エントロピー増大則と生物の進化、経済の進化・高度化

私は、学生時代、熱力学と生物の進化にとても興味をもっておりました。理由は、熱力学第二法則であるエントロピー増大の法則 ( 物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻ることはない ) と、生物の進化とは、完全に矛盾しているという事です。では、何故、生物の進化という現象が起こったのかというと、生物の基本設計図であるDNAの塩基配列はエントロピー増大の法則に従い、無秩序な変化を遂げてきたのですが、その無秩序に変化した塩基配列の中で、生物の生存にとって重要な変化だけは保持され、その積み重ねにより、どんどんと生物は高度化していったと考えます。

この基本的なコンセプトを、経済の進歩に当てはめて考察してみます。経済システムは、自由経済と統制経済と大きく二つのシステムがありますが、自由経済下においては、人々の活動の自由度が高く、即ち、エントロピー増大の速度が大きい経済システムです。これに対し、統制経済においては、エントロピーの増大速度は非常に遅いシステムといえます。自由経済においては、生物の進化と同様、ランダムな変化 (自由な経済活動) の中から、市場により選択され、不要な変化は淘汰されますが、価値ある変化は保存され、その繰り返しにより、経済はどんどんと高度化していくシステムです。イノベーションというのも、ランダムな変化があってこそ、偶然に生まれてくるものだと思います。これに対し、中国のような統制経済のもとでは、ランダムな変化を強力に抑制しているため、エントロピーの増大は抑えられ、秩序だった経済を維持できるかもしれませんが、経済の高度化あるいは進化という視点からは、自由経済と比較し、競争力において劣る経済システムだと思います。

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