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バリに行けなかったサザエ

夫の長期休暇に合わせて、数ヶ月前から、年末前に行くぞと予約していた家族旅行。寒さから逃げるように、常夏のバリ島で、海辺のヴィラに泊まって、サファリパークで象に乗って、ウブドで森林浴をして、ハイビスカスに囲まれてマッサージをして、久しぶりに家族3人でゆっくり過ごすつもりだった。

この日のために、ただでさえ忙しい師走の年末進行のなか、睡眠時間を削って仕事を前倒しで必死にやってきた。

準備もままならず、夏服を引っ張り出して、サンダルと帽子と水着を用意して、巨大なスーツケースに詰め込んだのは出発前日の20時。カメラを充電して、貴重品をポシェットに入れようとして……

「まあ、パスポートさえあればなんとでもなるよね」とパスポートを開いた瞬間、顔面蒼白。ヒィーーーッーー息が止まるかと思った。

パスポートの有効期限が切れてる……

うえええええええええっええええええっっウソでしょ?!もうほとんど記憶がないけれど変な声が出て、体から力が抜けて崩れ落ち、心と体がガクガクと震えた。

一縷の望みをかけて、ネットで「パスポート 有効期限切れ 渡航」と検索するものの、パスポート申請には1週間かかるという情報しか出てこない。なんならバリは残存期間が6ヶ月以上必要だという。どんな手を使っても無理じゃ…? 大抵のことは「なんとかなる」と思える私だけど、さすがにこのときばかりは希望の光が一切見えず白目を剥いた。

やってしまった。アホすぎる。なぜ、今まで確認しなかったのだ。夫に自分と娘のパスポートの写真を送って航空券を予約してもらった。名前は入念に確認したのに、日にちは見てなかった。なんでよ。あの時こうしていればという想いが頭をよぎるけれど、すぎてしまった過去はどうにもこうにも取り戻せない。

私の目は節穴だ!!!!どう考えても。何度失敗しても学ばない。

以前、夫と結婚してすぐにいった海外旅行でも、私はパスポートは旧姓のままなのに、はりきって新姓で予約をしてしまったことがあった。チケットをキャンセルしてとり直し、私たちは違う便でその地に降り立ち、帰りの席もバラバラだった(その際、隣の席に座ったワインボトルを持ち込んで酔いに酔っていた中国人のおじさんが暴れ出して、機長に警察に通報するから証言をしてくれと言われたことも)。

それは昔、成田空港ターミナル駅ではなくなぜか成田駅に向かってしまい、到着が遅れに遅れ空港の館内放送で呼び出されたこともあった(ギリギリ間に合った)。

明日バリに飛べないなんて。やだやだやだやだやだやだやーーって子どもみたいに足をばたつかせて、立ち上がったり倒れこんだり、しばらく変な動きをしていた。この日のために身を粉にして頑張ってきたのに。もう頭の中は半分バリに飛んでいたのに。うわーーーーんとまじでちょっと涙が滲んだ。体の力が抜けて、そりゃあもう放心状態よ。

その間、夫は淡々と航空会社に電話をして、航空チケットとホテルをキャンセルしていた。前日のキャンセル料、飛行機が一人2万円×3人分、ホテルは13,000円。計73,000円が失意のうちに跡形なく消えてしまったけれど(涙)、当日なら全額100%失う可能性もあったから、夫の冷静な判断に感謝したい。

自分に絶望しているときに、一切私を責めずに、「るりか、やっぱり持ってるね〜」と笑ってくれた夫(何も持ってない。ちょっと使い方違わないか?)と、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とニコニコ頭を撫でてくれた娘に救われた。

落ち込む私を救ってくれたのは夫と娘だけではない。私には、ままならない日々や自分に失望したときに、気兼ねなく弱音を吐ける、友人同士のLINEグループがある。

仕事に家事育児に追われついため息を漏らしてしまう私たちには、誰にも気を遣わず、誰も傷つけずに、つらいときはつらいと言える場所が必要なのだ。

その朝も、3歳の息子がインフルエンザにかかり5歳の娘も保育園に行けず、特別に在宅勤務で連日、子育て看病、家事、仕事をワンオペでこなす友人からの弱音が届いた。そう、仕事に家事育児、頑張っても人知れずなかなか褒められない私たちは、お互いに労い褒め讃えあっている。愚痴も失態もままならない日々の生活も、私たちは言いたい時にそこで吐露する。

私をよく知る友人たちは、何度失敗しても直らない注意散漫な私を「サザエ」と呼んで笑って、悲劇を珍事件に昇華してくれる。

(別のタイムライン、このふたりの友人はつながっていないのに、サザエ!!という反応が同じで笑った)

失敗をして落ち込むことも、どうしようもない自分が嫌になることもあるけれど、沈む私に浮き輪を投げてくれる人がいる。物理的な距離があってもすぐにそんな居場所に直結できるLINEグループは、私の寄る辺となっている。自分一人で前を向けないときは、ためらわず、いつだってその懐に飛び込むのだ。

いやーそれにしても私ってやつは。「サザエでございます〜!」なんて開き直る前に、もっとちゃんと気をつけよ!!!パスポートは予約をする際に名前と有効期限を確認。これ絶対。

年に1度あるかないかの夫のちょっと長い休み。お金を無駄にしても家族の時間は無駄にないよう、気を取り直して、いざ、八丈島へ!

温泉に浸かって、海を眺めて、マッサージをして、海鮮料理を食べて、家族3人でゆっくり楽しむぞ!!

では、いってきまーす!!




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徳   瑠里香

読んでくださりありがとうございます。とても嬉しいです。スキのお礼に出てくるのは、私の好きなおやつです。

千成もなかのあん(カルピス)バターどらやき
ライター・編集者。出版社で書籍・WEBメディアの企画・編集・執筆、著者の会社でブランドの編集(PRや店舗運営)などを経て、独立。ウルトラ忙しい夫と娘と3人家族。著書『それでも、母になる 生理がない私に子どもができて考えた家族のこと』(ポプラ社)