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藤岡康太騎手

2020年1月、我々バスケットマンにとって唯一無二の存在であったコービーブライアントが亡くなった事に関して、「未だに信じられない」「受け入れられない」といった気持ちを抱き続けている方も多いのではないかと思います。それと同様に、ホースマンの方々にとって藤岡康太騎手もそういった存在になるのだろうと感じています。

昨年のマイルCSで、世界最高の名手であるライアンムーアが負傷したことにより、急遽有力馬であるナミュール号に騎乗することになった藤岡騎手は、ナミュールの持つ天性のスピードと豪脚を存分に生かす形でチャンスを掴み、2度目のG1勝利を手にしました。

あの時の勝利ジョッキーインタビューでの関係者に対する感謝や、馬の頑張りを手放しで讃えるといった点に、彼のプロフェッショナルとしての矜持を感じずにはいられませんでした。何より、彼の裏表のない、屈託のない爽やかな笑顔が忘れられません。

2021年、栄光の第83代ダービー馬であるマカヒキ号に5年ぶりの勝利をプレゼントしたのも彼でした。マカヒキを担当する友道康夫厩舎の馬を熱心に稽古し続けた彼が、負けても負けても愛され続けたマカヒキの懸命な走りに応えるように、普段の爽やかな彼とは全く違う「鬼の形相」で追い続ける姿にシビれ、人馬に感動を覚えたものです。

2024年4月10日午後7時49分…落馬によって意識不明の重体となった彼は天国へ旅立ちました。私自身も全く実感が湧かないため、「悲しい」「悔しい」「寂しい」といった感情がなかなか芽生えてこない事に違和感を持っています。きっと少しずつその「実感」が湧いてくるのだと思うと、多少鬱屈とした気持ちにはなりますが、彼の兄である藤岡祐介騎手も、「ファンの方もなかなか、すぐにとはいかないと思いますが、今までできていたこと、楽しめていたことができなくなるのは、康太の本意ではないので、変わらずに楽しんでください。」と思いを語っていたので、前を向いて、変わらずに愛する競馬を楽しみたいと思います。

きっとそれが、馬と人を愛し、また馬と人に愛された彼への弔いになると信じます。

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