【推し】ヴィーナーシュニッツェル
美しい音楽と優雅な建築が息づくオーストリアのウィーン。遠く日本から訪れた彼の心は、この街の魅力にすっかり奪われていた。そして、その感動が最高潮に達したのは、ウィーン名物のヴィーナーシュニッツェルを初めて口にしたときだった。
シュテファン大聖堂から歩いたところ、小さな路地にたたずむレストランでその出会いはあった。地元の人々が評判を作った名店で、観光客の足があまり及ばない隠れ家的存在だった。彼はウィーン名物のヴィーナーシュニッツェルを注文した。
運ばれてきたその料理は、シンプルな揚げ物、焼き色が美しい揚げたてのシュニッツェルの皿には、思いがけずブルーベリーが添えられていた。
ナイフとフォークを持ち、シュニッツェルをそっと切り分ける。切り口からはじゅわっと熱が立ち昇り、誘うように香り立ってくる。それを口に運ぶと、外側のパン粉がサクッとした音を立て、優しくジューシーな肉の味が広がった。
そして、特筆すべきはそのブルーベリーだ。一見、意外な組み合わせかと思われたが、それをシュニッツェルにつけて食べると、甘酸っぱさが肉のジューシーさを引き立て、優しく複雑な味わいを口の中に広げた。それは、一つの芸術作品としての賛辞を称えるべき味わいだった。
あのヴィーナーシュニッツェルの味は、心に深く刻まれ、永遠に残るウィーンの記憶となるだろう。
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