太平記 現代語訳 33-7 廉子、死去す

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この現代語訳は、原文に忠実なものではありません。様々な脚色等が施されています。

太平記に記述されている事は、史実であるのかどうか、よく分かりません。太平記に書かれていることを、綿密な検証を経ることなく、史実であると考えるのは、危険な行為であろうと思われます。
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同年4月18日、吉野朝(よしのちょう)側においても、重要な人が世を去っていた。新待賢門女院(しんたいけんもんのにょいん)、すなわち、後村上天皇(ごむらかみてんのう)の母君・廉子(れんし)である。

天皇はじめ百官みな、御所の月に涙を落し、後宮の露に思いを砕きながら、何と悲しい事であろうかと、ただただ、涙を拭うばかりである。

さらに、同年5月2日、梶井門跡(かじいもんぜき)・尊胤法親王(そんいんほっしんのう)が亡くなられた。延暦寺(えんりゃくじ:滋賀県・大津市)の人々の悲嘆、皇族方の嘆きは、この上も無い。

世間の声A まぁそれにしても、今年はいったい、なんちゅう年なんやろ。大事なお方が、次から次へと、亡くなってしまわはりましたやん。

世間の声B いや、ほんとにそうですよね。これはまさに、国家レベルの重大な嘆きと、言うべきです。

世間の声C 亡くなられた方々をよく知っていた人も、そうでない人も、みんなそろって口々に、不安を訴えておりますよ、「これから世の中、いったいどうなっていくんだろう」ってねぇ。

京都、比叡山延暦寺、吉野朝の支配エリア、どこもかもが、うち続くVIP(Very Important Person)死去の報に、哀傷に沈み込んでいる。新待賢門女院の御所は露深く、幕府オフィス煙暗くして、比叡山は雲の色を悲しみ。

関係者D いったいぜんたい、どういう巡り合わせで、こんな年になってしまったのかなぁ。将軍様がこの世におられなくなってしまうだなんて・・・なんだか、心にポッカリと、大きな穴があいてしまったような・・・(涙)。

関係者E ほんまになぁ、美しい美しい花のようなお方やった・・・女院様はなぁ。(涙)

関係者F 高い所に咲いてはった花も、今となっては嘆きの花になってしまわれた・・・花は散って陰の草葉にかかる・・・あぁ、門跡様は逝ってしまわれた・・・。(涙)

僧俗男女、共に、涙の袖を絞るしかない。

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