見出し画像

マイ サンクチュアリ

「マイ サンクチュアリ」

はじめてこの言葉を耳にしたのは、確か梨木香歩の『西の魔女が死んだ』の映画の中だったように記憶している。主人公の少女が祖母の住む大自然の中で自分と向き合う中で、次第に心を開放していくというストーリー。サンクチュアリは外敵から守られて安全な場所、という意味で、少女が見つけた森の中の秘密の場所だった。

そんな映画の一場面とマイ サンクチュアリ、という言葉を、ふと何かの拍子に思い浮かべることがある。例えばひっそりとした森の中、神聖な神社の参道や美しい庭とか自宅のプランターの植物の中にさえ、サンクチュアリを見る。なんとなく私にとっては緑のある場所というのは共通している。

さて、最近読んだ本から                       『ベニシアと正、人生の秋に』著 梶山正 ベニシア・スタンリー・スミス

NHKの番組「猫のしっぽカエルの手」でその手作りの暮らしに憧れるファンも多い。イギリス人のベニシアさんは京都の大原という自然あふれる環境の中で、古民家を改装して20年以上前から暮らしている。ハーブを育てて暮らしの中に上手に取り入れている様子をTVで見るたびに、いいなぁと眺めていた。ただ、数年前からベニシアさんの目の調子が悪くなると、以前ほど活発に動いたり、庭仕事もできなくなっているという話は番組でも話されていた。

今回読んだ本は、そんなベニシアさんのヒストリーとご主人の正さんの語りがとても興味深かった。家族として、子どもたちが大人になって自分たちの元を離れ、夫婦二人になった時間。体調の変化。向き合わざるをえない現実。TVで見ていた口当たりのいい内容ばかりじゃない。ベニシアさんって、波乱万丈な人生じゃない?なんでも出来て、器用な人かと思っていたら、料理上手のお手伝いさんがいてサポートしていたり、お嬢様育ちのベニシアさんは日本に来た頃は掃除の仕方すら知らないことだらけ。それでも人一倍好奇心旺盛で、異国の地で自分の庭を作っていった。故郷でなれ親しんだ英国風のハーブガーデン、元々古民家にあった日本風の庭、旅で訪れた沖縄の思い出を託した琉球ガーデン、近年ミツバチが世界的に減少しているという現実を知ってミツバチが好む植物たちを集めたビーガーデン・・・などなど6つに分けた庭の境があって、まさに進化する庭だったそう。

まさに、マイ サンクチュアリ であろうと思う。

今、ベニシアさんを一番惹きつけるのは、庭から見える山だという。ハーブの手入れは全く出来なくなってしまったけれど庭との思い出は永遠。「正ありがとう。すべてありがとう」の言葉がグッとくる。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?