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不幸なあなたが羨ましい

贅沢すぎることくらいわかってる
それでも社会に目を向けたときにいつも思うことがある。







私には原体験がない。






社会に貢献する活動をする人に今までたくさんあってきた。



学校でなじめず不登校になり、旅に出た人。

急に父親が失業して、その中でアルバイトをしながら大学進学を目指した人。

地方に住んでいることで、出る杭として打たれ続けてきた人。

両親から愛されず、自分の居場所がないと感じていた人。





今まで出会った社会のために活動している人のほとんどが、辛い過去を乗り越えてそこにいた。




まだ乗り越えれてない人のために、
そして
そんな辛さを味わう人がこの世から減ることを願って
活動を続けていた。










贅沢すぎる、そして不謹慎なことだとわかっている。







それでも、その人たちが羨ましい。







あなたには、「今の社会を変えるべきだ」という権利があるから。



そんなあなたが羨ましい。




私は
両親からたくさん愛されて
学ぶ機会、挑戦する機会が常に保障されていて
仲良くしてくれる友達がたくさんいる。







だから、私には「今の社会を変えたい」
そんなことを声高々には言えない。






だって、私はなにもしなくても幸せな明日がやってくるから。









いくら不平等・格差が是正された世界を望んだって
今の世界の恩恵を受けすぎている私は、どうしても当事者になれない気がする。





私が描いた理想の社会は、生まれつきの恵まれた立場に甘んじた、
むしろ格差を広げる社会なのかもしれない。


私が解決しないといけないといけないと思った問題は、
最も影響を受けている人にとったら放っておいてくれと思うのかもしれない。






環境問題だって、貧困問題だって、教科書で習ったりTVで取り上げられる問題のほとんどが今の私の生活を脅かさない。








だから、わざわざ発展途上国にいって、学校に通えてない子供を見て、せめて「何かしなきゃ」って心から思ったふりをする。



そうして原体験を創ろうとする。

「社会を変える」って言っても、批判されない権利を得ようとする。











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先日、内閣府で主催する「世界青年の船」の事前研修に行った。そこで地方に住む大学生の男の子と出会った。
彼はコンビニバイトをしていたそうだが、その日々を繰り返すにつれ激しい虚無感、無力感にさいなまれたそうだ。






地方の最低賃金860円で、時間と貨幣を交換する。



その間に、都会に住む恵まれた学生は海外へ留学する。そこで得た人脈や英語力で「グローバルリーダーになりたいです」と宣言し、未来に向かって確かに歩みを進めている。










「こんなにも差があるのは、俺が今まで勉強しなかったからだ、俺に能力がないからだと思った」
彼はそう言った。












私はその話を聞いて、泣きそうになった。






違うと思った。

彼に能力がなかったから、

英語を話せない。人脈がない。


違うと思った。








両親がお金を出してくれるし、留学を勧めてくれる人が居る。
だからあなたよりも英語が話せる。人脈がある。
現実には、そんな人がたくさんいる。

実際の努力に大差はないと思った。






特別お金持ちではなくても、恵まれた家庭で育った私の周りには少なくともそういう人がたくさんいたし、私自身がなによりもそうだった。



この世界青年の船に参加するのだって、私は父親が過去参加青年だったことから、応募した。
必死で情報を漁ったあなたとは違う。











また、自分がどうしようもなく幸せな環境にいることが悔しくなってしまった。










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帰ってきてその話を父親にした。
父は、その話を聞いて彼のことを賞賛した。
そして、「彼の話を聞いて”社会の不平等に当事者が気づけていない”ことがとてもとても悔しかった。そんな格差をなくすにはどうすればいいんだろうか」という話を私がすると、同意しつつも、父からは視点の違う意見をもらった。



彼が、あなたよりも恵まれていない環境で育ち、大変な思いをしながら青年の船に来たのは間違いない。彼はすごいと思う。
ただ、その彼をそこまで突き動かしたのは彼が「自分に能力がない」と気づいたことが一番大きな要因だったのでは?
彼がその要因のおかげで、ここまで努力できているのなら、彼のバックグラウンドはむしろ武器であり、あなたがそれをどうにかしたいと思うのは自己満足になるのかもしれないよ。
犯罪を犯して刑務所に入った人が、「私が捕まったのは”社会の構造のゆがみ”のせいだ!!!!!」と言ったら、あなたは許すの????
そう考えてみると、考え方が変わるかもね。



とても納得した。
私が彼の話を聞いて、
「社会の歪み」をどうにかしたいと思ったことは、
「彼が今まで自分のせいだと思っていたことを、社会のせいだったかもしれない」と主張することは、


もしかしたら彼にとっては必要のないことだったのかもしれない。












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幸せな私がいくら、気持ちに共感してそれを解決しようとしたって
「当事者」にはなれない。









社会のために何かしようと思う度に、私にはその権利がないのかもしれないと落ち込む。










だから、不謹慎な羨望だって持ってしまう。












不幸なあなたが羨ましいって。










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