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サンディー・ピーターセン来日インタビューの踏み込んだ記事を書きたかった

お詫び

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 記事を書こうとしたら、しょっぱなからこれである。ルルは参考にも書いた3つのサンディー・ピーターセン氏のインタビュー記事を読み(ヤフーのモノはesからの引用なので実質2つだが)、余りにも内容が以前のインタビューの流れを踏んでいないのとそもそも全文でないのに疑問と違和感を覚え、このようにnoteにその事を踏み込んだ記事を書こうとした。
 そしたらまさかのインタビュー動画の著作権侵害での非公開である。ルルの立場上、あまり言いたくはないがゲームマーケットの運営であるアークライトは流石にユーザーを舐めたことをやっていると言わざるを得ない。Sonyの権利申請なので虚偽申請の場合はSonyがと言う可能性も残されているが、動画の管理としてこれがお粗末なのは変わらないだろう。
 そもそも、ルルがこれから書こうとしている事はYSDCのサンディーのインタビューも参考にしているのだが、このインタビューも画像の通り、サイト移行の際に削除されてそのままとなっているので、ルルの記憶による内容が一部含まれていると言う、情報としてはやや不完全なものであるはずだった。

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 なので、これから書く、サンディーのゲームマーケット2019秋でのインタビューに対する突っ込みに関してはゲームマーケット秋2019とYSDCのインタビューに関してはあくまでルルの記憶している内容と言う事を赦して欲しい。


ゲームマーケット2019秋サンディー・ピーターセンのインタビューの解説

 まず、肝心のインタビューの中身である。先にも述べた3つの記事の内、ゲームマーケットのインタビューが全部載っているモノはない。一番多くインタビュー内容に触れいている4Game.netですら触れている内容はほんの一部である。
 ゲームマーケットで述べられたインタビューの内容は一部を除いて既出の事柄である。3つの記事が語っていたインタビューの内容はどれも既出の情報であり、10年近く遅れた情報なのである。また、既出の内容ではあるが、ゲーム制作秘話はクトゥルフ神話TRPGのもう一人のゲームデザイナーであるリン・ウィルスのインタビューと元々は共に収録されており、サンディーだけの意見では意味する内容は変わってくる。
 こちらのインタビューの内容は現在購入困難であるがDifferent World#9に掲載されており、同じく入手困難であるがTACTICS別冊RPGマガジンNo.1に翻訳されたモノが収録されている。

ピーターセン氏が「Call of Cthulhu」(「クトゥルフ神話TRPG」の原題)を制作したのは,アメリカのボードゲームメーカーであるChaosiumで「ルーンクエスト」関連の手伝いをするようになってからのこと。
 同社がクトゥルフ神話の「ドリームランド」に題材を採ったサプリメントを作りたいと考えたことから,ピーターセン氏が執筆に参加することが決まったのだという。このサプリメントとは別に,近代を舞台とした「Call of Cthulhu」の開発が進められていたのを知ったピーターセン氏は,「編集でもなんでもいいから,ぜひ関わらせてほしい」と直訴。Chaosiumからは「いま作っているバージョンは納得がいかないものなので,キミの好きにやっていいよ」という返答が得られたという。

 4Game.netからの引用であるが、この回答と記述は正確ではない。
 サンディーは、先述の雑誌に掲載されたインタビューでは

 1年半前、わたしはケイオシアム社に手紙を書き、中編小説「未知なるカダスへの夢の探索」に代表されるようなH・P・ラブクラフトの素晴らしき夢の世界に基づいた“Rune Quest ルーンクエスト”のヴァリアントを売り込もうとしました。

とインタビューにはある。このあと、グレッグから新作のRQを基としたクトゥルフもののRPGを製作中(Dark Worlds)と知らせを受け、数ヶ月懇願し製作チームにリーダーとして参加できたと答えている。
 リンの方のインタビューにも目を向けるとこのクトゥルフもののRPGのアイデア自体はゴシック物のRPG製作を得意とするフリーのゲームデザイナーによってなされたモノらしい。この製作が行き詰ったのでグレッグが製作リーダーとして〆切を守る男サンディー・ピーターセンを推薦したのである。

正気度システムを導入したことにより,プレイヤー達はキャラクターに「目を背ける」「敵から逃げる」といった恐怖の振る舞いをさせるようになったという。こうして「Call of Cthulhu」は完成し,1981年から38年間にもわたって展開を続ける人気タイトルとなった。ピーターセン氏は「妻の存在なくしてはこのゲームは作れなかった」と,あらためて感謝を捧げた。

 先述の様にルルの記憶頼りになる事を侘びるが、この妻が正気度システムを考えたと言うのは初出はYSDCのインタビューである。また、初版時のインタビューではそこで生み出された正気度システムは現在のモノとは大きく違い、探索者達は一方的に狂気に陥るとしていた。サンディーはこのシステムの導入を成功としているが、リンによるとRPGにて自身のキャラクターが一方的に殺され、狂気に陥る結末はプレイヤーには到底受け入れられるものではないとして、チームメンバーで修正に入った。正気度の回復や増加についてのルールをグレッグが書き上げ、スティーヴ・ペリン氏が狂気の定義付けをし、ユーレク・コダック氏が1つを除きリストアップした(「閉所恐怖症」だけはドロシー・ハイト氏の考案である)。そして、リン氏は〈精神分析〉と一時的狂気の治療に関するルールを設けた。

 他、アンシャトレーヌのモデルやカールのモデルなどの話しもYSDCのインタビューが初出であると記憶している。

 また全体としてサンディーは神話生物と戦わず逃げたり、生き残るゲームと言う風にゲームマーケットでは答えていたが、初版のルールブックではカルティストや神話生物を時折’’destroy’’することを目的としており、有坂純氏の翻訳では(翻訳は2.5版)狂信者や神話生物を殺すゲームとされている。
 そもそも、上記のリンの回答からも分かる通り、サンディーのゲームはクトゥルフの世界でのラブクラフトの雰囲気を重視しており、リンはそれに対してゲームとしてのクトゥルフを重視している。両名のゲーム制作における衝突は言うまでもなく、事実4版からはデザインの中心はリン氏になり、サンディーは表紙に名前こそ載るがクレジットからは名前が消えている。これは日本語版の5.1版、6版(6.3版)、7版でも同様である。また、現在インタビューと同じく見ることが出来ないが5版、6版のクイック・スタートでは探索者はヒーローであり、宇宙からの恐怖と戦いそれを退けるゲームであると説明されている。勿論、その解決手段は剣や盾でなく知識だが……(知識とあるが多くのシナリオでは硝煙の香りと共に解決、すなわち銃火器によって解決するとも書かれている)。

サンディーのインタビューの初出部分

 最後にサンディーのインタビューにて初出の部分に触れておく。
 サンディーはこれらの内容の他にPetersen's Abominationsの話しについて触れている。このシナリオ集のHotel Hellの舞台設定が2006年6月6日である事について触れた。このことは本シナリオの中でテストプレイ時に世界が崩壊するラストシーンが丁度その日付の時刻になる事を狙ったと書かれている事から既出であるが、もう一つ触れた話題がある。
 それは自身が気に入っているシナリオについてで、この質問自体も既出であり、実際、既出の回答の様に「悪霊の家」「ヨグ=ソトースの影」について回答しているが、当時はPetersen's Abominationsは未発売であったのでPetersen's Abominationsのシナリオが追加された。表紙のデザインになっているシナリオとのことだが、このシナリオはPanaceaと言うシナリオである。このPanaceaがお気に入りと言う情報が唯一の初出であろう。

最後に

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 サンディーはとても面白いクトゥルフおじさんで、インタビューやトークショーを聞いている身としてはとても楽しかった。しかし、恐らくだがあの場にいる人たちにとっては、あのインタビューは殆どが既出であることを知っており、動画や興味を持って来てくれた人には知らない前提となる情報が多く不親切なモノであったとルルは思っている。
 ただ、それでもサンディーと言う人物が面白すぎたので結果としてはプラスであった。普通なら目も背けたくなるクトゥルフ女子()によるセッションもサンディーの奇行もとい活躍によりとても面白いものとなった。しかし、公式から資料が恐らく渡されていなかったり、記事にするに当たり一切の調査をしていないと分かる知識不足な記事を見てこのnoteを書かなくてはと言う義憤に駆られた。
 ここまで読んでくれたルル・マークス協会の人たちに感謝します。

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参考文献
『クトゥルフ神話TRPG』作者 サンディ・ピーターセン特別ステージも大盛況! 今、アナログゲームが熱い!https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191219-00000028-mnet-musi https://entertainmentstation.jp/573099
「正気度」を生み出したのは奥さんだった。クトゥルフ神話TRPGの開発秘話が語られたステージイベントをレポートhttps://www.4gamer.net/games/487/G048727/20191125027/
TACTICS別冊RPGマガジン デザイナーズノート/有坂純訳 ホビージャパン1986年 
クトゥルフの呼び声 有坂純訳 ホビージャパン1986年
Call of Cthulhu 1st edition Chaosium.Inc1981年

Call of Cthulhu is copyright (C)1981 by Chaosium Inc.


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