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「外国への支援より国内優先。って、それ本当に日本のためになる?」国際支援のホントのところ

『次のニュースです。
シリウス共和国を訪れている首相は現地での会見で「総額1000億ドル規模の民間投資を支援する」と発表しました。
民間の投資を呼び込むことでシリウス共和国の経済発展およびに日本との貿易の活性化が期待されます』
 
キウイくん:1000億ドルって、どのくらい? それに、これってどういう意味? 
ミスターXに聞いてみよう。
なに~! 14兆円だってぇ! そんなお金を外国に使う余裕があるなら日本に住んでるボクたちのために使えよぉ! ボクたちの税金なんだぞっ!
このメガネ、ゆるすまじ!


なんて論調をよく見かけます。しかし、それは本当に日本のためになるのでしょうか。
自分が住んでいる国、自分の生活。そうしたものを守るために本当に必要なこととは?
 
フクロウのルルさんが解説します。
 
※政治には触れません。政府がとか、どの政党がとか、そういう話はありません。
そもそも、この話を政治と絡めることが勘違いのもとであることは読めばわかります。
 
 
登場人(?)物
 
・キウイくん
まだ若いキウイ。純粋であるがゆえにどんな話でも信じてしまう。


・ルルさん
青年海外協力隊に参加したことがあるフクロウ。


・ミスターX
いつも怪しい情報をつぶやいている。
青い鳥さんに下剋上をぶちかまして看板を奪った。


1. 国民生活を守るために外国を支援する?

キウイくん:メガネ出てこいっ!
 
ルルさん:どうしたの?
 
キウイくん:メガネがっ! メガネが日本を滅ぼすんだよっ!
 
ルルさん:まあまあ、ちょっと意味がわからないことになってるから、インドネシア産のイモ虫でも食べて落ち着いてよ。
 
キウイくん:美味しい!
 
ルルさん:で、何があったの?
 
キウイくん:外国への支援がうんちゃらで、税金の無駄遣いって話。日本で生活している人は置き去りなんだよ。
ミスターXが言ってた。
こんなひどい話なのに、ルルさんは何も感じないの?
 
ルルさん:やっぱりミスターXの影響か。キウイくんがハマってしまいそうだね。
それはともかく、それなら私の得意分野だよ。
海外協力隊に参加していたからね。まさにキウイくんの言う外国への支援の最前線だよ。
 
キウイくん:えっ、井戸掘りとかしてたの?
 
ルルさん:その勘違い、根強いね。
まあ、そういうわけだから何があったのか話してごらん。
 
キウイくん:そうそう。いま日本はたいへんなんだよ。
高齢化で国の負担はどんどん増えるけど納税する世代は減っちゃうし、だからもっと子育てとか教育の支援をしないとだし。
それに、物価は上がってるけど給料は増えないから餌を買うのも大変なんだよ。
 
ルルさん:確かに、その通りだね。
 
キウイくん:で、日本がそんなに大変なのに、外国にお金を配ってるんだよ。
この前なんか14兆円だって。ほらこの記事。
 
『シリウス共和国を訪れている首相は現地での会見で「総額1000億ドル規模の民間投資を支援する」と発表しました。
民間の投資を呼び込むことでシリウス共和国の経済発展および日本との貿易の活性化が期待されます』
※以下、ドルはUSドルで1ドル=140円とします。
 
おかしいでしょ。まずは日本で暮らす人たちの生活が最優先じゃないと。
それで余裕があったら他の国に支援すればいいんだよ。
ミスターXもそう言ってて、それは正しいと思うんだけど。
 
ルルさん:ふむ。なるほど。一見すると正しそうに思えるね。
だけど、それはいろいろな勘違いが含まれてるんだ。
そして、その考えだと、日本の立場と国民の生活はかなり危うくなるんだよ。
 
キウイくん:なんで?
国民の生活を守るのが国の責任でしょ。ボクたちはそのために税金を払ってるんだよ。
ボクたちのためにその税金を使えないなら、返せ、メガネっ!
 
ルルさん:そうそう。国民の生活を守るために外国への支援が行なわれるんだよ。
なんか矛盾してる気がするんだろう?
 
キウイくん:うんうん。
 
ルルさん:じゃあ、今回はそのあたりのことをいろいろ話そうね。
 
キウイくん:なんかおかしいんだよなァ…


2. 日本は単独では成り立たない

ルルさん:キウイくん、ラズベリーあげる。
 
キウイくん:わ~い! 美味しい!
 
ルルさん:ところで、そのラズベリー、どっから来たかわかる?
 
キウイくん:えっ、農家さんじゃなくて?
 
ルルさん:そうなんだけど、どの国の?
 
キウイくん:日本でしょ?
 
ルルさん:オーストラリアだね。
 
キウイくん:ふ~ん。それで?
 
ルルさん:キウイくんがミスターXの話をみるために使ってるスマホの電気は?
 
キウイくん:発電所だよね。
 
ルルさん:そうそう。その発電所で使う燃料とかも外国からきてるんだよ。
他にも、服とか、家の材料とか、そういうのも外国からきてるし、身の回りの品も外国にある工場で作られてる。
 
キウイくん:あ~。たしかに。
「Made in どこそこ」ってよくみかけるよね。
 
ルルさん:日本は食べ物から石油まで、多くを外国に頼ってるってことだね。
 
キウイくん:そうなるね。
 
ルルさん:ということは、外国とケンカをしたり他の国からの評判が悪くなって、こうしたものが来なくなると大変なわけだ。
食べ物がものすごく高くなったり、電気が使えなくなったり、影響は大きい。
日本で作って外国に売っている車とかだって材料や原料は外国からきてるから、日本で作ることもできなくなっちゃう。
 
キウイくん:それは困るなぁ。
 
ルルさん:それに、日本ではたくさんの外国から来た人が働いているから、もしその人たちが来なくなってしまったら、日本で作られているものもなくなっちゃうね。
 
キウイくん:確かに。コンビニとか居酒屋の店員さんとかでも外国から来た人をよくみかけるよね。
 
ルルさん:そうだね。
そこで、日本は外国との「お付き合い」が大切なわけだよ。
日本が他国とのお付き合いを無視して単独で生き残ることはできない。
で、「お付き合い」の形にもいろいろあるけど、外国への支援もそのひとつだね。
 
キウイくん:え~。なんかお金で評判を買うみたいで、感じ悪いなあ。
 
ルルさん:お金は別に悪いものじゃないよ。
ちょっと身近な例を挙げてみよう。
 
とあるケチケチさんがいたとしよう。
このケチケチさんはお金を持ってるのに自分のためにしかお金を使わない。誰かが困ってても助けてはくれないし、お食事会でも絶対に自分の分しか払わない。
 
こんな人どう思う?
 
キウイくん:ええ~。なんかヤダなぁ。そんな人。あまり付き合いたくないタイプ。
 
ルルさん:だよね。
じゃあ、こんな人はどうだろう。
 
何かあったら助けてくれるし、一緒にご飯を食べに行ったら気前よくごちそうしてくれたりもする。
けど、子どもの学費をねん出したりと家計はたいへんだ。
 
キウイくん:そういう人は好感が持てるよね。苦しいときはこっちから助けたくなるよ。
 
ルルさん:なるほど。その人はお金でキウイくんの好感を買ってるんだね。
 
キウイくん:いやいや、そういうんじゃないよ。心意気というか、人と鳥との交流というか。
 
ルルさん:そう。それ。
今のは個人の付き合いの話だけど、国と国との付き合いというのも同じなんだよ。
その付き合いの一つがお金という形態なだけだ。
 
キウイくん:う~ん。
そう言われればわからなくもないけど、日本の場合は多すぎるよ。
この前のニュースのは14兆円だよ。食事代とは桁が違うよっ!
 
ルルさん:それが勘違いのひとつだね。
 
キウイくん:えっ?


3. ニュースの意味をしっかりと読み取ろう

ルルさん:さっきのニュースをもういちど振り返ってみよう。
 
『シリウス共和国を訪れている首相は現地での会見で「総額1000億ドル規模の民間投資を支援する」と発表しました。
民間の投資を呼び込むことでシリウス共和国の経済発展および日本との貿易の活性化が期待されます』
 
キウイくん:1000億ドルって言ったら14兆円でしょ。やっぱり多すぎるよ。
何が勘違いなの?
 
ルルさん:ここでは「民間投資を支援」と言ってるね。
この民間というのはどういうことかわかる?
 
キウイくん:ボクたちのこと?
 
ルルさん:この場合は、日本の企業だね。
そして、その企業が投資というのはどういう意味だろう?
 
キウイくん:えっと、株を売ったり買ったり、土下座したり?
 
ルルさん:それはドラマだね。
この場合は、民間企業がシリウス共和国に工場をつくったりすることだね。
 
キウイくん:う~ん。でも、なんでそれを税金でやるの?
企業なら自分たちでやればいいでしょ。
 
ルルさん:そうそう。
さっきのニュースでは「総額1000億ドル規模の民間投資を支援する」と話していたね。
これは実際に工場をつくったりとかの投資は企業がするということだ。その目標とする金額が1000億ドル(14兆円)ということだね。
 
もちろん、一部は補助金として税金が使われるだろうけど、1000億ドル(14兆円)をすべて税金から出すわけじゃない。あくまでもお金を出す主体は企業だよ。
「民間投資を支援する」というのはそういう意味だね。
 
キウイくん:えっ、ぜんぶが税金ってわけじゃないんだ。
でも、やっぱり一部には税金が使われることもあるんでしょ。なんでそんなことするの?
 
ルルさん:その企業の活動が私たちの生活に密接にかかわってくるからだね。
例えば、シリウス共和国は人件費が安いとしたら、そこで製品を作って日本に持って来ればみんな安い製品が買えるようになるね。
 
キウイくん:あ、なるほど。それは助かる。
 
ルルさん:そして、シリウス共和国では日本の企業の大きな工場ができることで、たくさんの人が職を得られて生活水準が向上するし、シリウス共和国は税収も増える。
そして、シリウス共和国の人には「日本ありがとう」という感情も生まれる。
 
キウイくん:なるほどね。
 
ルルさん:そうした民間の投資を国が後押しすることによって、国民の生活に良い影響があるし、外国との関係も良くなる。
だから補助金として税金が使われるわけだね。
 
キウイくん:そういう話だったのかぁ。なんかイメージとだいぶ違うなぁ。
 
ルルさん:しかも、これは日本の企業を支援するものだから、その支援を受けて企業が儲かって納税額が増えたら日本に返ってくるわけだよ。
その企業や取引先の企業で働いている人は給料が増えるかもしれない。
 
キウイくん:あっ。そっか、そういうこともあるのか。
じゃあ、この話は悪いことじゃないの?
 
ルルさん:その企業がシリウス共和国への投資に失敗するということもあるけど、全体的には悪くないよ。
国内企業への支援なのだから、外国への支援というのもちょっと違うからね。
ニュースの意味とか、金額やその効果とか、大きな目線でとらえることが大切だね。
 
キウイくん:はえ~。
 
ミスターX:キウイくん。外国にあげちゃうお金もあるんだよ。バラマキってやつさ。

4. ODAってなんだ? ~有償資金協力~

『次のニュースです。リゲル国を訪れている首相は、リゲル国首相との共同会見で「リゲル国に対して5億ドルの有償資金協力をおこなう」と発表しました。リゲル国のさらなる経済発展が期待されます』
 
 
キウイくん:こういうニュースはちゃんと読まないといけないんだ。
ミスターXはわかってないよね。
 
ミスターX:これは返ってこないお金だよ。外国にあげちゃうんだ。それで日本や国民に何の得があるの?
メガネの人気取りのために税金が使われるんだよ。キウイくんは節約に励んでいるのにひどい話だよね。バラマキっていうんだよ。
 
キウイくん:うぬ~! 許せん、このメガネっ!
 
 
キウイくん:見てよこの記事、ルルさんっ!
ボクらの生活は苦しいのに、バラマキだなんて…
このお金は返ってこないんでしょ。ひどいよ。
 
ルルさん:なるほどね。
それじゃあ、ここからが本番になるよ。
 
今回の話は、「国際協力」と呼ばれる分野に使われるお金で、「政府開発援助|(Official Development Assistance)」というものだよ。
略して「ODA」だよ。ここはテストに出るから覚えておいてね。
 
キウイくん:おっと、赤ペンで書いとかないと。
んで、なんか難しい言葉にしてバラマキをごまかしてるの?
 
ルルさん:ごまかしてるわけじゃなくて、ちゃんと勉強すればわかるからね。
 
 
ルルさん:さて、このODAには大きく分けて二つの種類がある。
一つめがさっきのニュースに出てきた有償資金協力。
 
キウイくん:むむむ。また難しい言葉が。
こういうところだよね。難しい言葉を使ってごまかそうとしてさ。
 
ルルさん:まあまあ。
 
それで「有償資金協力」というのは、お金を貸して、あとで利子をつけて返してもらう、というものだよ。
 
「協力」という言葉が使われているけど、要は貸し付け、もっと平たく言うと相手の国にお金を貸すということだよ。相手の国からしたら借金だね。
別の言葉で「円借款」とも呼ぶよ。
 
キウイくん:キタ~! 貸した金、返さんかい。コラァ!
ド・ゲ・ザぁ!
 
ルルさん:そんな悪徳じゃないよ。
利率は0.2~2.0%で、返済期間は数十年といったところだね。これは相手国によって条件が違ってくるよ。
 
実際、こうしたお金は利子をつけて返ってくるわけだから、長期的に見ればむしろ日本にとってはお得だよね。
それでも批判する?
 
キウイくん:う~ん。それなら、まあ…
でも、返さないでバックレちゃうということは? 夜逃げとか?
 
ルルさん:借りる相手は国家だからね。
夜逃げしようにもどこにも逃げられないよ。
まあ、「デフォルト」といって、要するに財政破綻をする国家はあるかもしれないけど、そうそうは起こらないし、そうなったら国際機関が支援するからね。
 
キウイくん:確かに。
けど、ホントにちゃんと返ってきてるの?
 
ルルさん:そこは大切だね。
例えば中国は、総額で約3兆3600億円を円借款として日本から借りていて、そのうちの2兆7000億円を返済しているよ。返済が滞っているなんてこともないよ。
もちろんこれは元本なので、利子は別に上乗せしているからね。
 
キウイくん:えっ、なんか意外。
 
ルルさん:踏み倒してると思った?
実は中国は円借款の返済に関しては優良国なんだよ。中国に対する日本のODAは終了していて、10年以内には完済するだろうね。
 
キウイくん:ふ~ん。
そうやって返ってくるなら良いかな。
 
ルルさん:キウイくんとかミスターXもそうだけど、その国に対して持つイメージだけで物事を判断するのはよくないね。
逆に、この分野では優良国だからといって、その国のふるまいすべてを肯定するものじゃないから、注意しよう。
人もそうだけど、国も良い面もよくない面もあるからね。良いところはちゃんと認めて、よくないところはしっかりと指摘する。広い視野を持つことが大切だよ。
 
キウイくん:なんか深い話になってきた。
でも、ミスターXは返ってこないお金だって言ってたよ。それは何なの?

5. ODAってなんだ? ~無償資金協力と技術協力~

ルルさん:それじゃあ、ここからは返ってこないお金の話だよ。
 
キウイくん:やっぱりそういうのあるんだっ!
許せん。税金泥棒めっ!
 
ルルさん:まあまあ、とりあえず聞いてね。
前に出てきた有償資金協力(円借款)はようするに借金だから、返すあてがないと借りることはできない。
ということは、あるていどその国の社会が安定していないとならないということだね。
 
その国がなくなっちゃったので返せませんとか、クーデターが起きたので前の政府が借りたお金はチャラです。
なんてことになっちゃうからね。
 
キウイくん:そうそう。そういうとこだよ。ボクが心配してるのは。
 
ルルさん:なので、紛争が終わったばかりとか、まだまだ国として安定していないとか、そういった国に対しては「無償資金協力」が行なわれるよ。
この無償資金協力はキウイくんが言ったように、返ってこないお金だね。
 
キウイくん:それそれ。なんでそんなことするの?
そんなことするお金があるならボクにもちょうだいよ。
 
ルルさん:そう。
そこを把握していないとただお金を配ってるだけに見えてしまうからね。
 
まずは、その国の社会を安定させて今後につなげるためだね。
 
キウイくん:今後って?
 
ルルさん:社会が安定していないということは、社会が安定すれば投資や貿易の対象として魅力的だということだよ。
労働力を得やすかったり、人件費が安かったり、レアメタルや石油を有している国とかもある。
しかし、社会が安定していないので企業が進出することも難しい。
 
なので、今は返ってこないお金をあげても、後になって十分にリターンが見込めるということだね。
むしろ、日本が今までいろいろな国に継続的にこうした支援をしてきたからこそ、今の日本の人たちの生活が安定しているともいえるね。
 
キウイくん:なるほど。
でも、社会が安定したころに前に言ったように企業とかが投資をするんじゃだめなの?
 
ルルさん:それが、「国と国とのつきあい」の部分だね。
 
例えば、「リゲル国での戦争が終わったとき、国の復興に日本は無償でたくさん助けてくれたから、日本企業が進出する際には法人税を優遇しましょう」とか。
 
なので、相手国の状況に応じて、「無償資金協力」→「有償資金協力」→「民間の投資」というふうに支援の形が変わるよ。
正確には同時進行の部分も多いんだけど、どの支援に力を入れるかをその国の状況に応じて決めているんだよ。
 
キウイくん:ふ~む。
でも、お金だと「おぬしもワルよのう」なんてことがあるんじゃないの?
あとは、政治家の別荘とか変な箱モノ作っちゃったとか。
 
ルルさん:あるだろうね。
なので、日本の場合は、無償資金協力のお金の使い方を指定したり、お金じゃなくて「技術支援」という形もとっているよ。
 
キウイくん:技術支援?
 
ルルさん:そうそう。
私が参加した海外協力隊とか、各分野の専門家の派遣、相手国からの留学生や研修生の受け入れ、といったことだね。
 
お金をあげるだけだと悪いことにも使えてしまうし、相手国の自立につながらないからね。
こうしたお金じゃない形での支援も積極的に行なわれているんだよ。
 
キウイくん:そういうのもニュースでよく聞く支援のお金の中に入ってるの?
 
ルルさん:入ってるよ。
ニュースでは金額しか言わないから、ただお金をあげているように思ってしまうかもしれないけど、実際にはお金じゃない形も多いよ。
 
キウイくん:ぜんぜん知らなかったよ。
 
ルルさん:「無償資金協力」とか「技術協力」は国の基盤そのものを整える役割があるから、農業・医療・交通インフラ・エネルギー・教育、それから行政と、いろいろな範囲にわたるよ。
人が生きていくために、国家を維持するために、必要なことだね。
 
ひいてはそれが日本のためになるわけだね。
そう聞いても必要ないとか、税金の無駄だと思う?
 
キウイくん:う~ん…
 
 
ミスターX:今日もキウイくんは半額の野菜しか買えなかったの?
海外に30兆円も配っちゃったからね。仕方ないね。

6. どれくらいの予算が国際支援に使われているのか?

キウイくん:コラァ! ルルぅ! いくらなんでもこれはやりすぎだァ!
 
ルルさん:ふう。こんどはミスターXに何を言われたの?
 
キウイくん:200兆円だって、200兆円。こんなに海外に配っちゃったんだよ。
国際協力が大切だからってやりすぎだよ。
 
ルルさん:ふむ。
その200兆円とか書いてある資料とかあったら見せてくれる?
内訳を確認したいから。
 
キウイくん:えっ、ミスターXが言ってたよ。内訳とかはわかんない。
 
ルルさん:やっぱり。とくに資料はないんだね。ミスターXはいつもそうだね。

じゃあ、今回は国際協力の予算について話そうね。
まずは、その200兆円は間違い、というか悪質なデマだね。
 
キウイくん:えっ、えっ、そうなの?
 
ルルさん:そう。
まずは、令和5年度の予算だと、ODA(政府開発援助)の予算が、約5700億円だね。
ODA予算(リンク)
 
キウイくん:え~と、200兆円は?
 
ルルさん:ミスターXが盛りに盛ったんだね。
牛丼つゆだく、玉ねぎ多め、たまご二個、紅しょうがのせ放題、味噌汁とお漬物のお替り自由、くらいにね。
 
キウイくん:何それ美味しそう。
でも、紅しょうがはのせすぎると牛丼の味がわからなくなっちゃうね。
 
ルルさん:それはともかく、そうやって根拠のないデタラメの数字をあげて注目を集めようとするのはよくあるね。
閲覧数を稼ぎたいだけの悪質なミスターXと某チューブがやりそうだね。
あとは感情を煽って自分の本を売りつけようとしたり。
 
キウイくん:ううっ、また騙された。
でも、やっぱり何千億円とか多すぎない?
前の有償資金協力でも3兆円とか出てきたけど、兆円なんてサイコロを転がして物件を独占するゲームでしか聞いたことないよ。
 
ルルさん:そう。それだけで聞くと大きな金額だ。
ところで、キウイくんは日本の国家予算っていくらくらいだか知ってる?
 
キウイくん:えっと、さあ?
 
ルルさん:令和五年度では、約114.4兆円だね。
 
キウイくん:美味しい棒が一本、二本、三本…
 
ルルさん:10兆本まで数える?
 
キウイくん:め、めまいが。
 
ルルさん:こうした国家政策に関わる金額は日常で接するのとは桁が違いすぎるから、注意が必要だね。
そして、さっきのODAの予算は約5700億円。ということは、約0.57兆円ということで、国家予算の0.5%くらいだね。
 
キウイくん:レーテン、少なっ…。えっ、そんなもんなの?
 
ルルさん:実際は予算より多くなったというのが常なので、実績を見ると約2兆3000億円。
まあ、とくに有償資金協力の利率と返済期間とかの影響も受けて、これは計算方法がややこしいので多めに算出されるけどね。
 
それにしても、国家予算の約2%だ。
あと、これには国連とかの国際機関への拠出金なんかも含まれているし、「無償資金協力」や「技術協力」といった返ってこないお金はさらに少ないよ。
 
キウイくん:(絶句)
 
首相:わかりましたっ、大盤振る舞いですっ!
みんなが言うなら、国際協力なんかやめちゃいます。
国際機関からもぜんぶ脱退です! 我が代表堂々退場すっ!
そのかわりにみんなにこの予算をばらまきますよ~!
 
キウイくん:うれしい!
 
首相:はい。年間2万円。
 
キウイくん:えっ、少なくない?
これじゃあ、一か月の家賃にもならないよ。
 
ルルさん:日本の人口は1億2千万人だからね。一人あたりはそのくらいになるね。
しかも、計算しやすいようにODA実績は2兆4000億円としてるみたいだから、ちょっと多めになってるよ。
よかったねえ。
 
キウイくん:うん。まあ、嬉しいけど。
 
ルルさん:そのかわり、世界中の国からの信頼は失ったから、日本は孤立してこれからは貿易とかでも苦労するだろうねえ。
日本バッシングもあるかもね。石油も買えなくなるかもしれないし車も売れなくなるかもね。
エネルギーや食料なんかの物価も爆上がりして、失業する人も増えて、2万円じゃすまないかもしれないけど、がんばって生活してね。
 
キウイくん:ちょっとちょっと、ちょっとまって。
 
ルルさん:どうしたの?
 
キウイくん:今まで支援をしていた国からの信頼がなくなるってのはあるかもしれないけど、アメリカとかの大きな国は?
そういう国には支援とかしてないんでしょ? 関係ないじゃない?

7. 国際支援の協調性の大切さを学ぶ

ルルさん:さて、これまでは日本の国際支援についてみてきたけど、他の国についてもみてみよう。
 
キウイくん:ルルさんの言うことはなんか疑わしいんだよね。大げさというか。
本当に日本が孤立するなんてあるの?
 
ルルさん:ミスターXの言うこともそのくらい疑ってね。
 
まず、OECDという国際機関がある。
経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)という機関なんだけど、ようするに世界の経済発展について考える役割があるんだ。
 
そのなかに、開発援助委員会(Development Assistance Committee:DAC)という委員会があって、アメリカとかイギリスとか、いわゆる先進国と呼ばれる31か国がメンバーになっているよ。あと、EUも。
この委員会で、開発途上国への支援について話し合われるわけだ。あ、テストにでるからね。
 
キウイくん:おっと、蛍光ペン。
それで?
 
ルルさん:なので、国際支援のお金を出すのは主にこのDACのメンバーだよ。
お金を出しているトップはアメリカで、一年間に約553億ドル。
2…ドイツ 350億ドル
3…日本 175億ドル
4…フランス 159億ドル
5…イギリス 157億ドル
……
(2022年)
※EUは除く
 
キウイくん:はえ~、すっごいお金。
 
ルルさん:とはいっても、国ごとに人口や国家予算や物価なんかも違うから、金額で比べるのはよくないね。
というわけで、「国民総所得|(GNI)」に対してどのくらいを海外支援に使っているかを比較するのが一般的だよ。
 
そうすると、トップはルクセンブルクで、1%。
2位…スウェーデン 0.9%
以下、ノルウェー、ドイツ、デンマークと北欧や西欧の国が続くよ。
ドイツは実際に出している金額も所得に対する割合も高いね。
 
12位…イギリス 0.51%
13位…ベルギー 0.45%
14位…日本 0.39%
14位…オーストリア 0.39% 
 
と続いて、ここで半分だ。
 
23位…ニュージーランド 0.23%
 
25位…アメリカ 0.22%
 
……
(2022年)
※EUは除く
※各国のODAの拠出額およびそのGNIに対する割合(リンク)

 
アメリカは金額では多いけど、GNIに対して出している割合は少ないとなるね。
わかりやすく言ってしまえば、お金は持ってるけどあまり出してないってことだ。
 
キウイくん:ケチだねぇ。お金があるならもっと出したら良いのに。
 
ルルさん:だよね。そう思われるよね。
実際に国連(UN)は0.7%以上にすることを目標にしているし、上位の国が下位の国に対して物申すこともある。
 
で、例えばアメリカがこの状況で、「ウチは国内しか考えないので国際支援はやめます」なんて言ったらどうなると思う?
 
キウイくん:そんなの不公平だし、世界中から総スカン。
あっ…!
 
ルルさん:というわけだ。
こうした国際支援は先進国が協力し合って行なわないとならない。その足並みを乱すことは許されないんだよ。
 
キウイくん:そっかぁ。
でも、日本にもいろいろ問題はあるじゃない?
そっちをおいといて国際支援というのもちょっと心情がね。先に国内の問題を。
 
ルルさん:ちなみに、キウイくんは国内がどんな状態になったら国際支援をしても良いと思う?
 
キウイくん:そりゃあ、ゆりかごから墓場まで支援がしっかりしてて、子どもを産んでも負担がなくて、学校にも無料で行けて、病院もタダで健康な生活ができて、税金が安くて、物価は安いけど給料が高くて、美味しいものを食べたり旅行したりする余裕のお金があったら。
 
ルルさん:素敵な国だね。
で、どこにそんな素敵な国があるだろう。
 
キウイくん:ニュージーランドとか、どう?
 
ルルさん:実際の生活の様子を調べてみたらよくわかるよ。
これもミスターXとかが「どこそこの国は素晴らしい。日本は終わった」なんて言ってるけど、実際に住んでいることの話を聞けばどの国もそんな理想の国ってわけじゃないってことがわかるからね。
要するに、「隣の芝生は青い」ってやつだよ。

どんな国も多かれ少なかれ問題があるんだよ。国民すべてが満足してる国なんて幻想でしかないんだよ。
それでも世界の発展のために各国はお金を出しているわけだよ。
そんな中で「ウチはいろいろ問題があるから出しません」というのはまかり通らないわけだね。
 
キウイくん:う~ん。
でもでも、ボクの生活だって大変なんだよ。家賃だって光熱費だってけっこうかかるし、食べたいものも我慢しなきゃならないこともあるし。
値上げとかもちょいちょいあるし。
 
ルルさん:それはさっきの国際支援ランキング上位の国も一緒だよ。
カフェで朝食を食べたら3000円近いなんて国もあったり、税金がものすごく高かったり、医療体制が悪くて治療を受けるのが早いかあの世へ行くのが先かなんて国もある。
先進国であっても生活が苦しい人はたくさんいるんだよ。
 
ここで、国際支援の目的をもういちど見てみよう。
 
キウイくん:ボクたちの生活や国の利益のために、というのはわかったよ。
他にもあるの?
 
ルルさん:もちろん。
ところでキウイくんは、風雨をしのげる家があって、暖かい布団で寝て、暖かいシャワーもあって、スマホとかPCを持ってて、具合が悪くなったら病院にも行けて、たまには美味しいものを食べに行ったりできるよね。
 
キウイくん:うん。まあ。そりゃあそうだけど。
でも、お金はけっこうカツカツだよ。
 
ルルさん:それって世界的に、とくに途上国(後発開発国)と呼ばれる国の人から見たらみたらかなり高い生活水準なんだよ。
キウイくんはたいへんではありながらも世界がうらやむ生活をしているのに、食べ物がない人や戦争で親を亡くした子のことを見ないふりして、国際支援なんてやめちゃえと言う。
 
人道的に、それで良いの?
 
キウイくん:いや、ボクはそんなつもりじゃなくて。
ただ、そういう国があるっていうのは知らなくて。
 
ルルさん:だから勉強が大切なんだよ。
国際支援が何のために行なわれるのか、支援の対象となっている国はどんな国なのか。
 
そうすれば、ミスターXに踊らされることもなくなるね。

8. 国際支援のちょっとウラの話

『次のニュースです。アルタイル諸島で日本が支援していた病院建設プロジェクトが中断していることがわかりました。外務省は調査中であると発表しています。このプロジェクトに日本は500万ドルを支援しているとのことです。』
 
キウイくん:無駄遣いだよ。まさに無駄遣い!
 
ルルさん:無駄遣いだァ! 許せんっ!
 
キウイくん:あれっ、えっと?
 
ルルさん:どうしたの?
 
キウイくん:いや、てっきり、これにも何か事情があるのかと。
 
ルルさん:事情はいろいろあるだろうけど、あってはならないことだね。
無駄遣いと言われたら、その通りだ。
 
キウイくん:あっ。うん。なんかいつもと違うから調子が狂うなあ。
 
ルルさん:実際、こうしたトラブルは多いんだよ。
インフラ整備のプロジェクトが途中で止まった。使途不明のお金。つくったものの現地の人の役にはたっていない。有償資金協力のお金が返せなくなった。
 
キウイくん:許せん!
 
ルルさん:そう。
だから、事前の計画をしっかりしてそこにお金を使っても良いかを検討することは大切だね。
まあ、しっかり計画してても、その国の事情でうまく進まなかったりするのは仕方のない一面はあるけどね。
 
だからといって、そうした悪い事例のみを見て国際協力をすべてやめろというのは暴論だね。
それに、国際支援そのもののあり方についても考えないとならないね。
 
キウイくん:国際支援のあり方って、どういうこと?
 
ルルさん:よくあるのが、受ける側の支援まちだよ。
お金を配ることで、支援を受ける国が「待っていれば先進国がお金をくれる。そのためにはちょっと貧困の方が良い」なんて状態になってしまうことだね。
 
キウイくん:でも、その貧困の人は食べるものにも困ってたりするんでしょ。
 
ルルさん:そうした人たちを意図的にそのままにすることで、上の人たちの懐にはお金がたくさん入ると。
 
キウイくん:汚いっ!
 
ルルさん:とくに欧米の国々はお金を配っておしまい、ということが多いからね。
ODAのうち実際に無償資金協力とかの「帰ってこないお金」で90%を超えている国がほとんどだ。
貸し付けである有償資金協力は全体の数パーセントにすぎない。
そうすると、支援を受ける側もなにも努力しなくなってしまうんだ。むしろ成長しない方が得だとね。
 
キウイくん:なんかヤだな。ボクたちのお金でしょ。
 
ルルさん:その中で日本は特殊で、有償資金協力の割合が突出して高くて50%にもなっている。これは、そうした支援まちをつくらないようにするためだね。
実際に日本が支援に力を入れているのはアジアの国々が多いんだけど、そうしたアジアの国々は順調に成長して国民の生活もどんどん豊かになってるよ。
※各国のODAの内訳および支援先(リンク)

アジアの国々で作られた製品とか、私たちもお世話になってるよね。それはこうした国々の成長の恩恵として日本に返ってきてるんだよ。
それに、戦争中の不幸な歴史があったのに、日本に対する評判も極めて良い。 

キウイくん:それなら、まあ、わかるけど。
 
ルルさん:とはいえ、無駄な面なんかもある。だからといって前に言ったように国際支援をやめるわけにはいかないのが現状なんだよ。
これに関してはもっと世界全体で話し合わないとなんだけど、いろいろあるからね。
 
キウイくん:いろいろ?
なんかおもしろそう。教えて!
 
ルルさん:国際支援というのは前にも出てきたように国益や人道的な意味合いがあるのはもちろんなんだけど、国際政治の面もあるんだよ。
 
キウイくん:わくわくっ!
 
ルルさん:例えば、国連ではいろいろなことを決める際には投票が行なわれるんだけど、どんな小さい国でも加盟国であるからには一票を持っているわけだね。
となると、「いろいろ支援しますんで、どうかひとつウチの意見に賛同をヨロシク」とかね。
 
キウイくん:黒い、黒いよっ!
 
ルルさん:ちなみに、台湾がいろいろな小さい国に積極的に支援をしているんだけど、理由はわかるね。
 
キウイくん:ま、まさか。。。
 
ルルさん:そして、いわゆる「西側諸国」が積極的に国際支援に取り組むのも、そういうことだよ。
 
キウイくん:ああ~
 
ルルさん:ぶっちゃけ、中国だね。前はロシアというかソ連に対するけん制だったけど。
 
キウイくん:あっ、言っちゃった。
 
ルルさん:中国はいわゆる開発途上国を中心にお金を使って影響力を強めているんだ。
そして、それは先進国へのプレッシャーにもつながっている。
 
そこで、先進国がいろいろな国で自身の存在感を示す必要があるね。その手段の一つが国際協力だよ。
 
キウイくん:今までの話がぶっ飛ぶ展開に。
 
ルルさん:もちろん、自国の利益とか国際的な協調とか人道支援といったことがあるのは忘れないようにね。
 
しかし、そうなると、ミスターXの論調は矛盾しているんだよ。
 
キウイくん:どうして?
 
ルルさん:ミスターXは「中国の脅威が」とか言ってるよね。
 
キウイくん:うんうん。いつも言ってるよ。
 
ルルさん:しかし、それを牽制する手段である国際協力はやめろと言っている。
いったいどうしたいの?
 
キウイくん:あっ、確かに。
 
ルルさん:まあね。こんな具合に外交というものはとてつもなく難しいんだよ。
しかも、国際支援は長期的な視野に立つものだから、政権が変わったくらいで止まることはない。
 
キウイくん:どうして?
 
ルルさん:例えば首相が変わったり与野党が交代したりして方針が変わって、「病院つくってたけど首相が変わったのでやめます」とか「野党が政権をとったので、今まで貸してたお金ぜんぶ返してください」なんて言えないよね。
そんなことしたら信頼なんて一瞬にしてなくなるからね。
 
キウイくん:そりゃそうだよね。さすがに勝手すぎるよ。
 
ルルさん:ということは、首相を批判するのも見当違いだね。
 
キウイくん:なんで? 政策とかの責任者は首相でしょ?
 
ルルさん:さっきも言ってたように国際支援は長期的なプロジェクトなんだよ。
 
例えば道路を作るにしても、都市計画とかから考えないとだから、何年もかかる。
首相がちょっと海外に出かけて行って、「じゃあ支援します」なんて決まるわけじゃない。相手国も急に言われても「お願いします」なんて言えないよ。他の支援国との調整とかもあるからね。
そもそも、首相が行く前から、何なら前の首相の時や前の政権の時に決まってるんだよ。首相はただ発表しただけだよ。
 
ちなみに、私がこの話をすると「首相とか政権を擁護するのか」なんて言われるんだけど、その指摘も違うことがわかるよね。
首相や政権の独断で決まる話じゃないのに、擁護も批判もないからね。
 
キウイくん:それじゃあ、例えば無駄遣いがひどくなったとして、選挙に行っても何も変わらないの?
 
ルルさん:まず、「国際支援をやめよう」なんていう政党はないだろうね。
前も言ったように、そんなことをしたら将来のみんなの生活がもっと苦しくなる可能性が高いからね。
 
なので、この件で政策を論じるのであれば、個別の案件をしっかり調べて「この部分がおかしいです」と意見するとか、「支援のあり方」について議論するのが適切だね。
 
ただ、無駄な部分とか適切な支援の方法を検証するという方針なら良いだろうけど、この分野は「何が無駄か」というのはわかりにくいんだよ。
 
キウイくん:わかりにくいって、どういうこと?
 
ルルさん:よくミスターXが「その支援に対して何が得られたのか」なんて言うんだけど、その評価はほぼ無理なんだよ。
 
例えば、「1億ドルの支援をした結果、アルタイル諸島の日本に対するイメージが上がりました」と言っても、イメージの善し悪しは金額にはできないよね。
 
キウイくん:うん。
 
ルルさん:だからといって、とりあえずやめてみるというわけにはいかない。
信頼を積み上げるのは難しいけど、崩れるのは一瞬だからね。
 
とりあえず国際支援をやめてみたら日本の人たちの生活が苦しくなって、「御国の大切さがわかりました。やっぱりこれからもよろしくお願いします」と言ったところで、「日本は信用できない。これからは某国と仲良くしてくから、もう遅いよ」なんて言われてしまったら?
 
キウイくん:ああっ…
 
ルルさん:もちろん、日本が国際支援をやめたからといって、これまでとは変わらないかもしれない。
けれど、信頼を失ったときのリスクは大きすぎるし、再び信頼を得るまでの長い期間を国民は耐えないとならない。
その覚悟があるなら、「国際支援をやめます」といって立候補するのも良いかもね。
 
キウイくん:さすがにそれはちょっと…
 
ルルさん:ミスターXが言ってることがいかに矛盾してて、無茶なことかがわかるかな。
 
キウイくん:よくわかったよ。
ボクたちの知らないところでそんなことが繰り広げられてたんだね。

9. まとめ

ルルさん:まあ、そんなわけで、国際協力というものが私たちの生活の身近なところから国際政治まで、とても大切だというのがわかったかな。
 
キウイくん:うん。
国際協力を通した国と国とのつながりはボクたちの生活の安定に関わっているし、ということは国際協力がなくなるとボクたちの生活がたいへんになってしまうんだね。
それに、国際協力といってもいろいろな形があるから、ただ金額だけをみて批判するのはよくないね。ちゃんとどういうことなのか理解しないと。
そして、困っている人を助けるというのも大切なことだね。
 
ルルさん:そういうこと!
 
キウイくん:ただ、無駄遣いもあるし、そこはしっかりと指摘しないとダメだね。
あとは、世界のウラの駆け引きを知ってちょっと怖くなったよ。
 
ルルさん:そういう点はとくに強調されやすいから、情報に接するときは気をつけようね。
 
キウイくん:うんうん。
けど、やっぱり効果がわかりにくいってのは、ちょっとね。税金だし。
 
ルルさん:だから税金でやるんだよ。
 
キウイくん:えっ?
 
ルルさん:例えば、「○○円に対して××円の効果があります」なんてことがわかれば、それが利益になるなら民間の会社がやるだろう。
 
キウイくん:それはそうだね。
 
ルルさん:そういう効果が明確にはわからないけど、ないと困る。
そういうことをやるのが国や地方自治体の仕事だよね。
 
キウイくん:まあ、確かに。
 
ルルさん:例えば道路を作っても通行料を徴収できるわけじゃないので企業にとって利益にはならないから、民間企業じゃなくて国や地方自治体が作るよね。
道路がないとみんな困るし、新しい道路ができれば物流コストが下がってみんなに恩恵があったりする。
 
もちろん、誰も通らない無駄な道路はあるかもしれない。生活が苦しいから自分に還元してほしいという意見もあるかもしれない。
だからといって、道路を全く作るなというのはおかしいよね。そうして道路が使えなくなっちゃったらスーパーに行っても品切ればっかりで、売ってるものはとっても高いなんてなっちゃうからね。
 
国際支援もこれと同じことなんだよ。
 
キウイくん:あっ、そう言われると必要なものだっていうのはわかりやすいかも。
 
ルルさん:あとは、国際支援に使われる資金が多くても国家予算の2%くらいということは、それ以外の98%は国内向けのわけだよ。
もし、生活に困っている人に対する支援が足りていないのであれば、そちらを見直すのも大切だね。
国際支援を減らしたりやめたりして国の信用を落とすというリスクを負うより、国内向けの予算の見直しをする方が効果は大きいだろうからね。
 
キウイくん:そっか。国のほとんどのお金は国内の人に使われるんだね。
金額が大きすぎて麻痺してたよ。
 
ルルさん:あとは、直接的な金額とかは算出できないけど、事例としてはいろいろあるよ。
ひとつ例をあげてみよう。
 
東日本大震災では日本は大きな被害を受けた。それに対して、多くの国から支援を受けたんだよ。
いつも日本にはお世話になっているから、とね。
※東日本大震災の各国の公的な支援(リンク)

これは国の公式の支援だけだけど、ここには載っていない民間団体の支援もたくさんあったんだよ。
 
私が海外協力隊で赴任していたのはちょうど震災があった時期なんだけど、その村は電気も病院もないところで、キウイくんのような生活なんて夢のまた夢という地域にもかかわらず、みんな日本のためにってお金を寄付してくれたんだよ。
 
キウイくん:泣ける。。。
 
ルルさん:けっきょく、国と国とはいっても、人と人であることに変わりはないんだよ。
 
ルルさん:国内ばかりを見ていると、その国の悪い点ばかりが目に付いてしまうけど、「この国は外国とどうつながっているんだろう」とか「そのつながりは自分の生活にどんな影響があるのか」とか、「そのつながりを維持するためにどうしてるんだろう」とか、考えてみるのも視野が広がって良いかもね。
 
実際に支援がおこなわれている国を調べてみるのもおもしろいよ。
どんな国でどんな支援がされているのか、ってね。
 
余裕があったら実際にそうした国に旅行に行くのも良いね。
ちょっとの経験だとしても何倍も視野を広げてくれるからね。
 
キウイくん:うん。じゃあ、視野を広げるために、とりあえずハワイに連れてってよね。
 
ルルさん:物価とドル高……、解散っ!



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