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超マイナークトゥルフ神話TRPG日本公式サプリ

はじめに

 皆は朝松健という小説家を知っているだろうか?日本におけるクトゥルー神話界隈では超がつくほど有名な小説家である。作家の名前は知らなくとも各本屋や専門店のクトゥルフ神話TRPGのコーナーで「崑央の女王」や「邪神帝国」などが陳列されているのを目にしたことがある人は多いだろう。それらの小説の作者である。
 この朝松健氏が様々な作品で言及し、井上雅彦氏や立原透耶氏といった作家が参加したクトゥルー神話アンソロジー『秘神〜闇の祝祭者たち〜』にて共通の舞台となった夜刀浦、ジャパニーズクトゥルーを語るならばこの場所は避けては通れない。
 そのような重要な土地なのに2020年4月現在までクトゥルフ神話TRPGの日本公式サプリの中で夜刀浦が語られたのは『クトゥルフ2010』の64pにてほんの数行である。これはあまりに少ないのではなかろうか?本国にはラブクラフトカントリーシリーズとしてアーカム、ダンウィッチ、インスマス、キングスポート、ミスカトニック大学とそれぞれ単品で紹介するサプリメントがあるのに日本を代表するクトゥルー神話の舞台である夜刀浦の紹介がサプリすらなくたった数行でよいのだろうか?これならまだラブクラフトカントリーに後世で追加されたフォックスフィールドのほうがまだ説明が多いではないか。
 となるが、実は正式にサプリメントとして単品の書籍で出たわけではないが、『1/10クトゥルフ神話TRPG』と同様にミニサプリメントとしてR&Rの紙面上で取り上げられた事があるのである(いや、1/10もそうだけど公式サイトやっと開いたのだからそこで販売公開したりしろよと文句が言いたくなるのは正論である)。
 今回は2006年4月に発売されたそんな超マイナーなクトゥルフ神話TRPGのサプリメントである『夜刀浦綺譚』の紹介をしたいと思う。

夜刀浦怪奇譚

 クトゥルフ神話TRPGのミニサプリメント『夜刀浦綺譚』この存在を知っている人は昨今のクトゥルフ神話TRPGブーム以前からやっていた人かルルみたくなんかもう全部揃えないと気が済まない遡って調べた人位だろう。少なくとも、最近入って来てサプリを「日本公式から出てるサプリ全部買った!」と豪語している人に「夜刀浦綺譚は買ったの?買ってないとかニワカじゃん」と言っても無茶言うなというほど、このサプリの存在は露出が少ない。そもそもRole&Roll自体がTRPG業界の最大手が出版している専門誌なのにユーザーへの露出が広報がいるのか怪しいレベルで少ない。そんな雑誌のブームから5年以上も前のバックナンバーを知っていろと言われても無理な話である。

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 あのクトゥルフ神話TRPGで検索すると公式のブログより真っ先にヒットする良くも悪くも有名な非公式サイト「クトゥルフ神話TRPGやろうずwiki」の既刊一覧にすら載っていないレベルである(記事作成時点)。

 さてそんな『夜刀浦綺譚』だが雑誌Role&Roll vol.20に掲載されたクトゥルフ神話TRPGのミニサプリとなっている。
 このサプリはアーカム・メンバーズではなく、夜刀浦の発想元である朝松健氏の監修の元、他作家の協力の下、森瀬繚氏によって作成されたサプリメントとなっている。
 このサプリの内容は朝松健氏の軽い紹介と夜刀浦の地理、歴史、名所、真言宗立川流との関わり、プレイの手引、魔導書、クリーチャー、魔導書となっている。特にカントリーシリーズ同様、名所紹介系のサプリなので名所とNPCについて詳しく書かれている。と、言っても朝松健氏が夜刀浦についてより詳しい設定を明らかにした『弧の増殖 夜刀浦鬼譚』が発売したのは2011年のことであるし、このサプリの巻頭にも書いてあるが『秘神』の中でぼかした部分もサプリという名目上ハッキリと書いているので、あくまで“もう一つの夜刀浦”、クトゥルフ神話TRPGにおけるという扱いである。ただし、どの内容も朝松健氏の確認をもらっているのでジャパニーズクトゥルーにおける夜刀浦そのものと言っても過言ではないだろう。

 詳しいサプリの内容を話すと紹介の範囲を超えてしまうので夜刀浦についてはこの辺にするが、このサプリは夜刀浦だけでなく、TBS制作のドラマ版「インスマスを覆う影」の設定も取り入られており、赤牟市や王港市の地理的情報も記載されている(ドラマ内で新幹線を利用したと言っているのに千葉県の都市というのは疑問に思うところがあるが朝松健氏が千葉県と言ってるのだから千葉県だし、きっと新幹線も通ってる)。

余談

 このサプリメントの存在を知ってくれただろうか?
 ルルちゃんもブームから知ったのにどこでこのサプリ知ったんだよという声も聞こえるが「湖の隣人の小屋」様には雑誌を買い集める過程で大分お世話になったので記していおく。
 それと、本文中にもあるがこのサプリメントは2006年のものであり、『弧の増殖 夜刀浦鬼譚』が発売される5年も前のものである。そのため夜刀浦で祀られている神であり、元はラブクラフトがクラーク・アシュトン・スミスに宛てた手紙の中の神話生物であるヨス=トラゴンについての情報は記載されていないので注意されたし

参考文献

Role&Roll vol.20
クトゥルフ2010

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