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【エッセイ】ビッグ•ショット: ラスベガス

 深夜のラスベガス、広がるネオンの海が目に映る。ストラスフィアタワーの最上階、フリーフォール「ビッグ•ショット」の乗り場に立つと、冷たい風が頬を撫でる。

 静寂と喧騒が交錯する瞬間、心臓の鼓動が耳元で大きく響く。座席に座り、シートベルトを締めると、緊張感が一層高まる。

 一瞬の静寂の後、機械が唸り声を上げる。座席が急速に上昇し、地上からの距離が増すにつれ、視界がどんどん広がり、まるで世界全体が自分の下に広がっていくかのような感覚に包まれる。心臓の鼓動はますます速くなり、呼吸は浅くなっていく。

 頂点に達した瞬間、目の前に広がる光景が息をのむほど美しい。ラスベガスの夜景が360度、無数の光点となって煌めき、街全体が生きているかのように感じられる。煌びやかなカジノの光、通りを行き交う車のライト、遠くに見える山の輪郭までもが、まるで絵画のように広がっていた。その瞬間、重力が消え、体が宙に投げ出される。

 落下のスリルが身体中を駆け抜け、心臓は一層激しく鼓動する。広がる夜景が流れ去り、自分の存在が夜空に溶け込むような感覚に包まれた。

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