『アクタージュ』という漫画を愛していた男のただの心の叫び

アクタージュが終わった。
この結末は仕方がないというか、至極妥当で、そりゃそうだよなとしか言えない。
正直に言えば、「性犯罪の容疑で逮捕された」という情報が出た時、僕は

「でもまだ容疑だし」

とか、

「原作者を騙っているだけの別人かもしれない」

とか、いろんな現実逃避をした。
それがただの現実逃避だと分かっていても、そうせずにはいられなかった。
それほどに好きな作品だった。
でも、そうではないと突き付けられて。
被害に遭った方が、実際にいることが確定して。
連載終了が、ジャンプから公式に発表されて。
しろ先生が、あんなツイートをリツイートして。
そして今、アクタージュ123話を読んで。

僕の中から、色々なものが溢れてしまった。
だから、これを書いている。




分かっている。
こんなの、世間にとっては、ただの消費コンテンツだってことは。
僕がどれだけ避けようとしてもしつこくトレンドに載って、挙句の果てにはトレンドトピックとかいう消せないNEWS記事みたいなのに載って。
そうして思わず覗いた先では、アクタージュを好きな人から嫌いな人まで、いろんな人が好き勝手に喋っていて。

本当にTwitterのトレンドを消せるようにしてほしいと切に願う。

でも、僕に追い打ちをかけるのはそれだけじゃない。

妹は

「アクタージュ連載終了したねww」

と軽く言う。

友達は

「君の大好きなアクタージュについて一言どうぞ」

とLINEをよこす。

ネットでは

「アクタージュ、誰か他の人が原作引き継いでくれないかな」

と訳の分からないことを言う。

他の誰かが原作を引き継いでも、それはもうアクタージュじゃないだろ……?

それはもう『アクタージュ』という名前が同じだけの別の漫画だろ……?

あの物語は、あの二人じゃないと成立しなかっただろ……?

マツキタツヤと宇佐崎しろだからアクタージュは面白かったんだろ……?


そう思っていた僕は少数派なんだろうか。
確かに彼は犯罪を犯した。
しかも性犯罪だ。
擁護のしようもない。
相互リムの件とかも、どうしても邪推してしまう。
そのたびに辛くなる。
でも、彼が書く話は、彼が話を作って、しろ先生が描くアクタージュは、本当に面白かったんだ。
あの二人だから、面白かったんだ。
僕にとっては、あの二人こそが唯一無二だったんだ。
皆にとっては、そうじゃなかったんだろうか。


僕にとっては、ペットや自分に近しい人が死んだのと同じくらい辛いことなのに。
実際、『アクタージュ』という漫画は死んでしまったのに。

彼らにとっては日常を刺激してくれるおもちゃでしかないんだろうか。

僕が被害に遭った方を思いながら、それでも、何年後でもいいから、あの作品の続きをもう一度読みたいと願ってしまうことに、そんな葛藤を他所に、彼らは

「漫画なんかのことより被害に遭った人の心配をしろよ」

と正義を振りかざして愉悦に浸る。

そう、彼らにとっては、僕たちみたいな『それを大切に思っていた人』ですら、おもちゃにすぎないんだ。


こっち側に立つのは、何度経験しても慣れない。
小学生の頃、曾祖母が亡くなった時。
Aqua Timezという、僕の大好きなバンドが解散を発表した時。
思い出したくもない、京アニのあの日。
プライベートで、もう一つ。
そして、今。


『失う側』に立つのが、『悲しみに暮れる側』に立つのが、こんなに恐ろしいことなんだって、僕は毎回思い出す。

僕がそれを大事に思えば思うほど。
僕がそれを大切にすればするほど。
その大切な何かを失ったときの喪失感は、想像を絶していて。
大切に思わなければよかった、って。
出会わなければよかった、って。
そう一瞬思ってしまうこともある。
でも、きっとそれは勘違いだ。
だってこれほど悲しいんだから。
この悲しみを、喪失感を、大切にできているから。
忘れたくないと思えているから。


でも厄介なのは、僕がそれを大切にしていればしている程、周りの声が耳に入ってしまうことか。
僕がそれを大切にしていると知っている人から、野次馬の如く声を掛けられる。

ネットが。
友達が。
家族が。
見たくない物を、聞きたくない物を、読みたくない物を、わざわざ目の前に置いてくる。

でも、きっとそんなものなんだ。
彼らには、それほどに大切なものがなくて。
もしくはそれを失った経験がなくて。
だから、あんなに好き勝手に言えるんだ。
そう無理やり抑え込む。

でも、いつでも思ってる。

俺はお前らに怒ってるよ。
『誰かの大切なものの死』を笑えるお前らを。
「自分は関係ない」と思ってるお前らを。
被害に遭った人のことなんてたいして心配していないくせに、あまつさえそれを『愉悦の種』にできてしまえるお前らを。


まぁ、今は悲しみと喪失感でそれどころじゃないんだけど。
自分のことで精いっぱいだけど。



あぁ、何を書いているのか自分でも分からなくなってきた。
でも、元々これは溢れた感情を吐き出すために書き始めたんだし。
それでいいのかもしれない。
少しだけ、絡まった糸が解れてきた気がする。
悲しみは忘れたくはないけれど、このままじゃまともな生活もままならない。
大丈夫。
僕はアクタージュのことは忘れない。

そう言えば、この記事は公開した方がいいんだろうか。
する必要はないと思うんだけど。
でも、もし僕みたいに心がぐちゃぐちゃになっている人がいるなら。
そんな人が、これに共感したりして、少しでも気持ちを整理できるなら、公開した方がいいんだろうか。
せっかく書いたんだし。

あ、そう言えば、メイドラゴン2期が京アニでまた作られるのが決まった。
BURN THE WITCHの連載開始も発表された。
アクタージュのことがあって全力で喜べないのが本当に悲しい。
でも、僕はこの2つを応援するし、懲りずに愛することになるんだろう。
ただ、僕の中にあるこの傷が癒えて、心から楽しめる日がいつになるのかは、まだ分からないけれど。
それでも、楽しみがあるだけで、まだずっと救われた気持ちになれる。


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