引いて構造を理解するようにすると、実際に自分で絵を描くときにもアタリをとりやすくなると思います。
イラストの上から単純な色と影を置いて、どれくらいの質量のバランスで身体を描いているのかを感覚的に理解できるようにするのも有効だと思います。
そういうときでも「参考にしてる絵、よく見たら身体の構造おかしくね?」ではなく、「この人はこういう絵作りをしてるんだ!」と思うようにしましょう。そこから「自分ならもっとこうしたいな」という気持ちが生まれてくるはずです。
Q.9 複雑なものの描き方教えて
風になびくふんわりとした髪の毛の描き方教えて下さい
洋服の影・軽さを表現するのが苦手です、コツを教えてください
あ、あと手の描き方も教えて欲しい
これらは全て一つのことをやるだけで解決することができます。最初から線で描くのではなく、シルエットとして塗りながら描く、ということです。
どゆこと?と思うかもしれませんが、遠くにいる人を、そのまま画面に描くことをイメージしてみてください。
細かい部分はわからないので、適当に頭はここ、体はこんな感じ、という具合にざっくりとシルエットから描き始めると思います。いきなり目をしっかり描いたり、洋服のシワから描き始めることはないと思います。
例えば風になびくような髪の毛を描くとき、最初から綺麗な線で少しずつ形を描いていくと、途中で「風になびいてる感じしないなぁ」となったら、線を消して、またはじめから描き直す・・・なんてこと大変すぎてやってらんないですよね。
ちょっと太めのブラシで、グレーなどでまずはざっくりと、風になびいてる髪ってこんな感じかな〜?と、それっぽくなるように描く。
このとき、ブラシの透明度を30%程度に設定して進めると、色を変えなくても重ね塗りするだけで濃淡も表現できて便利です。
ある程度形になったら、消しゴムでイメージと違う部分を消す。
更に細かく枝分かれしそうな部分も、消しゴムで消しながら細かくしていく。ちょっと間違えたらまた塗り足して、消しゴムで消す。
どうなってるかちょっとわかりづらいな、という部分だけ補足として線を入れても良いと思います。
満足のいくシルエットになった後で、それをなぞるように線を描けば、
比較的簡単に描くことができます。
ポーズや手も全く同じで、まずは太めのブラシで、こんな感じ!とサクサク描いていく。
いきなりアゴのラインは〜とか、指はこんな形で〜とかは考えず、棒人間を描くくらいのつもりで描いていきます。
わかりづらいな、という部分だけ補足として線を入れる。このときも、いきなり細い線で描くのではなく、わざとちょっと太めの線で描いてみましょう。いきなり細かく描いてしまうと修正が大変ですし、そもそも間違いに気づきにくくなります。
線を引いていくうちに、自分のなかで少しずつ解像度が上がって見えてきます。「もうちょっとウエストが細いほうが良いな」「もうちょい腕は短いほうがいいな」とか。シルエット → 線 → シルエット → 線、とちょっとずつ修正していきます。
最後にシルエットを線でなぞれば線画はほぼ完成です。
適当に描いたのでまだデッサンの狂いはありますが、線だけで描くよりも形の修正がしやすく、最終的な完成もイメージしながら描きすすめることができます。
シルエットで捉えて描く方法は、このあとの色塗りなどでも応用できる描き方で、光のシルエット、影のシルエットを意識して、同じようにざっくり、ざっくりと描いていってみましょう。消しゴムで形を整えたりすることで、かっこいい影、かっこいい光の形を探してみましょう。
慣れてくると、シルエットの時点で光や影を意識して、より完成イメージに近い状態でラフ画を進めることもできるようになります。
影の付け方の質問でも答えたように、ざっくりと割り切って描くと、見やすくて、わかりやすい絵になっていき、間違いに気付きやすくなるというメリットもあります。
Q.10 線画だとなんだかイメージと違って見えてしまうのはなぜ?
線画になると微妙になるのは何故
工程進むにつれてバランス崩れていくからいつも線画あたりで消す
ラフ画のときは良かったのに、清書したらなんかクソ…と思うことはよくあります。
なにが原因かというと、ラフから正解の線を拾えていないからです。こちらのラフ画を例に見てみましょう。
まだ全体的にぼんやりとしていますが、なにかカッコイイ雰囲気だけは感じられます。
ラフの段階で無数に描いてある線のどれかが、たまたま正解の線を引けている、というイメージです。
(またはその線の塊から、見えない正解の線を錯覚している)
解決方法は簡単で、グレースケール(白から黒までの間の階調)でいいので色をおいてみましょう。このとき、ある程度立体を意識してみると良いと思います。
なんとなく立体に見えてきてますよね。
そうすると「立体にすると実は首が細いから、線画としては少し太めにしてあげると良さそう」とか、「頭の形が不自然だから、線画はもう少しこうしたほうが良さそう」とか、いろいろなことがわかってきます。
線画というのは絵の段階的に最も情報量が少ない状態なので、少ない情報から良い・悪いを判断しないといけません。
そんなときは上記のように一度情報量を増やしてあげることで、線画よりも良い・悪いを判断しやすくなります。
Q.11 ラフ画から線画抽出するときのやりかた
ラフから線画にできない!
だいたいここまでの解説で、どう描き進めると線画にしやすいかは掴めるかなと思いますが、よくある線画を描くときの失敗例として、ラフ画から線画にするまでのステップが早すぎることがあります。
ある程度描き慣れた人なら、大ラフの状態からでも的確な線を引くことができますが、これは本当に描き慣れていないとできないことなので、初心者の方は、大ラフからさらにもう一段細かいラフ画を描くと良いです。
大ラフ → 中ラフ → ラフ → 線画という具合です。
時間はかかるかもしれませんが、ラフを描いたらまずはその段階でイメージに合うように修正する。そしたらもう少し細い線でラフをなぞって、そこでもおかしな部分は修正する。そして更に少し細い線でラフをなぞって、おかしな部分は修正する……という具合に、常に修正しながら描き進めるのが、最終的に「クソじゃん…」とならないコツです。
Q.12 ポーズの決め方
これは実は結構難しい問題で、ポーズ=シルエットによって、画面全体の印象は大きく変化するし、当然観る人が受ける印象も変わってきます。
そもそも絵というのは、四角い画面の中で、どのように視線を誘導するのか、という命題を抱えています。上の絵のように円が描いてあるだけでも、観る人は自然と「左上 → 右下 → 右上 → 真ん中らへん → 左下」という具合に視線が動きます。
そして、その視線の動きが人に様々な印象を与えます。躍動感であったり、物静かな感じであったり、にぎやかさ、孤独感、寂しさ、楽しさなどを感じます。
それが「構図」という概念です。
これをキャラクターイラストに応用して考えるとどうなるでしょう。
上の2枚は全く同じポーズをしているわけですが、画面への収め方によって、絵から受ける印象は全く違います。
絵を描くときには、画面をどんな風に埋めるのか、を意識してポーズを決めるといいと思います。
難しい話をしているようですが、実はすでにキャラクターイラストに関しては、構図の考え方はいくつか定型があり、その一つが「三角構図」です。
それを紹介している参考動画がありますので、2つご紹介します。
さいとうなおきさんの解説動画です。
2023.5.27追記
※元々解説動画へのリンクを掲載していましたが、現在さいとうなおきさんの旧チャンネルは凍結され、新チャンネルに移行しており、直接動画を紹介することができません。とりあえず新チャンネルへのリンクを掲載しておきます。
「こんな感じで画面を埋めたいな~」とイメージが出来てきたら、そのイメージに近いポーズの資料を集めてみると良いと思います。
もう一つご紹介したいのは、こちらの米山舞さんのインタビュー記事です。
元アニメーターならではのポージング、構図の考え方が読み取れると思います。
「すごい迫力がある!!!」「生きてるみたい!!!!!」「ぐわーーー!!!!!」という絵を見かけたら、キャラがどんなポーズをしていて、どんなふうに画面に配置されているのかをよく観察してみると良いと思います。
Q.13 背景のコツ(私自身、背景描くの苦手なので、想像してる頭の中を見せてください)
抽象的な背景から練習してみましょう。抽象的な背景というのは、例えば円が描いてあるだけとか、ストライプ柄になっているだけとか。
時々みかける白背景、グレー背景、黒背景とかもセンスがあってかっこいいです。(↑のイラストにセンスがあるという訳ではないですが・・・)
こういう場合は、
「なんでただの白背景なのに、ちゃんと背景に見えるんだろう?」
こんな風に考えて絵を観察することが大事です。
「反射光がこんな風になってるのか!」とか、「黒一色かと思ったらうっすらモヤモヤしたのが描いてある!」とか、いろんな発見があるはずです。
「もうちょっと背景っぽくしたい」ということなら、ぼんやりと「なにか」を描いてみるだけでより空間的に見えてきて、絵に奥行きが出てきます。
こうした発見は、次に具象的な背景を描くときにも役立つはずです。
具象的な背景(実際の風景など)は、とにかく資料を用意しましょう。
尾田栄一郎先生もおっしゃってましたが、人間1人の想像力には限界があります。どんなに想像したって、自分の部屋がどうなっていて、どこになにがあるのかすら正確に描くことは難しいです。
一番簡単なのは、自分のイメージと合う写真やイラストを探すこと。
そして、キャラに合わせて風景を描くのではなく、その風景に合わせてキャラを描くことです。
この綺麗な夕焼けの砂漠に、あのキャラがいたら素敵だな〜、と思ったら、そのまま絵にしちゃえば素敵な絵になります。慣れないうちはへたに想像で描かないほうが良いです。
Q.14 どうやったら一瞬で上手くなりますか!!!!!!!!
上手な絵が描けるようになりたい!と思ったとき、自分が目指す上手な絵とはなにか?と具体的に考えるのは大事です。
例えばTwitterでバズるような絵を描きたい、とかなら、実は絵を描く技術的な部分はほとんど重要ではありません。
むしろ、どんなキャラを、どんな状況で、どんなことを言わせるかなど、
設定のほうが重要になってきます。バズってる絵の中には、ほとんど落書きレベルのものも多いですよね。
これは絵が技術的にうまくなったときでも実は重要なことで、絵を観る人は「共感できるもの」を常に探しています。
「あーこのキャラってそうだよねw」「言いそう〜w」
「このキャラにこんなことされたい;;」
「やばかっこいい!!」「エロすぎる!!!」
とかそんなやつです。
これを忘れて技術ばかり上手くなってしまうとどうなるか?
誰にも共感されない、「俺、絵うまいっしょ?」「おれつえーーー!!!」
な絵になってしまいます。
こういう絵を見て喜ぶのは同じ絵を描く人だけです。
どのレベルで共感されたいのか?によって、
絵を観る側に求められる「鑑賞力」も変わってきます。
あまり難しい設定をしすぎると、「たしかにそうかもしれないけど・・・うーんわからん」ということになり、やっぱり共感されるのは難しくなってきます。
もちろん、いずれそれがその人のオリジナリティにつながることもありますが、これはほんまもんの美術や現代アートの世界になっていくので、あまりお勧めはしません。
同じ理由で、まずは二次創作の絵を描くのは、今の時代では一つの登竜門として正解なんだと思います。
オリジナルの絵を描きたいと思っていても、誰にも見向きもされないと心が病んできます。ある程度自分の絵なら観たい!という固定ファンを作ってから、オリジナルの絵を描くと心の健康に非常に良いと思います。
セーラームーンチャレンジだとか、ワンドロだとか、そのときのトレンドに乗ってみるのも一つの手です。絵の技術的な上手さよりも大事なことがある、ということを心に留めておくと、創作活動が楽しくなっていくと思います。
補足1 オススメの絵の練習方法
質問への回答でも何度か出てきていますが、
とにかく自分がいいな、理想だなと思う人の絵をよく観察することです。
最初はトレースするのもいいですが、できれば模写をしましょう。すぐ隣にその人の絵を置いて、同じになるように描くことです。そうすると、いろいろな発見があるはずです。
それに慣れたら、オリジナルの絵を描いてみるのもいいと思いますが、そのときでも参考になりそうな絵を観ながら、
「こう表現したいけどどうすればいいんだろう」
というふうに観察しながら描いていくと、学びがたくさんあって良いと思います。
自分1人でひたすら描き続けてもいずれ上達はすると思いますが、SNSの発達もあり、毎日たくさんの人が超絶上手い絵を描いています。そんななかで、一歩でもそういう人に追いつきたいと思ったら、最初からその人たちの絵を参考にして描くのが一番の近道です。
こんな話をすると「パクリやん!」とか「個性なくなるやん!」とか言われそうですが、そういう人は一からデッサンを勉強して、気が遠くなるような枚数絵を描いて、一生かけても評価されない、そんな芸術家のような人生を歩んでいけば良いと思います。
補足2 線を簡単に描かない描き方のススメ
これはどんな絵を描きたいのかにもよりますが、漫画やネタ的な絵ではなく、ある程度写実的に描きたい、という人向けのオススメです。
線を主体にして描くと、初心者ほどその内側の立体感を無視しがちです。綺麗な線を描いて、色も塗ったけど、なんだかのっぺりしてる・・・とか、なんだか色が浮いてるような気がする・・・というのは、そこに立体感がない=画面の中の世界に存在できていない、ということです。
ここでお勧めするのが、線を描かない絵を描いてみる、という練習です。もちろん最初の段階で、ある程度形を整えるのに線が必要になることはあっても、一つの道具として線を使い、色だけで立体を表現する練習をしてみましょう。
そうすると、線だけで描いていたときには見えていなかった形が見えるようになります。例えばしわのあるワンピースのようなものを描くとき、線に頼りっきりな人は、線の近くだけ影をいれて、内側はなんにもないものを描きがちです。
ですが、線に頼らずに立体を意識できる人は、線では捉えきれないような、内側の表面の細かなしわまで描ききることができます。
これは技術の差というよりも、意識の差です。
こうした立体意識のある人は、最終的なイメージから逆算して線を描くことができるようになります。絵の上手い人が描く線を観ていて、
「線だけなのにすごい立体感・・・!」
「上手い人の描く線はそれだけで完成形をイメージできる・・・!」
などと感じるのはそういう差です。
そうすると、どんな線が効果的なのか、がわかるようになるはずです。
補足3 難しい絵を描くのは避ける
難しい絵ってどんな絵?と思うかもですが、こんな絵です。
よくあるのが顔だけが描かれた肖像画のような絵ですが、うまい人が描けばキャラクターの息づかいまで感じるような素晴らしい絵になるものの、初心者のうちは、体とのつながりや、顔の各パーツのバランスを取ることができず、ひどい目にあいがちです。
少なくともバストアップ、出来れば全身を描いた上で、顔だけ切り取るようにしましょう。あと、単純に真正面から描くと、「左右対称に描く」という難題にもぶちあたるので、基本的には技術力が身につくまでは避けるのが無難です。
これも似たような理由ですが、顔や体の一部を隠すような絵は、隠している部分のデッサンが崩れがちです。こういうイラストを描く場合は、一度隠している部分もちゃんと描いてから隠すようにしましょう。
もう一つの難点としては、隠しているものと、隠されているものとの間にある空間を描きにくいという点です。うまい人はうまく陰影を利用してその空間を描きますが、技術力が身についていないと難しい芸当です。
迫力を出すために、体の一部などを画面の手前に向けて伸ばすような絵がありますが、これも相当なデッサン力、描写力が必要になります。チャレンジしてみると得るものはあると思いますが、最初のうちは避けるのが無難です。
こういうイラストを描きたいと思ったら、実際に上手に描いているイラストをよく観察すると良いと思います。
以上がとりあえず避けておくのが無難なイラストです。
ですがそれぞれに書いているように、きちんと技術があれば、他の人には描けない魅力のある絵にもなると思います。
大事なのは、いきなり大胆なチャレンジをするのではなく、少しずつ試してみることです。例えば最後の手前に向かってくるような絵も、まずは指先からとか、前に歩いているような絵とか、少ない動きからチャレンジしていくと良いと思います。
補足4 少しお金をかけてみよう
使うソフトやペンタブは、アナログの世界でいうところの画材です。
「弘法筆を選ばず」
という言葉がありますが、ほとんどの絵描きは筆を選んでいます。それなりの筆を使っているし、それなりの絵の具を使います。
使うソフトによって、出来ることも違いますし、マウスとペンタブでは描きやすさも、上達速度も変わってきます。
PhotoshopやCLIP STUDIOなど、月額1,000円程度から使うことも出来ますし、ペンタブを買えばCLIP STUDIOが付いてきたりもします。
お金をかけたくない!という気持ちもわかりますし、お金をかけずに済むならなるべくそうしたほうが良いと思いますが、ある程度のレベルまで上達したい!と思うなら、そのレベルの道具を使うのが一番良いです。
自分がどんなレベルになりたいのか、という気持ちと相談して、もし本当に上手に絵が描けるようになりたい!と思うなら、少しお金を使うことも、大事なことだと思います。
以上でイラスト講座を終わります。
なにか質問がありましたらTwitterでもこの記事にでもコメントをください。
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